復讐と約束

アギト

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第3章 七魔将軍 アルキ編〜自身のカラを捨てて〜

第十二話 到達!萬獄山頂上

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 ショウ、ザギルとオーツは、ずっと走っていた。ザギルは先頭に立って、
「いいリハビリだろ。」
と楽しそうに言った。ショウは、
「なんか懐かしく感じる。」
これまた楽しそうに言った。
「そうなのか?」
「あぁ、カシルさんともこうやって、森を走っていた。」
「へぇ~なら俺は、世界の果てまで走ってやる。」
「それもいいね。」
と話していると、オーツが、
「俺も忘れんな!」
とショウと並走しながら言った。
「すまんすまん」
とザギルが言った。ショウは、ふと気になったことを聞いた。
「そう言えば、ザギルはどうして魔眼が使えるんだ?カシルさんは使えなかったよな?」
「確かに親父は、魔眼が開眼しなかったな。だが、その子供が開眼しないとは限らないんだ。それに、親父は開眼しなくても俺より強かったしな。」
「なるほど」
「話の途中で悪いが、そろそろ見えてきたぞ。」
そう言うと、オーツが指を指した。
 ショウ達は、一度立ち止まり、看板を見た。ショウは、
「これが、萬獄山らしいな。」
「取り敢えず、登るしかないな。」
「そうだな。」
「結構、高いな~4000m位あるな。」
と言い、ショウ達は歩き始めた。
 萬獄山は、薄暗く枯れ木が多かった。それに、
「其処ら中、野良の魔物が多いみたいだな。」
「そうみたいだな。」
そう、魔物の中で自我が獲得出来なかったものがいた。そして立ち止まった。すると、ショウ達を囲むようにトロールが現れた。
「ぐぅぅぅ」
「どうやら、こいつ等は俺たちを食べたいらしいな。」
「どうする?ショウ」
「決まってるだろ…」
そう言うと、トロールの長らしきやつが、
「グゥアア!!」
と叫ぶやいなや、ショウ達に襲い掛かった。ショウは、
「殺さない程度に、倒すぞ!」
と言った。二人は、
「「はいよ!」」
と返事した。そして三人は散らばり、それぞれ闘い始めた。オーツは、双剣を使い、片っ端から気絶させた。
「筋肉をほぐすのに、丁度いいな。」
「ぐぁぁぁ」
「再生能力もいいな。最高のサンドバッグだせ。」
「ぐぅぅぅ!」
とトロールの攻撃を剣で受け止めた。
「いい拳だ。俺じゃなければ、ちゃんと殺せてるよ。」
と言い、飛んでから気絶させた。
「こっちは粗方終わった。ショウとザギルは?」
 ザギルは、剣を抜かずに闘っていた。
「剣を使うと、調整が大変だから素手でやるか。」
「ぐぁぁぁ!」
「フンッ」
とトロールの拳を片手で受け止めた。そして、
「安心しろ、手加減しておいてやる。」
そう言い、一瞬で周りのトロールを手刀で気絶させた。
 ショウは、腕を鳴らしながら、
「本当に、いいリハビリになりますね。」
と言いながら、トロールの攻撃を躱しながら、倒していった。すると長らしきやつが、棍棒を取り出し、
「グゥアア!!」
と振り回し始めた。ショウは、難なく躱し、
「いいリハビリだった。ありがとうございました!」
と強めの拳で、気絶させた。それと同じタイミングで、ザギルとオーツが来た。
「何だ、終わったタイミング一緒か~」
「取り敢えず、先に行こうぜ。」
「暗くなる前には、着いておきたいな。」
そう言い、三人はまた歩き始めた。
 ショウ達が歩き、ようやく半分に辿り着いた辺で、
「う、うわぁぁ…」
「悲鳴か?」
「あっちから聴こえたな。」
「行こう。」
「何でだよ!先急いでんだろ?」
とオーツが止めた。ショウは、
「関係ない。勇者一行以外は、救うだけだ。」
と真っ直ぐな目で言った。
「ったく、面倒臭いな~」
「そこまで言うなら、オーツ一人で山頂を目指せ。俺とショウは、あっちに行ってから山頂を目指す。それでいいな?」
「分かったよ。俺は先に行く!」
「好きにしろ」
と言い、オーツと分かれた。

