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懇願
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そんなリナの姿を横に並んで座るハイゴブリンの女の子達はそれぞれ驚いた表情で見る。すると四人は椅子から飛び降りるように床に足をつけ、慌てた様子でリナに駆け寄った。膝をつきリナの手に自身の手を重ねてのぞき込む子もいれば「おねぇちゃん、大丈夫?」「どうしたの?痛い?」と声を掛け続ける子もいる。ユウト達に怒りの表情を向ける子もいた。
「心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」
リナは努めて明るい声で駆け寄った女の子達に声を掛ける。席に戻るようリナが促してもひざ元から動き出す気配はなかった。
「なぜその時、お前はゴブリンを信用できた」
ガラルドは一切の躊躇を見せず質問を投げかける。リナは小さく鼻をすすって顔を上げると気丈な表情でガラルドの質問に答え始めた。
「ロードの発言は理路整然としており、それまでに知るゴブリンと一線を画し確かな知性を感じました。首をつなぎ直す技術が本当にあると仮定して、その技術を悪用するのなら、私に提案を持ちかける必要はありません。あくまでもこの子達の面倒を協力的に見させるため、説得と提案は本気なのだと判断しました。
そしてロードはゴブリンを増殖させるための機能を排除しています。このことが信用に足るもっとも大きな要因でした」
リナの語った増殖機能の排除、という言葉の意味をユウトには直ち理解する。
「本当なのか」
ガラルドも念押しをするように確認した。
「事実だよ」
ジヴァが会話に割って入り、代わりに答える。
「リナと出会うより以前にロードは一度ここに訪れ、わしと取引をした。その代償がその機能だったのさ。わしの目の前ですべて自身で切り落としている。今のロードの身体にもその機能は備わっていないよ」
ユウトはジヴァによる証明に戦慄する。それを実行したという事実はロードの覚悟と決断力を証明し、自らの命を懸けるという当初の提案の実効性をより確かなものだと印象付けた。
「ここからは我が説明を引き継ごう」
ロードが一瞬訪れた沈黙を破って経緯の説明を続ける。
「魔術枷によって切断された首をつなぎ直すために使ったものが原因でリナを半ハイゴブリンとさせる結果になった」
「気になる。最高水準の魔導でもできるかどうかわからない。何を使ったんだ?」
ヨーレン異様な興味を示す。身体を前のめりにしながらロードの話しに食いついた。
「それはハイゴブリンの身体から作り出した万能細胞だ。もともとは我自身が致命的な傷を負った場合いの治療として持ち合わせていた培養した細胞の薄い膜で、人の身でどういった効果をもたらすかは未知数であったが無理を承知で治療を行った。
結果的に魔術枷による切り口の綺麗さが助けになったのか、首をつなぎ直すことには成功した。ただ副作用もあった。それが万能細胞による浸食。人としての組織を万能細胞はハイゴブリンへと徐々に作り替えていく。その結果、リナは半人であり半ハイゴブリンとなった」
ロードの話を聞いてヨーレンはあごに手を当てうつむき渋い顔をして考え込む。
「ではユウトをどう説明する」
あっさりとガラルドは次の質問の答えを催促する。
「ユウトはローゴブリンからハイゴブリンを生み出すためのいわば試作だ。唯一無二。ハイゴブリンにおいて最初で最後の男性。それは計画の途中経過における通過点でしかなかった。予定ではユウトは目覚めることはなくあのまま魔晶石の中で息絶え朽ちていく運命だった。
しかしユウトは目覚めた。なぜあの瞬間に目覚めたの我にはわからん。強い魔力の波を感じ取ったか生への執着か。ともあれあの場で目覚めなければ状況は今よりもっと変わっていただろう」
ロードの語った思いがけない事実をユウトは受け止め切れない。生まれるべきではなかったという事実によって自身の存在意義を疑ってしまった。ユウトは全身が冷たくなるのを感じる。まるで血の巡りが止まってしまうかのような感覚に陥りかけた。
「突発的なこの事象がなければ我はこのような不自由な体ではなかっただろう。だが意図しなかった希望を我は見出すことができた」
「希望?」
ユウトはロードの言葉を聞き返す。今のユウトにとってはとても想像するのに難しい言葉だった。
「そうだ、希望だ。大工房に入るまで我はお前を観察してきた。事態によっては我の手で排除することも考えていたからだ。共生を目指すハイゴブリンの障害にもなりえる。
しかしユウト、お前はここまでその命を落とすことなく生き延びた。さらに憎悪を向けられる対象にありながら時に助けられ、協力し信頼を勝ち得てきた」
ロードはこれまでの疲れ切った表情から瞳をはっきりと開き声高に語り始めている。
「他種族と共生するには信頼を勝ち得なければならない。それには長い時間と労力が必要となる。だが今のハイゴブリン達は幼く非力で時間がかかるだろう。
そして我は間もなく死ぬことになる、最後のローゴブリンとして。もう我もハイゴブリン達を守ることはできん。ハイゴブリンを狙う魔物の出現があっても守ってやれん。
