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2.万年金欠
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スマホは一ヶ月前に払えなくなって解約した。あんなもの無くても大丈夫だ!と強がっていたが、実際手元に無いと暇な時に困る。それだけが謙也にとってデメリットだった。
あーあ、早く携帯も欲しいしもういっそ身売りでもすっかな~、でもきっとアイツが怒るんだろうなぁと幼馴染みの男の顔が頭に浮かぶ。二見 深司。純粋な日本人のはずなのに異国を感じる彫りの深い顔立ち。腹が立つほどハンサムな奴の人を馬鹿にしたような笑みを思い出して、謙也は顔を顰めた。
数年前のことだ。今日みたいな金欠な時にホストクラブで働いたことがあった。ヘルプとして先輩ホストのお兄さんと客の女性と一緒に酒を飲んだだけだったのに、それだけで一発アウト。そりゃもうこっぴどく怒られた。たった一日体験入店しただけなのに、バレて拉致られてアイツのマンションの一室で一日中ヤりっぱなしの刑。快楽地獄とはまさにあの事だ。そもそもどうしてただの友人にあそこまで怒られなければならないのか分からない。でももうあんなのはまっぴらごめんである。だからホストはなし。でもボーイならいいんじゃ……女性客に媚びを売るわけでもないし……とそういった店が立ち並ぶ繁華街へ到着した。こういった店の良いところは履歴書なしでオーケーなところが多い事だ。人手が足りなければ行ってすぐ採用なんてこともある。謙也のようなフラフラしてる人間には嬉しい職場というわけだ。
「なんで私が出禁なのよッ!!」
加工された男たちが写る煌びやかパネルを眺めていると、ヒステリックな声が聞こえてくる。謙也が声のした方を見ると、ホストクラブから怒りで顔を歪ませた女性が内勤の男性二人の手によって店から追い出されているところだった。
「やめて!離して!」
両腕を掴まれて無理やり店からつまみ出された女性は「分かったわよッ!こんなクソみたいな店こっちから願い下げよ!!」と言って怒りにまかせてハイヒールをカツカツ鳴らしながら謙也の前を通り過ぎていく。
「こっえ~……」
思わずそう口に出る。するとその時、女性がくるりと振り返った。
「見てんじゃねーよッ!くそガキ!」
「……くそガキって……俺アンタよりたぶん年上……」
暴言を吐いた女性は謙也に背を向けると、路上に飛び出す勢いでタクシーを停めて乗り込む。
良かった~、怒鳴られただけで。タクシーが通りやすいように道路脇に避ける。解体工事現場の仮囲いに背を向けて、女が乗ったタクシーを流れるように見つめた謙也は心底ホッとしていた。ああいったヒステリー女は何をするか分からないから要注意だ。
「ねえ君いくら?」
「……はい?」
隣を見るといつの間にか男が立っていた。
「だから君だよ」
「…………おれ?」
でっぷりと太った中年サラリーマンは「うん、君すっごく僕のタイプだ」と熱い息を吐いた。
「え~、えっと俺別に体売ってるわけじゃないんすけど……」
「またまた~」
男はムフフと笑い「だってそこに立ってるじゃない」と指差した。
そこ?そこって?謙也はキョロキョロと見渡す。工事現場の仮囲いの前には謙也と同じように四、五人の女性が立っていた。まさかここって立ちんぼエリア……と謙也が理解し始めたころ、サラリーマンは鼻息を荒くさせながら言った。
「君になら三……いや四は出すよ!もちろん最後までさせてくれたらだけど、どうかな?」
「どうって言われても……」
「そんな事言わずにさぁ、あっ!じゃあご飯だけでもいいよ?奢るし、ね?行こう?」
「え~飯かぁ、それならまぁイイっすよ」
「やった!じゃあ行こう、僕の行き付けのバーがすぐそこにあるから」
「おっけー、俺酒飲むの久しぶりなんすよね~」
「本当に?じゃあ今日はたくさん飲もう!いやぁ嬉しいなぁ、こんな可愛い子と食事ができるなんて夢みたいだぁ♡」
