オークションで落札した吸血鬼をどうしても惚れさせたい

うんとこどっこいしょ

文字の大きさ
4 / 5

4

しおりを挟む
 屋敷に着くなり、アルベルトは迷うことなくルカの手枷と足枷を外した。
 金属が床に落ちる、乾いた音。
 それを合図にするように、ルカの肩からふっと力が抜ける。

「疲れただろう。ゆっくり休むといい」

 そう言って案内したのは、屋敷の奥まった廊下に面した一室だった。
 扉を開けると、柔らかな灯りに照らされた寝台と、最低限ながらも上質な調度品が整然と並んでいる。

「ここが君の部屋だ」

 ルカが一瞬、目を見開く。
 それから部屋の中を見回し、扉の位置を確かめるように視線を滑らせ──やがて、すぐ隣の部屋に繋がっていることに気が付いた。

「……近いな」
「俺の寝室の隣だ。何かあったら、すぐ分かるだろう?」
「ふうん……監視付きってわけね……」

 ルカはそう言うと部屋に足を踏み入れた。──その直後だった。

「……っ」

 ふらり、と身体が揺れる。
 アルベルトが声をかけるより早く、ルカはふらふらとおぼつかない足取りで、ベッドの縁に腰を落としていた。

 顔色が明らかに悪い。
 もともと白い肌が、さらに血の気を失い、呼吸も浅くなっている。
 ──やはり。
 アルベルトはオークション会場にいた時から、彼が弱っていることに気づいていた。
 反抗的な態度の裏で、体力が限界に近いことを、見逃すほど鈍くはない。

「大丈夫か」

 ルカは答えず、ベッドに座ったまま、ぼんやりとした目で部屋を見回している。
 逃げ場を探しているようでもあり、それ以上に、現状をうまく飲み込めずにいるようにも見えた。
 やがて、その視線がアルベルトへと向けられる。
 じっと見つめてくる紅い瞳は、警戒と戸惑いが入り混じり、何か言いたげだった。
 アルベルトは一瞬、言葉を選ぶように沈黙し、それから静かに口を開く。

「……俺の血を飲めば、その体調不良は良くなるか?」

 その一言に、ルカははっきりと目を見開いた。
 視線はアルベルトの整った顔から、太い首元へと滑り落ちる。
 健康で、力に満ちた体──それは、吸血鬼にとって抗いがたい誘惑だ。
 ごくり、と細い喉が上下する。

「もちろん、君が望むなら、だが……」
「ッ……」

 次の瞬間、ルカは衝動的にアルベルトの逞しい首へ腕を回していた。
 吐息が近く、熱を帯びて肌に触れる。

「……良い香り……♡」

 うっとりとした表情で見上げてくるルカに、アルベルトは一瞬だけ言葉を失うのだった。


 チクリとした痛みの直後、快楽にも似た感覚がじわりと広がった。
 首元に伝わる温もりと、ゆっくりと血を吸われる感覚に、アルベルトは思わず息を整える。

「ん……く……んく……♡」

 ルカはまるで味を確かめるように、時間をかけて吸っている。
 本当に吸血鬼なのだな、と今さらのように思いながら、アルベルトは無意識のうちに、蜂蜜色の髪をそっと撫でていた。

「……美味いか?」

 問いかけると、ルカは小さく喉を鳴らし──

「ん……♡ ぷはぁ……♡」

 名残惜しそうに口を離す。
 唇についた血を、舌先でぺろりと舐め取るその仕草は、あまりにも妖艶で。

 ──まずい。

 胸の奥が熱を帯び、このまま抱き寄せて押し倒してしまいたい衝動が湧き上がる。アルベルトはそれを必死に抑え、名残を断ち切るように、そっとルカの体を引き離した。

「……少しは元気になったようだな。さっきより、顔色がいい」

 ルカは一瞬きょとんとした後、視線を伏せる。

「……ありがとう」

 素直なその一言に、アルベルトは微笑んだ。

「おやすみ」

 それだけを告げると、彼は迷いなく身を屈め、その無防備な額へとキスをした。

「……っ!?」

 驚くルカを残し、アルベルトは部屋を後にした。

 ──パタン。
 扉が閉まる音がして、ようやくルカから声が漏れた。

「今、キス……された?」

 じわじわと熱が顔に集まってくるのを自覚し、慌てたように額へ手を当てた。

「変なやつ……」

 小さく呟く声は、どこか落ち着かない。
 額にキスなんて、そんなことをされたのは、物心ついてからは親以外にいない。
 撫でる指先に、まだ微かに温もりが残っている気がして、ルカはますます顔を赤くした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

騎士は魔王に囚われお客様の酒の肴に差し出される

ミクリ21
BL
騎士が酒の肴にいやらしいことをされる話。

「レジ袋はご利用になりますか?」

すずかけあおい
BL
仕事帰りに寄る、いつものコンビニで五十嵐 歩(いがらし あゆむ)はイヤホンをつけたまま会計をしてしまい、「――――?」なにかを聞かれたけれどきちんと聞き取れず。 「レジ袋はご利用になりますか?」だと思い、「はい」と答えたら、実際はそれは可愛い女性店員からの告白。 でも、ネームプレートを見たら『横山 天志(よこやま たかし)』…店員は男性でした。 天志は歩に「俺だけのネコになってください」と言って…。

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

処理中です...