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可愛そうなお姫様の話
二十四話
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「何でこうなった、というかこうなるの?」
何度か抵抗はした。しかし、抵抗を予測されていたらしく彼女の傍に仲間がさりげなく様子を窺っていたようで幾ら頭を振っても、腕力にものを言わせようとも所詮は多勢に無勢、数に任せて押さえ付けられてしまえばどうにもならなかった。
衣装には文句はない。
暁の夢は、立派な女優だ。
所詮高校の演劇部では本格的なキスシーンなんてしない、する振りだ。戦うシーンだって舞台上で倒れるだけで実際に水をぶっかけたり火をつけたり、本物の刃物を突き付けたりしない。しかし暁の夢は立派な女優だった。職業として志すなら羞恥や臭い、痛みや生理的に不快な状況下に置かれる事もあると覚悟なら出来ていたつもりだ。
実際、下位の召し使いの着物に袖を通す事に抵抗感なんてない。演じる上で必要なものであるなら当然だし、これからその人物になりきるのにまた必要な装置でもあると思う。
しかし、これはない。
「何でこうなるの……?」
暁は繰り返した。
葵の小説の中では劇中の舞台や時代ははっきりと明言されていなかったが騎士や領地を取りまとめる貴族の娘が姫と呼ばれる身分である事などから、恐らく中世後期のヨーロッパ、イギリスなどがイメージされているのだと考え、それらの資料を参考にして舞台道具を揃え、仕立てていった。ファンタジーとしてある程度オリジナリティや、時代とは合わない部分、演出とそぐわない装飾などは排除しているらしいが基本的な部分は学んで製作したと聞いている。
「なら、何故こうなるの!?」
何度目か、暁は叫んだ。
衣装は良い。フリフリのメイド服とかそういう訳じゃないしスカートの長さも足首まであるし色も地味だ。エプロンに少しフリルがそえられているが、こういったものも使用人にはあるかもしれない、といった程度である。若干エプロンの結び目が可愛らしくリボンでアレンジされているが色は白だし、目立たない程度だろう。
では何故自分はそれそこメイド喫茶のメイドさながらにシュシュで髪をまとめられ見事にツインテールに仕立て上げられているのだろう。
「中世ヨーロッパにこんな髪型存在しないでしょっ!?歴史の教科書で見たことある!??」
暁の記憶ではこの年代のご婦人方は身分は関係なく基本的に髪は纏めてレースなどで頭上で着飾っていたと思う。メイドや女中ならば地味な白い布で頭部を覆うように髪を纏めるのが一般的ではなかったか。
「きゃーあかつきかわいー」
暁の抗議などものともせず、裁縫技術やセンスに加え暁のヘアセットが大変お気に召した様子の彼女は、暁が不服さを丸出しにしているのもお構いなしに手にしたスマートフォンで暁のメイド姿をぱしゃしゃと撮りまくっている。万にひとつもないとは思うが、部活の広報に使われたりしたら暴れる覚悟だ。
「ちょっと!写真に撮るな!それよりこれほどいてよ!世界観にあってないじゃない!」
「えーだってさあ」
にんまりとスマートフォンを背後に隠しながら彼女は笑んだ。
「暁ってば、背も高いしスタイル良いのに化粧っけもないしオシャレも無関心じゃん。髪もサラサラできれいなのにさ」
「そうそう、私も一回暁が髪巻いたりしたの見てみたかったのに折角長い髪もずっと結んでるだけじゃん。こんなチャンスでもないと、遊ばせてくれないっしょ」
「へ、えっ?」
意外な言葉に暁は挙動が乱れる。そんな事、言われるとは思いもしてなかった。
何度か抵抗はした。しかし、抵抗を予測されていたらしく彼女の傍に仲間がさりげなく様子を窺っていたようで幾ら頭を振っても、腕力にものを言わせようとも所詮は多勢に無勢、数に任せて押さえ付けられてしまえばどうにもならなかった。
衣装には文句はない。
暁の夢は、立派な女優だ。
所詮高校の演劇部では本格的なキスシーンなんてしない、する振りだ。戦うシーンだって舞台上で倒れるだけで実際に水をぶっかけたり火をつけたり、本物の刃物を突き付けたりしない。しかし暁の夢は立派な女優だった。職業として志すなら羞恥や臭い、痛みや生理的に不快な状況下に置かれる事もあると覚悟なら出来ていたつもりだ。
実際、下位の召し使いの着物に袖を通す事に抵抗感なんてない。演じる上で必要なものであるなら当然だし、これからその人物になりきるのにまた必要な装置でもあると思う。
しかし、これはない。
「何でこうなるの……?」
暁は繰り返した。
葵の小説の中では劇中の舞台や時代ははっきりと明言されていなかったが騎士や領地を取りまとめる貴族の娘が姫と呼ばれる身分である事などから、恐らく中世後期のヨーロッパ、イギリスなどがイメージされているのだと考え、それらの資料を参考にして舞台道具を揃え、仕立てていった。ファンタジーとしてある程度オリジナリティや、時代とは合わない部分、演出とそぐわない装飾などは排除しているらしいが基本的な部分は学んで製作したと聞いている。
「なら、何故こうなるの!?」
何度目か、暁は叫んだ。
衣装は良い。フリフリのメイド服とかそういう訳じゃないしスカートの長さも足首まであるし色も地味だ。エプロンに少しフリルがそえられているが、こういったものも使用人にはあるかもしれない、といった程度である。若干エプロンの結び目が可愛らしくリボンでアレンジされているが色は白だし、目立たない程度だろう。
では何故自分はそれそこメイド喫茶のメイドさながらにシュシュで髪をまとめられ見事にツインテールに仕立て上げられているのだろう。
「中世ヨーロッパにこんな髪型存在しないでしょっ!?歴史の教科書で見たことある!??」
暁の記憶ではこの年代のご婦人方は身分は関係なく基本的に髪は纏めてレースなどで頭上で着飾っていたと思う。メイドや女中ならば地味な白い布で頭部を覆うように髪を纏めるのが一般的ではなかったか。
「きゃーあかつきかわいー」
暁の抗議などものともせず、裁縫技術やセンスに加え暁のヘアセットが大変お気に召した様子の彼女は、暁が不服さを丸出しにしているのもお構いなしに手にしたスマートフォンで暁のメイド姿をぱしゃしゃと撮りまくっている。万にひとつもないとは思うが、部活の広報に使われたりしたら暴れる覚悟だ。
「ちょっと!写真に撮るな!それよりこれほどいてよ!世界観にあってないじゃない!」
「えーだってさあ」
にんまりとスマートフォンを背後に隠しながら彼女は笑んだ。
「暁ってば、背も高いしスタイル良いのに化粧っけもないしオシャレも無関心じゃん。髪もサラサラできれいなのにさ」
「そうそう、私も一回暁が髪巻いたりしたの見てみたかったのに折角長い髪もずっと結んでるだけじゃん。こんなチャンスでもないと、遊ばせてくれないっしょ」
「へ、えっ?」
意外な言葉に暁は挙動が乱れる。そんな事、言われるとは思いもしてなかった。
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