 ショウとザギルは、悲鳴のあった方に行った。そこには、誰もいなかった。
「どういう事だ?」
「こういう事だ!!」
とショウたちの後ろから、攻撃を仕掛けた。しかし、ザギルがその攻撃を受け止めた。
「お前、何者だ?」
「テメェこそ、誰だ。」
「話が通じないやつだな。」
「フンッ!」
と謎のオーガが、ザギルの手を振りほどき、距離を取った。謎のオーガは、
「俺の名は、キモンだ!お前ら強いな!勝負しろ!」
と言った。ザギルは、
「さっきの悲鳴は、お前が俺らを誘う罠か?」
と聞いた。
「悪いが違うぞ。それは、模写鳥だろう。獲物を誘うために、そいつが1番近づく声を使い、誘うんだ。」
「そうか、それじゃあな。」
「待ちやがれ!俺と勝負しろ!」
「俺達は、山頂を目指してるんだ。邪魔するな。」
と言った。キモンは、溜息をついて、
「何だよ。お前ら『あんなところ』に行きたいのかよ。」
「あんなところ?」
「そうだよ…あんなつまんないところに一体何のようだよ?」
「七魔将軍アルキに会いにな。」
「ふぅ~ん、まぁまいいや。それなら、俺を倒してからだ。倒したら、近道を教えてやるよ。」
「嘘じゃないなら、いいだろう。」
「このキモン!嘘は苦手だ!」
そう言うと、キモンとザギルが構えた。ショウは、少し離れたところで、
「巻き添え喰らわないように、離れておくよ。」
と言って、離れて行った。
 ザギルは剣を抜き、
「取り敢えず、お前に負けを認めさせればいいのか?」
「まぁ、そう簡単に俺はやられねぇ!」
「それは楽しみだ。」
と言い、キモンに襲い掛かった。キモンは、
「やれやれ、こんなんじゃ、剣が泣いてるぜ。」
と挑発し、構えた。そして、
「神威型:檄煌」
と軌道の読めない拳を無数に放った。それに、ザギルのガードをすり抜け、ザギルに攻撃を与えた。ザギルは、
「神威型か…聴いたこともないな。」
と真剣な表情で言った。キモンは、
「そりゃそうだよ。これは、俺が作った俺だけの型だ。」
と言い、再度構えた。ザギルも構えた。
「神威型:汳乱」
「月光の型:劉観月 誘宵」
と互いの技がぶつかり合った。キモンは、自身の氣を刃状にし斬り掛かった。ザギルは、棟でその技に対応した。そして、
「我流 剣技 阿寒荊棘」
「ぐっ……」
と無数の深い突き技を放った。すると、キモンから大量の出血をした。
「血が止まらん。どうすれば…」
「動くなよ。」
とザギルが圧を掛けて言った。キモンは、言う通りに動かなかった。
「ふぅ……はぁ!!」
と剣頭で全身をついた。すると、出血が止まった。
「一体何をしたんだ?」
「お前の傷口を無理やり、押さえつけただけだ。急いで手当をする必要はある。早く案内しろ。」
「分かったよ。約束通り、近道を教えるぜ。ついて来い!」
そう言い、ショウとザギルは、キモンに付いていった。

