9 / 295
第二章 デビュー前
第2話-1 自分を愛した美少年
しおりを挟む
第2話 自分を愛した美少年
4人の少年達が集められ、天界アイドルプロジェクトが発足されてから目まぐるしく日々が過ぎ去っていった。
彼らは同じグループでアイドルデビューする仲間となり、結束を深めるために共同生活を命令された。
ガニュメデスを除き、他の少年達は歌もダンスも本格的に習ったこともなくほぼ素人だった。
天界でアイドルとして活動するためにはそれらは必須なので、毎日ハードなレッスン漬けの日々を過ごしていた。
またそれと並行して、教養や知識を習得するための授業も受けなくてはならなかった。
朝から夜までレッスンや授業が続き、それが終わった後は地球のアイドル達のパフォーマンスを鑑賞して学習しなくてはならず、肉体も脳も酷使して毎日クタクタになっていた。
少年達は皆、身体能力も高く運動神経に恵まれていたので、ダンスの上達は比較的早かったが、歌のレッスンに特に苦戦していた。
だが、彼らにとってその生活は決して苦ではなかった。
なぜなら、彼らの目的はただ一つだったからだ。
その目的のために、必死になって練習していた。
その目的の為ならば、どのような苦労も厭わない覚悟があった。
そんな多忙な日々を送る少年達であったが、ヒュアキントスは気掛かりなことがあった。
それはナルキッソスのことだった。
ナルキッソスはいつも一人でいて、皆から孤立しているからだった。
彼らがレッスン生活を始めたばかりの頃、こんなことがあった。
「あー…ダメ、もう動けない…」
「体力バカのお前もさすがにしんどいみたいだな…」
ハードなレッスンが終わった後、ヒュアキントスとアドニスは床に寝たまま、そんな会話を交わしていた。
運動が大好きで体育会系のヒュアキントスは体力には自信があったが、さすがに身体に堪えたようだ。
一方、アドニスも疲労困ぱいの様子だった。
「……………」
二人が床に寝転んでいると、ナルキッソスはそんな二人に見向きもせずレッスン場を去ろうとした。
「あ!待って、ナルキッソス!」
ヒュアキントスは慌てて立ち上がり、ナルキッソスの元に駆け寄っていった。
だが、彼は振り返ることすらしなかった。
それでもめげずに、ヒュアキントスは話しかけた。
「レッスン、きつかったね。でも、仲間として頑張ろうね!」
ニッコリと笑顔でそう声をかけた。
だが……。
「……別に仲間じゃない」
「………え?」
ナルキッソスは冷たい目を向け、こう言い放った。
「僕は、僕の目的のために頑張ってるだけだ。仕方なくお前達と組んでいるが…目的のためだ。お前達と馴れ合う気は一切ない」
「え」
その言葉に、ヒュアキントスは固まってしまった。
ナルキッソスは気にする様子もなく去っていった。
(うわー…拗らせてんなぁ…)
そのやり取りを見ていたアドニスはそう心の中で思った。
そんな出来事があったが、それでもヒュアキントスはめげることなくナルキッソスを気にかけて話しかけていた。
「ねえ、休憩中にみんなで遊ぶんだけど、一緒にどう?」
「断る」
「一人が好きなの?」
ヒュアキントスは優しく微笑んで、そう尋ねた。
「……。いいから向こうに行けよ」
「ふーん…。そっか」
やっとあっちへ行ってくれる…そう思っていたナルキッソスに、ヒュアキントスは笑ってこう告げた。
「いいよ、また誘うから」
それを聞いたナルキッソスは思わず心の中で呟いた。
(………変な奴)
その後、いつ誘っても無視されていたが、めげることはなかった。
そんな中、ヒュアキントスはあることが気になっていた。
(ナルキッソスって…そういえばいつも鏡を見てるな)
常に手鏡を持ち歩き、事ある毎に鏡を見て、自分の姿を眺めているのだ。
(きっと、美意識が高いんだろうな)
そう思い、深くは考えなかった。
しかし、それは間違いであった。
