復讐と約束

アギト

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第3章 七魔将軍 アルキ編〜自身のカラを捨てて〜

第十三話 七魔将軍アルキの元へ

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 ショウが門を叩くと、道着姿の青帯のオーガが現れた。そして、
「何用だ。入門者か?」
と尋ねられた。ショウは、
「アルキに会いに来ました。そこを通してください。」
堂々と言った。青帯のオーガは、
「そうですか。なら…」
そう言うやいなや、
「力づくで通ってみろ!」
とショウに拳を突いた。ショウは、難なく躱した。青帯のオーガは、ショウの前に立ちはだかり、
「アルキ師匠を、お前みたいな貧弱な奴に会わせる気はない。帰れ!!」
「そうか、なら僕も力づくで通ります。」
「かかってこい!捻り潰してやるよ!」
と構えを取った。キモンは、
「ショウ、気を付けておけ。あれは、アルキの作った『八獄の型』だ。地上最強の型とまで言われている。」
とショウに言った。ショウは、いつもと変わらず冷静に、
「キモンさん、大丈夫ですよ。」
「ん?どういう事だ。」
「だって、いくら最強でも、使い手が未熟ならどうってこともない。」
と言った。青帯のオーガは、
「聴こえてんだよ!」
と攻撃を仕掛けた。ショウは、軽々と躱し、
「ちょっと寝ててください。」
とショウは、手加減した拳でみぞおちを突いた。
「がっ……」
と青帯のオーガは気絶した。ショウは、青帯のオーガを門の端に横たわらせた。キモンは、
「ショウ、お前は一体何者だ?」
と聞いた。ショウは、キモンの方を向き、
「ただの魔族ですよ。」
とショウは、いつもと変わらない笑みで言った。すると、
「何事だ!」
「何だ、この惨状は…」
「あれは!ソウキとあの二人は誰だ!」
「捕えろ!」
と道場から沢山のオーガが出てきた。ショウは、
「やれやれ、あちらから仕掛けたのに、仕方ありません。やり…」
とショウが闘おうとした。しかし、キモンが前に出て、
「奴らの相手は、俺がやろう。お前は、奴らをガン無視して突破しろ。」
「どうして?」
「な~に、久し振りにこいつ等に『稽古』をつけてやろうと思っただけだ。」
「そうですか、なら…」
「「「「はぁーー!」」」」
と沢山のオーガが、一斉に攻撃を仕掛けた。キモンは、
「八獄の型:柔剛」
とオーガを同時に拳をくらわせた。そして、ショウは、
「頼みます。固有スキル:影使い 影移動」
と自身の影に潜り、移動を始めた。オーガ達は、
「もう一人はどこいった?」
「それより、どうしてあんたがここに居る?」
「どうでもいい、誰だろうとぶっ倒せば一緒だ。」
とオーガ達は、キモンを囲いながら言った。キモンは、
「俺のいなかった数年で、どれ程変わったか見せてもらうか。」

 キモンは、アルキの門下生だった。しかし、アルキとその門下生との反りが合わなくて、萬獄山を下山した。そこから旅を続けて、自身で『八獄の型』の練度を上げ、進化させていった。
「あんた程のオーガが、何故奴の味方をするのか、理解できません。」
「フンッ、味方になった覚えはないが、お前等がどれ程『劣化』したか知りたくてな。」
「なんだと!!」
そう言うと、オーガ達が一斉に「八獄の型」を使った。
「八獄の型:柔剛」
「八獄の型:酷淨」
「八獄の型:焼煉燵」
とキモンに向けて、攻撃が降り掛かった。しかしキモンは、
「やっぱり、落ちてしまったな。」
と言うと、キモンも「八獄の型」を使った。
「八獄の型:焼煉燵 明絃煉火」
と揺らついた動きで、全ての攻撃を跳ね返した上に、自身の拳をくらわせた。そしてオーガ達を一瞬にして倒した。すると一体のオーガが、
「い…一体…何がおこった…」
「ほぉ~まだ意識があったか。少しは骨があるやつがいたか。」
「あ…あんたは…どうして、ここを出た?」
「下らない質問だな。」
「こた…え…ろ」
「ココがつまらなかったから。唯それだけだ。」
と何か見えないものを掴もうとしているような佇まいで言った。オーガは、気絶した。
「やれやれ、聞くだけ聞いといて寝るなよ。」