 一方オーツは、
「あぁ、ムシャクシャするぜ!あの目は何だよ!」
と頭を掻きむしりながら、歩いていた。オーツは、
「こういう感情も、前まではなかったな~それに、何か胸のあたりが痛い。」
と独り言を呟きながら、歩いていた。すると、
「や、やめて下さいよ!」
「ん?」
と声の方を見ると、小柄なオーガが巨漢なオーガが、5人で囲って虐めていた。
「フッハハハ、俺たちのサンドバッグが喋んなよ~」
「そうだそうだ。お前は黙って、技の実験体になれよ。」
と言っていた。そして、一体のオーガが殴りかかった。
「くらぇぇぇ!」
「うっ…」
と小柄なオーガは、怖さで目をつむった。すると、そこにオーツが、
「おいおい、俺は今ムシャクシャしてんだ。これ以上、ムシャクシャさせるな!」
とオーガの攻撃を受け止めた。オーツは、一体のオーガの手を掴んだまま投げた。そして、関節を外した。
「イデェェェ!イデェェェよ!!」
とオーガは悶絶した。他のオーガ達が、
「何だテメェは!」
「よくもやったな~」
「人間が俺達に逆らった事、後悔させてやら!!」
と馬鹿なことをほざいていた。オーツは、
「丁度いいや、少し暴れてスッキリするか。」
と言うと、目の前の奴からぶん殴った。
「ヤロウ!」
とオーツに蹴りをくらわせようとした。オーツは、軽々と躱して、
「蹴りはこうするんだよ!」
と逆に蹴りをくらわせて、オーガの背骨を折った。そして、
「ぐがぁぁぁ…ぁ…」
気絶させた。そして今度は、オーツが、
「今度は2体いくか。」
2体のオーガに向かった。2体のオーガは、同じ構えを取って、正拳突きをした。だが、オーツは避けることなく、真正面からぶん殴った。すると、2体のオーガがぶっ飛んでいった。そして、
「あとはお前だけか。」
と最後に残ったオーガにそう言った。オーガは、
「か…勘弁してくれ!俺らがお前になにかしたのか!」
と言った。オーツは、怒りの表情で、
「お前等は俺を不快にさせた。だから、ぶっ飛ばす。」
そう言った。そこから、オーガの顔面に向かって、思いっきり殴った。そこから、枯れ木をぶっ倒しながら、飛んでいった。小柄なオーガは、
「あ、ありがとうございます。」
と頭を下げて言った。オーツは、
「いい気晴らしになったから。礼を言わなくてもいいぞ。」
と言った。小柄なオーガは、
「自分、タカムラと言います。」
自身の名前を教えた。オーツは、
「俺はオーツだ。俺はこの山頂に用があるから、気をつけて帰れよ。」
と手を振りながら、元のルートに戻ろうとした。すると、
「良ければ、自分案内しますよ。自分、山頂に住んでるんです。」
「そうか、ならお願いするか。」
「では行きましょう。」
とオーツとタカムラは、山頂を目指した。

 ショウ、ザギルとキモンは、しばらく歩いているとデカい門が現れた。
「ここが山頂だ。」
「何だこの門は?」
「これは、里に入るための門だ。」
「で、どうやって入るんだ?」
「普通に開ければいいんだよ。」
そう言うと、キモンは門を押し始めた。明らかに1000トンはあるであろう門が、キモンが押したことで開き始めた。
「こいつ、マジかよ…」
「凄い力持ちですね。」
門が全開し、ショウとザギルは唖然とした。キモンは、
「お前等運が良かったな。」
と満足気な顔で言った。ショウは、
「どういう意味ですか?」
と質問をした。キモンは、
「この門を一人で開けれるのは、『俺とアルキ』しかいないからな。後は、オーガの中でも極限まで武術を高めた者が、20人集まれば開けれるぞ。」
とサラッと自身以外は、難しい事だと言った。ショウとザギルは、
「オーツは大丈夫か?」
「オーツなら、最悪よじ登るだろ。」
「だが…キモン」
「何だ?」
「この門の高さは、何mくらいだ?」
「う~ん、大体100m位だな。」
「「……」」
「どうした?」
「さすがに、難しいだろ。」
「だな~大丈夫かな?」
と少しオーツを心配した。

