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――王都での邂逅と西の辺境の村での再会を経て、ジェラルドとガランは結ばれた。結ばれるきっかけとなったのは、クエストの成功報酬のオプションという不可思議なものであったが、ふたりには結ばれて間もなく子ができたのだった。
この世には不思議なグミが自生している。高値でやり取りされている希少な奇跡のグミである。通常は黄色であるが、口にすれば30%のHPが回復するとされており、赤色は50%の回復となる。青は100%の体力回復とされているが、それは表向きのことであり、この奇跡のグミは生殖機能に作用すると言われていた。
一般の人々でも使用できる黄色いグミは30%回復のみであるが、赤いグミは50%回復+媚薬効果がある。青は100%の体力回復+強烈な媚薬効果があるとされている。
さらに奇跡とされているのが、金のグミだった。120%の体力回復に加え、同性でも妊娠が可能となるのだ。
『銀のジェラルド』という二つ名を持つ男は何とそれを5つも保有し、(勝手に)自分の伴侶と定めたガランに金のグミを仕込み妊娠させたのだ。
妊娠に気付いたガランは覚悟を決め、ジェラルドの求婚を受け入れたのだが、次々と子を産むことになるとは思わなかった。
結婚10年にして、子どもが5人。シオン、ジーク、エラ、ハルク、ミユと名付けられたふたりの子はすくすくと育っている。
だが、男性体妊娠として世界の記録を書き換えたふたりは、実は結婚式をしていなかった。
ではなぜ、10年を経て結婚式を行うことになったのか…。それは、長女のエラが言い出したことがきっかけだった。
――その日、エラは起床時から夢心地のようでふわふわとしていた。結い上げた赤鳶の髪を指先で絡ませ、余韻に浸っていた。
そんな長女の周りは戦場だ。長男・シオンと次男・ジークは、どちらが大きなパンを食べるか争っている。
「もう、喉詰めるなよ!ほらハルク。お前はもうちょっと食べような」
ガランはシオンとジークを宥めながら、おっとりとした三男・ハルクに朝食を食べさせていた。
朝はいつもこんな感じだ。
一家の父・ジェラルドは朝のクエスト窓口受付の仕事があるため夕霧亭に既に出かけているが、窓口業務が落ち着けばいったん家に戻ってくる。
「じゃ、いってきます!」
「いってきま~す!」
シオンとジークは牛乳をごくごくと飲み干すと、朝から薬草採取のクエストに出掛けた。この二人がでかければ、ガランもようやくゆっくり朝食を食べることができる。ゆっくりと食事を食べている末っ子のミユの隣に座る。
その時、ジェラルドが夕霧亭から戻ってきた。
「おかえりなさい、ジェラルド」
「ただいま、ガラン」
かき上げられた額にチュッと口づけられ、続いて子どもたちの髪にもジェラルドはキスを落としていく。
末っ子のミユを椅子から抱き上げると、膝にのせて再び椅子に座った。少々小さな目の椅子の為、ジェラルドは窮屈そうにしている。
エラの正面に座ったガランは、娘の食事が一向に進まないことに気付いた。
「どうした、エラ?しんどいのか?」
男の身でありながら、母親業というものをしている。シオンが産まれたときなどわからないことばかりで情けない親だと自分を責めていたが、10年もたてばそれなりになる。
「ねえ、ママ…。昨日の花嫁さん、きれいだったねえ」
うっとりとした表情で、ほうとため息を吐く。
女の子は成長がはやい。エラが生まれてからそれまでシオンとジークという年子の二人を育てた経験しかないジェラルドとガランは戸惑ったのだが、エラの成長が頼もしくもあった。
「うんそうだな。とってもきれいだった。エラもとってもかわいかった」
実は昨日、村で結婚式があったのだ。フラワーガールをお願いされたエラは、花嫁の美しさに始終目を輝かせていた。
「パパとママの結婚式ってどんな感じだったの?」
「え、ああ。うん、結婚式な」
エラの顔を愛おしく見ながらガランは応じる。
「パパとママ、結婚式してないんだ」
ガランが珈琲を一口飲み、エラを再び見ると、エラは信じられないという顔をしていた。
「ねえ、なんでパパとママは結婚式をしてないの、ねえ!」
娘の勢いに、思わずガランは仰け反る。
「なんでって、忙しかったし…ねえ、ジェラルド?」
ジェラルドと結婚した時にはシオンが既に腹にいたこともあり、婚式にあまり理想がなかったので、日常生活の忙しなさもありすっかり忘れていたのだ。
同意を求めてジェラルドを見やったのだが、末っ子のミユにパンを食べさせていたジェラルドは深く頷いた。
「するか、結婚式」
「して!パパ、結婚式して!!」
「え、するんですか?」