         数年前
 キモンは、アルキの門下生達に、
「そんなんじゃ、俺に掠り傷すらつけれんぞ!」
「はぁ…はぁ…はぁ、俺はあんた程才能があるんじゃないんだ!」
「言い訳すんな。さぁ、もう一本だ。」
と構えた。門下生達は、
「もう貴方には、ついて行けません!アルキ師匠の方に行かせていただきます。」
「俺も…」
「僕も…」
とぞろぞろと、アルキの元へ行った。しかし、
「タカムラは行かないのか?俺は別に気にしないぞ。」
タカムラは、動こうとせずに、
「自分は、変わりたい。キモンさんは、いつも厳しいけど、ちゃんと指摘してくれる。それに、絶対に自分を見捨てなかったでしょ。だから、自分は貴方がいいです。」
そう言った。キモンは深呼吸して、
「よし、じゃあ組み手だ。タカムラ」
「はい!」
とタカムラと組み手を始めた。キモンは、タカムラと組手をしていると、
『もっと、もっと別の世界が見たい。こいつには、俺には見えない何かを持っている?』
といつも思ってしまう。それは、タカムラが「八獄の型」を発動したときは、とても効いた。タカムラは、他の門下生より弱いと言われている。なのに、
『こいつには、全力をブツケたくなる!』
「八獄の型:恐檻」
タカムラは、それに合わせて、
「八獄の型:砥憂苅突 鞭断打」
と全ての攻撃をいなして、一撃くらわせた。キモンは、その攻撃を受け止め、思い切り蹴った。
「うっ…」
「す、すまん、強く蹴りすぎた。」
「い、いえ…大丈夫です。」
と立ち上がった。キモンは、
「俺は明日、ここを出ていく。」
「ど、どうして?」
「俺はまだ強くなりたい。だが、その強さはここにはないだろう。だから、俺はここを出ていく。」
と自身の胸の内をタカムラに教えた。タカムラは、
「そうですか…」
と少し残念そうに言った。キモンは、
「タカムラ」
「はい」
「お前も一緒に外に行かないか?」
「へ?」
「俺はお前と闘っているときだけ、全力で闘いたくなる。お前には、才能も努力する根性もある。絶対にお前はアルキより強くなれる。だから、俺と外に行かないか?」
とタカムラを誘った。しかし、タカムラは首を横に振り、
「すみません。自分は…」
「いい、悪かった。さぁ、組み手の続きだ。」
「はい」
と言った。そして、互いに構えを取り、組み手を再開した。
 次の日、言葉通りキモンは、萬獄山から出ていった。アルキや門下生達は、タカムラを除いて、キモンを見送ることなかった。


