不機嫌なヒーロー

でんし

文字の大きさ
8 / 11
4.回想(翔編)

罪を重ねて、罪を滅ぼす(翔視点)

しおりを挟む
大地「…あいつら、今日こそ仲直りできたかな?」

恭也「どうだろう、はっきりと原因がわからないからなぁ。」

下校しながら、俺達は永久と悠人について話していた。

翔「あいつらが仲直りしてくれれば、俺の役目も終わるんだけどな。…二人とも、いつも付き合ってくれてありがとな。」

大地「…気にすんなって。俺らも同罪だからな。」

恭也「ああ、最後まで付き合うさ。」

俺のわがままに付き合い、罪を重ねてくれる彼らには感謝しかなかった。俺はいい友達に恵まれたのだろう。


事の発端は小学生の頃だ。

今思えば、完全に一目惚れだった。教室ではいつも無口で本ばかり読んでいる悠人が、他のクラスの永久の前でだけは笑顔を見せているのを偶然見かけた。

(あいつ…あんなふうに笑えるんだな。)

それ以来、悠人の笑顔が頭から離れなくなった。あいつの笑顔を見たかった俺は、あいつと仲良くなればいいんじゃないかと考えた。

翔「…何の本読んでるんだ?」

本をたくさん読んでいる悠人なら本の話題に食いついてくると思い、ある日そう聞いてみた。すると、あいつは怯えているような表情をみせた。

(いきなり1対1で話すのは気まずいのか…?)

そう思った俺は、次の日は俺と仲のいい大地、恭也もつれて三人で悠人に声をかけた。しかし、悠人の表情は相変わらずだった。

(…なんでうまくいかないんだよ!)

しびれを切らした俺は、次第に悠人に冷たい言葉をかけるようになっていった。大地、恭也も同調するように、あいつに冷たい言葉をかけるようになってしまった。それでも、あいつは変わらず怯えたような表情でただ黙っていた。

しばらくして、俺は悠人がいつも大事そうにしている栞を取り上げてみた。

悠人「…!返して!!」

いつも何も言わない悠人が初めて反応してくれた。そのことが嬉しかった俺は、調子に乗ってその栞を学校の池に捨てた。その栞を取ろうと悠人は池に飛び込み、池から這い出たあとは動かなくなってしまった。

(こんなはずじゃなかったのに…!)

そう思ったときには、もう遅かった。悠人の笑顔を見たかっただけなのに、俺はただあいつを傷つけただけだった。


それから数日後、永久が俺らのところにやってきた。

永久が俺らに殴りかかってきたとき、当然だろうなと思った。大地と恭也もそう思ったのか、俺達は完全に手を抜いてケンカしていた。

(永久の気が済むまで、殴らせてやろう。俺にはそれしかできることがない。)

そう思ったが、ケンカはすぐに先生たちに止められてしまった。そして数日後、俺達は学校に呼び出されることになった。

先生たちにケンカの理由について聞かれたが、俺達は完全に俺達が悪いと分かっていた。だから余計な言い訳はせず、ただ「ごめんなさい」とだけ言った。

それから、俺達は悠人に関わることをやめた。


そして数年後、俺達は中学生になった。俺達三人と悠人、永久は偶然同じクラスになったが、なぜかいつでも不機嫌な永久は悠人を避けるようにしていた。

永久が俺達とケンカしてまで守ろうとした悠人と距離を取っていることを、俺は不思議に思った。しかし、悠人が不安そうにしている時、永久はいつでも悠人を見守っているように見えた。

何かあると思った俺は、悠人をいじめるような素振りを見せてみた。すると案の定、永久が悠人を守りに来た。そして永久が来たとき、悠人は安心したような表情を見せた。

二人の間に何があったのかは分からなかったが、二人を仲直りさせるのが俺にできる唯一の罪滅ぼしだと思った。そして、仲直りさせるために二人の距離を近づけるには、悠人をいじめることしか俺には選択肢がなかった。

俺が再び悠人をいじめ始めたのを見て、大地と恭也は俺を責めた。

大地「お前さ、いい加減悠人をいじめるのやめろよ。」

恭也「俺達が言えたことじゃないとは思うけど…。さすがにもう、やっていいことと悪いことくらいは分かるだろ?」

俺は二人にすべてを打ち明けた。

小学生の頃、悠人に一目惚れをしたことがきっかけでいじめ始めてしまったことを。

悠人を避けている永久と、悠人を仲直りさせたいこと、そのためには悠人をいじめるという選択肢しか俺にはないことを。

それを聞いた二人は、協力を申し出てくれた。

悠人を傷つけないよう、最大限の注意は払っているつもりだった。それでも、無理だった。どんなに気を付けても俺達の言葉が悠人を傷つけているのは明らかだった。

(永久…はやく仲直りしてくれ。俺達をとめてくれ…。)

そう願いながら、俺達は悠人をいじめ続けるのだった。


大地・恭也「…おーい、翔?」

二人に呼び掛けられて、俺ははっとした。

大地「…あんまり思い詰めすぎるなよ。」

恭也「俺達もいるんだ、お前は一人じゃない。」

(やっぱり、いい友達に恵まれたな。)

翔「…ああ、ありがとう。さあ、早く帰ろう。」

そう言って、俺達は再び歩き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

処理中です...