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――10年変わらぬ夫夫愛を確かめ会い、シャワーを浴びた二人はキッチンダイニングの扉を開く。そこにいたのは、想わぬ人物だった。
「遅いお目覚めだね、ガラン。子どもたちが腹を空かせているよ」
「え、母さん?なんで?」
それこそ姿を見るのは十数年ぶり…、ガランの母であるジーンであった。
「パパ!ママ!おはよう。あのね、おばあちゃんが朝ごはん作ってくれたよ」
今日は結婚式!と浮かれ顔でエラがガランに抱き着く。
「なんで?息子の結婚式だってのに、帰ってこない親がどこにいるんだい」
「そうだよ、ガラン。孫たちが生まれたときはタイミングが合わず帰ってこれなかったけど、今回こそはって、ジーンと頑張ったんだから」
「父さんまで…」
カゴいっぱいの洗濯物を持ち、父であるジュードが話しかけてくる。
「ガラン、ご両親に挨拶をしたいっ」
ガランの背後に立っていたジェラルドがずっとでてくると、ふたりはジェラルドを前に片膝をついた。その異様な雰囲気にガランは息を飲む。
「おふとりとも、どうか頭を上げてください。ここでは俺はただのジェラルドです」
ジェラルドらしからぬ焦った様子である。
「いいえ、そういうわけにはまいりません」
「我ら狩人の頂点におられる方がまさか愚息を伴侶と定めておられたとは…。しらぬこととはいえ、10年もの間、大変失礼をいたしました」
「じいちゃんとばあちゃん、親父の知り合い?親父ってそんなに偉い人なの?」
のんきなシオンの声に、驚いたのは祖父母であった。
「知り合いって、お前たち、自分の父親の出自を知らないのか?」
「え、それなら知っているよ。SSS級の狩人だろ?」
ジークものんきだ。祖母が作ったサンドイッチを食べ、大人たちの様子を眺めている。
「違う。このお方は、ジェラルド・キングスレー」
キングスレーという名はガランももちろん聞き覚えがある。その家名は…。
「皇帝陛下の弟だ」
身一つの狩人から、建国をするまでに上り詰めたのはキングスレーという家名を持つ男だった。その名をジェラルドは継いでいるのだ。
「なあ、兄貴。皇帝陛下の弟ってえらいのか?」
「多分…。じゃあ俺たちは、えっと?」
「先の皇帝陛下の孫で、現皇帝陛下の甥っ子になるな」
「――っ」
ガランは思わず息を詰める。
ジェラルドの出自を詳しく聞かなかったとはいえ、ガランにとって目の前で繰り広げられる会話に訳が分からなかった。
当事者のはずなのに、なぜか、現実味がない。
「……ジェラルド?」
思わず名を呼ぶが、困ったようにジェラルドが眉を下げている。
――ジェラルドの美丈夫ぶりと見識の高さには、驚かされることが度々あったが、それが出生によるものなのだ。
10年連れ添ったジェラルドの顔が見知らぬ他人のように見えた。
「おっ、はようございま~す!!」
――その時、小さなガランの家の玄関扉がバンと開かれた。そこにいたのは、ガランの幼馴染である村一番の美女・ミランだった。
「ガラン、迎えに来たわよ!ん、どした?あんたひどい顔しているよ」
今は村を出て、王都で作家生活を送っていた。若い頃、ガランを困らせていたのが嘘のように良識ある女性になった。
『何言ってんの?私の平凡受けの原点はあなたよ』
それをしみじみ言うと、未だに訳の分からないことを言っているが、演劇にされるくらいにはよい作品を作るらしい。
「あ、ジュードおじさま、ジーンおばさま、お久しぶりですわ。ブラウン村に戻ってらしたのね」
ガランの両親に気付いたミランは明るく声をかける。二人は笑顔を返すが、ミランは一家全員…特に大人たちの笑顔がぎこちないことに気付いた。
「みなさん、どうなさったの?なんか、空気が…」
「ミラン、いこう」
ガランはミランの腕を掴む。
「え、いいの?子どもたちは?」
「父さんと母さんが見てくれるから」
「そう?じゃあ、いきましょうか。とびっきり可愛くしてあげるからね、ガラン!」
ミランは結婚式のコーディネートをしてくれていた。
ガランとミランが玄関を出ると、どこかぎこちなかった空気が動き出す。
「ほら、あんたたち。ご飯食べちゃいな」
祖母の声掛けに、子どもたちは朝食を食べ始めるが、