 一方のオーツは、
「こんなデケェ門どうやって入んだよ。」
と驚いていた。タカムラは、
「普段は、一定時間は開門してるんですが、もう過ぎてしまってたみたいです。すみません。」
と申し訳無さそうに言った。オーツは、
「謝んな、上ろうにも高すぎるし、掴まれるところがないから無理だな。なら…」
門を押し始めた。タカムラは、驚きながら言った。
「何してるんですか!」
「上んのは無理だ。なら、無理矢理開けるしかないだろ!」
「ムチャですよ。この門は、アルキ師匠一軍が全員集まって、やっと開くんですよ。」
「だから何だ!俺には関係ない!!」
そう言いながら、オーツは無理矢理開けようとした。筋繊維が破れる音が凄く聞こえてきた。しかし、オーツは全く諦めようとしなかった。その姿を見て、
「自分も手伝います。」
と身体が勝手に動いた。
「よっしゃ、絶対に開けるぞ!」
「はい!」
「せーの!!」
「「うぉぉぉぉ!!」」
と叫びながら、門を押した。すると、少しずつ門が動き始めた。
 15分の格闘の末、オーツとタカムラは門を全開にした。その二人の身体からは、途轍も無い量の出血だった。オーツとタカムラは、その場で倒れて、
「言っただろ…俺には関係ないってな…」
「はい…」
「全身が痛ぇな…」
「自分も…です…」
と二人は、その場で気絶をした。すると、周りにいたオーガ達が群がり、
「こ、この門をタカムラとこの男二人で開けたのか!」
「あ、ありえん」
「こんな事があるのか…」
と二人に驚きを隠せずにいた。その騒ぎを聞いたショウ達は、
「オーツ!それと誰だ?」
と二人に近付いた。オーツは、
「おう、ショウ…お前が言った事、少しはわかった気がする…」
「そうか、僕もすまなかった。」
「謝んな…よ…」
と目を瞑った。ショウは、
「オーツ!しっかりしろ!」
と大声で呼んだ。包帯が巻かれたキモンが近寄り、
「大丈夫、二人とも出血のし過ぎで眠っただけだ。おい!早く担架を持って来い!」
「は、ハイ!」
と2人が担架で運ばれで行った。

 オーツとタカムラは、2日ほど経ってから目を覚ました。
「お、俺は…」
「おはようございます。オーツさん」
「おう、お前も無事だったか。」
「えぇ、と言っても今起きたばかりなんですけどね。」
「そうか、ここは?」
と辺りを見渡した。すると、
「二人共起きたか、ほら」
とザギルが林檎を投げて、オーツとタカムラに渡した。ザギルは、
「お前等すげぇな~たった二人であの門を開いたんだろ?俺とショウは、運良く開けてもらえたがな。」
と言った。オーツは、
「へぇ~お前らについて行けば楽だったかも知れんな。でも…」
とタカムラを見て、
「分かれてなければ、タカムラに会えなかった。それに、門も開かなかったろう。ありがとう、タカムラ」
と素直に礼を言った。タカムラは、涙を流しながら、
「い、いえ…自分も助けられ、心動かされっぱなしです…」
と言った。ザギルは、
「少しずつ、人間らしくなってきたな。」
「おう!」
「ふっ」
と親指を立てた。すると、
「今ショウは何処だ?」
「あぁ、今ショウは、アルキの元へ行ってる。」
「な、それなら今すぐ行く!」
と林檎を噛りなが言った。ザギルは、
「そう言うと思った。」
と立ち上がり、オーツの服を投げた。そして、
「行くぞ。」
と真剣な表情で言った。オーツは、
「おう!」
と威勢のいい声で返事した。

 ショウは、キモンと一緒にアルキの元へと向かっていた。キモンが立ち止まり、
「ここがアルキのおる道場『獄門』だ。」
とデカデカと看板が下げられていた。ショウは、
「行きますか。」
と腕を鳴らしながら、門を叩いた。
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