4人の少年達が集められ、天界アイドルプロジェクトが発足されてから目まぐるしく日々が過ぎ去っていった。
彼らは同じグループでアイドルデビューする仲間となり、結束を深めるために共同生活を命令された。
ガニュメデスを除き、他の少年達は歌もダンスも本格的に習ったこともなくほぼ素人だった。
天界でアイドルとして活動するためにはそれらは必須なので、毎日ハードなレッスン漬けの日々を過ごしていた。
またそれと並行して、教養や知識を習得するための授業も受けなくてはならなかった。
朝から夜までレッスンや授業が続き、それが終わった後は地球のアイドル達のパフォーマンスを鑑賞して学習しなくてはならず、肉体も脳も酷使して毎日クタクタになっていた。
少年達は皆、身体能力も高く運動神経に恵まれていたので、ダンスの上達は比較的早かったが、歌のレッスンに特に苦戦していた。
だが、彼らにとってその生活は決して苦ではなかった。
なぜなら、彼らの目的はただ一つだったからだ。
その目的のために、必死になって練習していた。
その目的の為ならば、どのような苦労も厭わない覚悟があった。
そんな多忙な日々を送る少年達であったが、ヒュアキントスは気掛かりなことがあった。
それはナルキッソスのことだった。
ナルキッソスはいつも一人でいて、皆から孤立しているからだった。
彼らがレッスン生活を始めたばかりの頃、こんなことがあった。
「あー…ダメ、もう動けない…」
「体力バカのお前もさすがにしんどいみたいだな…」
ハードなレッスンが終わった後、ヒュアキントスとアドニスは床に寝たまま、そんな会話を交わしていた。
運動が大好きで体育会系のヒュアキントスは体力には自信があったが、さすがに身体に堪えたようだ。
一方、アドニスも疲労困ぱいの様子だった。
「……………」
二人が床に寝転んでいると、ナルキッソスはそんな二人に見向きもせずレッスン場を去ろうとした。
「あ!待って、ナルキッソス!」
ヒュアキントスは慌てて立ち上がり、ナルキッソスの元に駆け寄っていった。
だが、彼は振り返ることすらしなかった。
それでもめげずに、ヒュアキントスは話しかけた。
「レッスン、きつかったね。でも、仲間として頑張ろうね!」
ニッコリと笑顔でそう声をかけた。
だが……。
「……別に仲間じゃない」
「………え?」
ナルキッソスは冷たい目を向け、こう言い放った。
「僕は、僕の目的のために頑張ってるだけだ。仕方なくお前達と組んでいるが…目的のためだ。お前達と馴れ合う気は一切ない」
「え」
その言葉に、ヒュアキントスは固まってしまった。
ナルキッソスは気にする様子もなく去っていった。
(うわー…拗らせてんなぁ…)
そのやり取りを見ていたアドニスはそう心の中で思った。
そんな出来事があったが、それでもヒュアキントスはめげることなくナルキッソスを気にかけて話しかけていた。
「ねえ、休憩中にみんなで遊ぶんだけど、一緒にどう?」
「断る」
「一人が好きなの?」
ヒュアキントスは優しく微笑んで、そう尋ねた。
「……。いいから向こうに行けよ」
「ふーん…。そっか」
やっとあっちへ行ってくれる…そう思っていたナルキッソスに、ヒュアキントスは笑ってこう告げた。
「いいよ、また誘うから」
それを聞いたナルキッソスは思わず心の中で呟いた。
(………変な奴)
その後、いつ誘っても無視されていたが、めげることはなかった。
そんな中、ヒュアキントスはあることが気になっていた。
(ナルキッソスって…そういえばいつも鏡を見てるな)
常に手鏡を持ち歩き、事ある毎に鏡を見て、自分の姿を眺めているのだ。
(きっと、美意識が高いんだろうな)
そう思い、深くは考えなかった。
しかし、それは間違いであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