「ママ、なきそうだった…」
ハルクがぽつりとつぶやく。そういっているハルクこそが泣きそうだ。
ジェラルドは慌ててハルクを抱き上げ、ガランの出て言った玄関をみやるのだった。
「遅いお目覚めだね、ガラン。子どもたちが腹を空かせているよ」
「え、母さん?なんで?」
それこそ姿を見るのは十数年ぶり…、ガランの母であるジーンであった。
「パパ!ママ!おはよう。あのね、おばあちゃんが朝ごはん作ってくれたよ」
今日は結婚式!と浮かれ顔でエラがガランに抱き着く。
「なんで?息子の結婚式だってのに、帰ってこない親がどこにいるんだい」
「そうだよ、ガラン。孫たちが生まれたときはタイミングが合わず帰ってこれなかったけど、今回こそはって、ジーンと頑張ったんだから」
「父さんまで…」
カゴいっぱいの洗濯物を持ち、父であるジュードが話しかけてくる。
「ガラン、ご両親に挨拶をしたいっ」
ガランの背後に立っていたジェラルドがずっとでてくると、ふたりはジェラルドを前に片膝をついた。その異様な雰囲気にガランは息を飲む。
「おふとりとも、どうか頭を上げてください。ここでは俺はただのジェラルドです」
ジェラルドらしからぬ焦った様子である。
「いいえ、そういうわけにはまいりません」
「我ら狩人の頂点におられる方がまさか愚息を伴侶と定めておられたとは…。しらぬこととはいえ、10年もの間、大変失礼をいたしました」
「じいちゃんとばあちゃん、親父の知り合い?親父ってそんなに偉い人なの?」
のんきなシオンの声に、驚いたのは祖父母であった。
「知り合いって、お前たち、自分の父親の出自を知らないのか?」
「え、それなら知っているよ。SSS級の狩人だろ?」
ジークものんきだ。祖母が作ったサンドイッチを食べ、大人たちの様子を眺めている。
「違う。このお方は、ジェラルド・キングスレー」
キングスレーという名はガランももちろん聞き覚えがある。その家名は…。
「皇帝陛下の弟だ」
身一つの狩人から、建国をするまでに上り詰めたのはキングスレーという家名を持つ男だった。その名をジェラルドは継いでいるのだ。
「なあ、兄貴。皇帝陛下の弟ってえらいのか?」
「多分…。じゃあ俺たちは、えっと?」
「先の皇帝陛下の孫で、現皇帝陛下の甥っ子になるな」
「――っ」
ガランは思わず息を詰める。
ジェラルドの出自を詳しく聞かなかったとはいえ、ガランにとって目の前で繰り広げられる会話に訳が分からなかった。
当事者のはずなのに、なぜか、現実味がない。
「……ジェラルド?」
思わず名を呼ぶが、困ったようにジェラルドが眉を下げている。
――ジェラルドの美丈夫ぶりと見識の高さには、驚かされることが度々あったが、それが出生によるものなのだ。
10年連れ添ったジェラルドの顔が見知らぬ他人のように見えた。
「おっ、はようございま~す!!」
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今は村を出て、王都で作家生活を送っていた。若い頃、ガランを困らせていたのが嘘のように良識ある女性になった。
『何言ってんの?私の平凡受けの原点はあなたよ』
それをしみじみ言うと、未だに訳の分からないことを言っているが、演劇にされるくらいにはよい作品を作るらしい。
「あ、ジュードおじさま、ジーンおばさま、お久しぶりですわ。ブラウン村に戻ってらしたのね」
ガランの両親に気付いたミランは明るく声をかける。二人は笑顔を返すが、ミランは一家全員…特に大人たちの笑顔がぎこちないことに気付いた。
「みなさん、どうなさったの?なんか、空気が…」
「ミラン、いこう」
ガランはミランの腕を掴む。
「え、いいの?子どもたちは?」
「父さんと母さんが見てくれるから」
「そう?じゃあ、いきましょうか。とびっきり可愛くしてあげるからね、ガラン!」
ミランは結婚式のコーディネートをしてくれていた。
ガランとミランが玄関を出ると、どこかぎこちなかった空気が動き出す。
「ほら、あんたたち。ご飯食べちゃいな」
祖母の声掛けに、子どもたちは朝食を食べ始めるが、
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