「はは、大袈裟っすよ」
謙也は飯にありつけることの喜びでルンルン気分で男について行った。
あーあ、早く携帯も欲しいしもういっそ身売りでもすっかな~、でもきっとアイツが怒るんだろうなぁと幼馴染みの男の顔が頭に浮かぶ。二見 深司。純粋な日本人のはずなのに異国を感じる彫りの深い顔立ち。腹が立つほどハンサムな奴の人を馬鹿にしたような笑みを思い出して、謙也は顔を顰めた。
数年前のことだ。今日みたいな金欠な時にホストクラブで働いたことがあった。ヘルプとして先輩ホストのお兄さんと客の女性と一緒に酒を飲んだだけだったのに、それだけで一発アウト。そりゃもうこっぴどく怒られた。たった一日体験入店しただけなのに、バレて拉致られてアイツのマンションの一室で一日中ヤりっぱなしの刑。快楽地獄とはまさにあの事だ。そもそもどうしてただの友人にあそこまで怒られなければならないのか分からない。でももうあんなのはまっぴらごめんである。だからホストはなし。でもボーイならいいんじゃ……女性客に媚びを売るわけでもないし……とそういった店が立ち並ぶ繁華街へ到着した。こういった店の良いところは履歴書なしでオーケーなところが多い事だ。人手が足りなければ行ってすぐ採用なんてこともある。謙也のようなフラフラしてる人間には嬉しい職場というわけだ。
「なんで私が出禁なのよッ!!」
加工された男たちが写る煌びやかパネルを眺めていると、ヒステリックな声が聞こえてくる。謙也が声のした方を見ると、ホストクラブから怒りで顔を歪ませた女性が内勤の男性二人の手によって店から追い出されているところだった。
「やめて!離して!」
両腕を掴まれて無理やり店からつまみ出された女性は「分かったわよッ!こんなクソみたいな店こっちから願い下げよ!!」と言って怒りにまかせてハイヒールをカツカツ鳴らしながら謙也の前を通り過ぎていく。
「こっえ~……」
思わずそう口に出る。するとその時、女性がくるりと振り返った。
「見てんじゃねーよッ!くそガキ!」
「……くそガキって……俺アンタよりたぶん年上……」
暴言を吐いた女性は謙也に背を向けると、路上に飛び出す勢いでタクシーを停めて乗り込む。
良かった~、怒鳴られただけで。タクシーが通りやすいように道路脇に避ける。解体工事現場の仮囲いに背を向けて、女が乗ったタクシーを流れるように見つめた謙也は心底ホッとしていた。ああいったヒステリー女は何をするか分からないから要注意だ。
「ねえ君いくら?」
「……はい?」
隣を見るといつの間にか男が立っていた。
「だから君だよ」
「…………おれ?」
でっぷりと太った中年サラリーマンは「うん、君すっごく僕のタイプだ」と熱い息を吐いた。
「え~、えっと俺別に体売ってるわけじゃないんすけど……」
「またまた~」
男はムフフと笑い「だってそこに立ってるじゃない」と指差した。
そこ?そこって?謙也はキョロキョロと見渡す。工事現場の仮囲いの前には謙也と同じように四、五人の女性が立っていた。まさかここって立ちんぼエリア……と謙也が理解し始めたころ、サラリーマンは鼻息を荒くさせながら言った。
「君になら三……いや四は出すよ!もちろん最後までさせてくれたらだけど、どうかな?」
「どうって言われても……」
「そんな事言わずにさぁ、あっ!じゃあご飯だけでもいいよ?奢るし、ね?行こう?」
「え~飯かぁ、それならまぁイイっすよ」
「やった!じゃあ行こう、僕の行き付けのバーがすぐそこにあるから」
「おっけー、俺酒飲むの久しぶりなんすよね~」
「本当に?じゃあ今日はたくさん飲もう!いやぁ嬉しいなぁ、こんな可愛い子と食事ができるなんて夢みたいだぁ♡」
「はは、大袈裟っすよ」
謙也は飯にありつけることの喜びでルンルン気分で男について行った。
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