オークションで落札した吸血鬼をどうしても惚れさせたい

うんとこどっこいしょ

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 ルカを家に招き入れてからというもの、アルベルトは誰の目から見てもご機嫌だった。
 使用人たちは相変わらずルカを遠巻きにしており、吸血鬼という存在に怯えが残っている様子ではあるが、当の本人は気にも留めていないらしい。

「おはよう、ルカ。君は眠っている姿まで可愛らしいんだな……」

 そう囁きながら、ベッド脇に立つアルベルトはうっとりとした表情を浮かべる。

「このまま起きなければ……その可愛らしい唇に、つい口付けてしまいそうだ……」

 次の瞬間──バッ!
 布団が跳ね上がり、ルカが勢いよく飛び起きた。

「っ!?」
「やあ、おはよう」

 何事もなかったかのように微笑むアルベルトに、ルカは目を瞬かせる。

「お、おはよう……アルベルト」
「よく眠れたか?」

 そう問いかけた直後、さも思いついたように付け加える。

「朝食はどうする?俺の血を飲むか?」
「ありがとう、でも今はお腹空いてないから大丈夫」
「そうか、残念だ」
「……まだ何かあるの?」

 ベッドの傍らから動こうとしないアルベルトにルカは怪訝な表情を浮かべる。

「着替えるのなら手伝いを……」
「一人でできる!」

 出て行ってよ!とルカ。真っ白い頬をほんのりピンクに染めながら、手を突っぱねる。

「驚いたな」
「……?」
「君は怒った顔も可愛いときた」
「ッ!」

 言葉に詰まるルカを楽しむように、アルベルトはくすりと笑う。

「そうだ。今日は晴れているから、屋敷内のカーテンは閉めてある。安心して屋敷の中を散歩してくれて構わない」
「う……あ、ありがとう……」

 日光に弱いルカを気遣っての事だった。
 こんなふうに人から気遣われた経験が、ルカにはほとんどなかった。
 戸惑いを隠しきれず、ぎこちない態度になってしまったが、アルベルトはそれを気にする様子もなく背を向ける。

「俺は書斎にいる。お腹が空いたら、いつでもおいで」
「う、うん!」

 その言葉の意味が分からないほど、ルカは鈍くはなかった。
 寝室を出て行くアルベルトの背中を見送り、ひとり残されたルカは、ぽつりと呟く。

「……優しい……」

 どうにも調子が狂う。
 吸血鬼が絶滅危惧種になってからというもの、人間には虐げられるばかりだった。
 物のように扱われるのが当たり前で、こんなふうに接されたことなどない。
 それに──アルベルトは、ただ優しいだけじゃない。
 胸がざわつくような言葉を平然と口にし、こちらの反応を楽しんでいるようにも見える。
 悪ふざけなのか、それとも本気なのか……まだ判断がつかない。

「でも……すごく、良くしてもらってるよなぁ……」

 微笑むアルベルトの姿を思い浮かべ、ルカは熱くなった頬をそっと押さえた。
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