「する」
「パパ最高!」
エラは歓声を上げる。
――思わず問い返したガランであったが、どうやらジェラルドは本気だったようで、とんでもない手際の良さで瞬く間に結婚式の準備を進めていった。
この世には不思議なグミが自生している。高値でやり取りされている希少な奇跡のグミである。通常は黄色であるが、口にすれば30%のHPが回復するとされており、赤色は50%の回復となる。青は100%の体力回復とされているが、それは表向きのことであり、この奇跡のグミは生殖機能に作用すると言われていた。
一般の人々でも使用できる黄色いグミは30%回復のみであるが、赤いグミは50%回復+媚薬効果がある。青は100%の体力回復+強烈な媚薬効果があるとされている。
さらに奇跡とされているのが、金のグミだった。120%の体力回復に加え、同性でも妊娠が可能となるのだ。
『銀のジェラルド』という二つ名を持つ男は何とそれを5つも保有し、(勝手に)自分の伴侶と定めたガランに金のグミを仕込み妊娠させたのだ。
妊娠に気付いたガランは覚悟を決め、ジェラルドの求婚を受け入れたのだが、次々と子を産むことになるとは思わなかった。
結婚10年にして、子どもが5人。シオン、ジーク、エラ、ハルク、ミユと名付けられたふたりの子はすくすくと育っている。
だが、男性体妊娠として世界の記録を書き換えたふたりは、実は結婚式をしていなかった。
ではなぜ、10年を経て結婚式を行うことになったのか…。それは、長女のエラが言い出したことがきっかけだった。
――その日、エラは起床時から夢心地のようでふわふわとしていた。結い上げた赤鳶の髪を指先で絡ませ、余韻に浸っていた。
そんな長女の周りは戦場だ。長男・シオンと次男・ジークは、どちらが大きなパンを食べるか争っている。
「もう、喉詰めるなよ!ほらハルク。お前はもうちょっと食べような」
ガランはシオンとジークを宥めながら、おっとりとした三男・ハルクに朝食を食べさせていた。
朝はいつもこんな感じだ。
一家の父・ジェラルドは朝のクエスト窓口受付の仕事があるため夕霧亭に既に出かけているが、窓口業務が落ち着けばいったん家に戻ってくる。
「じゃ、いってきます!」
「いってきま~す!」
シオンとジークは牛乳をごくごくと飲み干すと、朝から薬草採取のクエストに出掛けた。この二人がでかければ、ガランもようやくゆっくり朝食を食べることができる。ゆっくりと食事を食べている末っ子のミユの隣に座る。
その時、ジェラルドが夕霧亭から戻ってきた。
「おかえりなさい、ジェラルド」
「ただいま、ガラン」
かき上げられた額にチュッと口づけられ、続いて子どもたちの髪にもジェラルドはキスを落としていく。
末っ子のミユを椅子から抱き上げると、膝にのせて再び椅子に座った。少々小さな目の椅子の為、ジェラルドは窮屈そうにしている。
エラの正面に座ったガランは、娘の食事が一向に進まないことに気付いた。
「どうした、エラ?しんどいのか?」
男の身でありながら、母親業というものをしている。シオンが産まれたときなどわからないことばかりで情けない親だと自分を責めていたが、10年もたてばそれなりになる。
「ねえ、ママ…。昨日の花嫁さん、きれいだったねえ」
うっとりとした表情で、ほうとため息を吐く。
女の子は成長がはやい。エラが生まれてからそれまでシオンとジークという年子の二人を育てた経験しかないジェラルドとガランは戸惑ったのだが、エラの成長が頼もしくもあった。
「うんそうだな。とってもきれいだった。エラもとってもかわいかった」
実は昨日、村で結婚式があったのだ。フラワーガールをお願いされたエラは、花嫁の美しさに始終目を輝かせていた。
「パパとママの結婚式ってどんな感じだったの?」
「え、ああ。うん、結婚式な」
エラの顔を愛おしく見ながらガランは応じる。
「パパとママ、結婚式してないんだ」
ガランが珈琲を一口飲み、エラを再び見ると、エラは信じられないという顔をしていた。
「ねえ、なんでパパとママは結婚式をしてないの、ねえ!」
娘の勢いに、思わずガランは仰け反る。
「なんでって、忙しかったし…ねえ、ジェラルド?」
ジェラルドと結婚した時にはシオンが既に腹にいたこともあり、婚式にあまり理想がなかったので、日常生活の忙しなさもありすっかり忘れていたのだ。
同意を求めてジェラルドを見やったのだが、末っ子のミユにパンを食べさせていたジェラルドは深く頷いた。
「するか、結婚式」
「して!パパ、結婚式して!!」
「え、するんですか?」
「する」
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