 そう少し昔のことを思い返して、道場の中へと入っていった。

 ショウは、影移動でほとんど闘わずに潜入できた。そして、道場の門を開き、
「アルキはいるか!」
と大声で言った。すると、鍛錬を積んでいたオーガ達は、
「誰だ?」
「どこから侵入をした!」
とざわつき始めた。すると、
「一旦停止」
と手を叩いて、ざわつきを消した。そして、ショウに近付き、
「儂がアルキじゃ、なんか用か?」
と言った。そのオーガは、周りのオーガより少し小さかった。しかし、1番氣の量が多く、洗練されていた。ショウは、
「僕の名前はショウ。単刀直入に言う、僕と一緒に闘ってほしいです。」
「はぁ?」
「僕は今、勇者一行に復讐するために旅をしています。それに付いてきてほしいんです。」
と言った。アルキは、
「ガーハッハッハ!これは傑作じゃ、何故儂が貴様のような貧弱な奴に、付き従わなければならんのだ。」
と圧をかけながら言った。ショウは、
「そうか、ならどうすればいい?手始めにここにいる奴らをボコせばいいのか?」
「威勢はいいようじゃな。いいだろう。そこまで言うなら、お前の力を試そう。アコ!ウンリュウ!」
「「ハッ!」」
とショウの前に現れた。アコとウンリュウは、
「俺はアコ、アルキ師匠の側近だ。アルキ師匠の命により、お前の相手をしてやる。感謝しろ」
「同じくアルキ師匠の側近、ウンリュウ。早く終わらせよう。」
と言った。アコは右眼に傷があり、ガタイが良かった。一方ウンリュウは、身体に大きな切り傷があり、少し痩せ気味だった。
 ショウは構えた。アコとウンリュウは、同じ構えを取った。そして、ショウが先に動いた。
「早く終わらせます。」
アコは蹴りを、ウンリュウは拳を突いた。しかし、
「これが側近ですか?弱すぎません?」
と軽々と躱した。それに激怒したアコとウンリュウは、そこからラッシュに繋げた。だが、ショウには一撃も当たらなかった。ショウは、
「遊びに来たんじゃないんですよ。」
と躱しながら言った。そして、アコに向けて、
「ソニックブロー」
と攻撃を与えた。アコは、そこからすっ飛んだ。そしてウンリュウには、
「剛砕拳」
と腹に決めた。そこからアコと同じところまで飛んだ。ショウは、
「これでいいんですか?」
と言うと、アルキは、
「いや、まだじゃよ。アコ、ウンリュウ」
そう言うと、アコとウンリュウは立ち上がり、
「ふぅ~本気を出すか。ウンリュウ」
「仕方ない、久し振りにやるか。アコ」
そう言うと、
「「特殊スキル:鬼人化!」」
と特殊スキルを使用した。すると、アコとウンリュウが人間に近い姿にかわった。
「人に近い姿になりましたが、それがなにか?」
「すぐに分かる。」
と言うと、アコとウンリュウが攻撃を仕掛けた。その上、先程より素早かった。ショウは、
「くっ、攻撃も重くなってる。」
と攻撃を受けた。そこからアコとウンリュウは、
「それだけではない。『八獄の型:柔剛』」
「八獄の型:酷淨!」
と攻撃を与えた。ショウは、何とかガードし、
「技を出す速度も早くなってますね。」
と呑気なこと言った。

鬼人化・・・オーガが人間に近い姿にかわるスキル。それにより、技の発動速度や攻撃の繋ぎなどが早くなる。一見弱体化したように見えるが、ステータスはそのまんまのため、油断するものも多い。

 ショウは、腕をまわしながら、
「ふぅ~良い攻撃ですね。全身のコリが取れそうです。」
「「はぁ!何だと!!」」
と素早く攻撃を仕掛けた。ショウは、
「魔眼:未来観測」
とアコとウンリュウの動きを先読みした。そして、軽々と全ての攻撃を避けた。そこからショウは、
「終の拳:楽胴牙」
とアコに向かって攻撃を仕掛けた。アコは、
「八獄の型:恐檻」
と氣を足先に集中して纏わせ、応戦した。しかし、ショウの攻撃に押し負けてしまい。
「ぐぁぁぁ!」
と飛んでいった。ウンリュウは、ショウの後ろから、
「八獄の型:焼煉燵」
と攻撃を仕掛けた。ショウは、予測しておいたようにしゃがんで躱し、
「終の拳:天海音流」
とショウが仕掛けた。ウンリュウは、
「ぐっ、さすがに…うわぁぁぁ」
と飛んでいった。ショウは、アルキに向かって、
「これでもまだ動かないなら、今度は貴方と殺りあってもいいですよ。」
と構えた。アルキは、手を叩きながら、
「いや~凄いのぉ、『魔眼』に『終の拳』が使える者だったとはな。」
と賞賛した。そして、
「貴様を貧弱といったのは、謝ろう。だが、お前さんの『仲間』はどうかの~」
と言うと、
「邪魔するぞ!」
とザギル、オーツ、タカムラそしてキモンが入ってきた。ショウは、
「オーツ、調子はどうだ?」
と言った。オーツは笑みを浮かべて、
「バッチリだ!いつでも闘えるぞ!」
と言った。するとキモンが前に出て、
「久し振りだな。アルキ」
と話しかけた。アルキは、目を細めて、
「なんじゃ、キモンか。帰ってきたのか?」
「おいおい、嫌そうな顔になんなよ。」
「ふんっ、どうでもいいわ。ショウ」
とショウの方に向いて、呼んだ。
「何ですか?」
「お前さんの力量はわかった。次はお前さんの仲間の力量を測らせてもらおう。」
「いいですよ。受けて立ちましょう。」
とショウは、真っ直ぐな目で言った。ザギルとオーツも、
「問題ない」
「さっさと殺らせろ!」
とやる気十分であった。アルキは、
「では、今から一週間後に三対三の試合を行う!」
と言った。
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