魔王様に溺愛されています!

うんとこどっこいしょ

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番外編 湯けむりにとろけて

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「え、温泉!?」

 突然のお出かけに浮かれていた春斗は、目的地を聞いた瞬間張り声を上げた。
 豪華な魔導馬車の中、向かいに座るバロンはいつもの微笑みを浮かべて頷く。

「そうだ。魔界でも有名な癒しの湯だ。こちらに来て春斗も疲れているだろう?たまにはのんびりしてくれ」

「ありがとう。魔界にも温泉ってあるんだ!……でもさ、温泉って、こう……誰でも入れる系?男湯と女湯……いや、種族別とか?」

「混浴だ」

「混浴!?」

 声が裏返った。春斗の頭の中に、湯けむりの向こうから現れるゴツい魔族たち、むっちり美女な魔族たち、そして、堂々と隣に立つであろう魔王バロンの姿。

(無理!絶対むり!!恥ずかしくて死ぬ!!)

 なんて思っていたけれど、馬車が止まり現地に到着。

「わあ!!」

 広がる景色は、まるで高級リゾート。硫黄の香り、ほかほかと湯気が立ちのぼる露天風呂。
 人間界を思い起こす光景に春斗は嬉しくなってバロンの後に続いた。

「さあ、春斗。脱ごうか」

「言い方!!」

 恥ずかしがる春斗にバロンは何も言わず、さっさと服を脱ぎ始める。
 せっかく連れてきてもらったんだから……と春斗はドキドキする胸を抑えながら裸になった。

*

「春斗、顔が赤いな。逆上せたか?」

「は、はい!そうです!湯が熱いから!」

 人間は珍しいのか、他の魔族たちの視線から逃れるように岩場の陰に隠れていた春斗。それを気にしてかバロンが春斗を呼び寄せた。

「湯冷ましが必要だな。こっちへ来い。俺の隣はちょうど温めだぞ」

 バロンと距離をおいて湯に浸かっていたかった春斗は驚いて腰を上げる。

「い、いいです!」

「なぜ嫌がる?」

「嫌がってはなくて……だって、バロンさん……すごく……色っぽくて……目のやり場に困るっていうか……」

「色っぽい?はは、そういう目で見ていたのは俺だけじゃないってことか──嬉しいな」

 バロンはそう言うと、春斗の腰を引き寄せて腕の中に閉じ込めた。

「あ、あわわ!!」

 慌てる春斗。バシャバシャと湯が跳ねる。
 体が触れそうな距離で、バロンがそっと囁いた。

「心地いいな」

「あっ」

 バロンに囁かれただけで背筋がぞくりと震える。
 湯の中で彼の指がなぞるように肌に触れる。
 湯けむりの中、視界もぼやけて、身体の感覚ばかりが鮮やかになる。

「春斗……」

「ちょ、だめ!ストップ!ストップ!風呂でそういうのはダメだって!あっ、そこは……!!」

「ずっと我慢していたんだ」

「んっ……バロンさ……っ」

 キスが落ちたのは、首筋。唇が触れた場所が、熱を持ってじんじんと疼く。
 春斗は抗議の言葉を飲み込み、観念したように顔を真っ赤にしながら身を預けた──。
 その日の温泉宿には春斗の甘い声が響き渡ったらしい。

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