だから頼みたい。ユウト、ハイゴブリンと他種族との架け橋となり守護してくれ。彼らの上帝としてゴブリンという種を存続させて欲しい」
ロードは懇願するように真っすぐユウトを見つめる。重そうに身体を動かし、深々と首を垂れた。
「心配かけてごめんね。もう大丈夫だから」
リナは努めて明るい声で駆け寄った女の子達に声を掛ける。席に戻るようリナが促してもひざ元から動き出す気配はなかった。
「なぜその時、お前はゴブリンを信用できた」
ガラルドは一切の躊躇を見せず質問を投げかける。リナは小さく鼻をすすって顔を上げると気丈な表情でガラルドの質問に答え始めた。
「ロードの発言は理路整然としており、それまでに知るゴブリンと一線を画し確かな知性を感じました。首をつなぎ直す技術が本当にあると仮定して、その技術を悪用するのなら、私に提案を持ちかける必要はありません。あくまでもこの子達の面倒を協力的に見させるため、説得と提案は本気なのだと判断しました。
そしてロードはゴブリンを増殖させるための機能を排除しています。このことが信用に足るもっとも大きな要因でした」
リナの語った増殖機能の排除、という言葉の意味をユウトには直ち理解する。
「本当なのか」
ガラルドも念押しをするように確認した。
「事実だよ」
ジヴァが会話に割って入り、代わりに答える。
「リナと出会うより以前にロードは一度ここに訪れ、わしと取引をした。その代償がその機能だったのさ。わしの目の前ですべて自身で切り落としている。今のロードの身体にもその機能は備わっていないよ」
ユウトはジヴァによる証明に戦慄する。それを実行したという事実はロードの覚悟と決断力を証明し、自らの命を懸けるという当初の提案の実効性をより確かなものだと印象付けた。
「ここからは我が説明を引き継ごう」
ロードが一瞬訪れた沈黙を破って経緯の説明を続ける。
「魔術枷によって切断された首をつなぎ直すために使ったものが原因でリナを半ハイゴブリンとさせる結果になった」
「気になる。最高水準の魔導でもできるかどうかわからない。何を使ったんだ?」
ヨーレン異様な興味を示す。身体を前のめりにしながらロードの話しに食いついた。
「それはハイゴブリンの身体から作り出した万能細胞だ。もともとは我自身が致命的な傷を負った場合いの治療として持ち合わせていた培養した細胞の薄い膜で、人の身でどういった効果をもたらすかは未知数であったが無理を承知で治療を行った。
結果的に魔術枷による切り口の綺麗さが助けになったのか、首をつなぎ直すことには成功した。ただ副作用もあった。それが万能細胞による浸食。人としての組織を万能細胞はハイゴブリンへと徐々に作り替えていく。その結果、リナは半人であり半ハイゴブリンとなった」
ロードの話を聞いてヨーレンはあごに手を当てうつむき渋い顔をして考え込む。
「ではユウトをどう説明する」
あっさりとガラルドは次の質問の答えを催促する。
「ユウトはローゴブリンからハイゴブリンを生み出すためのいわば試作だ。唯一無二。ハイゴブリンにおいて最初で最後の男性。それは計画の途中経過における通過点でしかなかった。予定ではユウトは目覚めることはなくあのまま魔晶石の中で息絶え朽ちていく運命だった。
しかしユウトは目覚めた。なぜあの瞬間に目覚めたの我にはわからん。強い魔力の波を感じ取ったか生への執着か。ともあれあの場で目覚めなければ状況は今よりもっと変わっていただろう」
ロードの語った思いがけない事実をユウトは受け止め切れない。生まれるべきではなかったという事実によって自身の存在意義を疑ってしまった。ユウトは全身が冷たくなるのを感じる。まるで血の巡りが止まってしまうかのような感覚に陥りかけた。
「突発的なこの事象がなければ我はこのような不自由な体ではなかっただろう。だが意図しなかった希望を我は見出すことができた」
「希望?」
ユウトはロードの言葉を聞き返す。今のユウトにとってはとても想像するのに難しい言葉だった。
「そうだ、希望だ。大工房に入るまで我はお前を観察してきた。事態によっては我の手で排除することも考えていたからだ。共生を目指すハイゴブリンの障害にもなりえる。
しかしユウト、お前はここまでその命を落とすことなく生き延びた。さらに憎悪を向けられる対象にありながら時に助けられ、協力し信頼を勝ち得てきた」
ロードはこれまでの疲れ切った表情から瞳をはっきりと開き声高に語り始めている。
「他種族と共生するには信頼を勝ち得なければならない。それには長い時間と労力が必要となる。だが今のハイゴブリン達は幼く非力で時間がかかるだろう。
そして我は間もなく死ぬことになる、最後のローゴブリンとして。もう我もハイゴブリン達を守ることはできん。ハイゴブリンを狙う魔物の出現があっても守ってやれん。
だから頼みたい。ユウト、ハイゴブリンと他種族との架け橋となり守護してくれ。彼らの上帝としてゴブリンという種を存続させて欲しい」
ロードは懇願するように真っすぐユウトを見つめる。重そうに身体を動かし、深々と首を垂れた。
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