天界アイドル~ギリシャ神話の美少年達が天界でアイドルになったら~

B-pro@神話創作してます

文字の大きさ
12 / 295
第二章 デビュー前

第3話-2 秘密の共有

しおりを挟む
「では僕から言おう。僕は欲しいものがあるんだ」
まず初めにそう言ったのはガニュメデスだった。

「僕が欲しいもの、それは星。衛星だよ」
「は・・・?ほ、星?」
「そう、木星の衛星が欲しいんだ。僕からは以上だ、次どうぞ」

呆気に取られる一同を他所に、そう言って話を打ち切った。


次に発言したのはヒュアキントスだった。


「僕とアドニスは同じ願い事なんだ。僕たちは…実は1万3千年前に地球にいた植物神なんだよ。……でも、事情があって今は神格を失ってる。だから僕たちは何としても神格を取り戻したい。そのためにはどんなことだってするつもりだ」
「え、君たちって地球にいたの?」
「うん…今はここにいるけど…」


「僕の願いは…」
ヒュアキントスが話し終わらない内にナルキッソスは語り出した。


「僕の願いを叶えるためにはお前たちの協力が必要だ。僕の目的はただ一つ。自分しか愛せない呪いを解くことだ」
「……はぁ!?」

その答えを聞いた瞬間、3人は思わず声を揃えて叫んだ。
そんな彼らの反応など気にせず、ナルキッソスは自己陶酔しながら語った。


「……僕は、僕だけしか愛せないんだ。僕は僕のことを誰よりも愛している。自分しか愛せない呪いにかかってしまったんだ」




ヒュアキントスは真剣に聞いていたが、アドニスは口に手を当てて難しい顔をし、ガニュメデスはお腹を抱き締めて俯いていた。

そして2人とも小刻みに震えているではないか。

ヒュアキントスは気付いた。
2人が必死に笑いを堪えていることに。


(おいヒュア…どうしよ、俺、笑いそうなんだけど)
アドニスはテレパシーでヒュアキントスにそう語りかけた。

2人はテレパシーで簡単な会話ならすることができるのだ。


(ダメだよ!真剣に話してるのに不謹慎だろ!)


「自分しか愛せない…こんなに不毛な恋をしている者が僕以外にいるだろうか?抱き合うことも触れ合うこともできず…だが愛する気持ちを抑えられないんだ。ああ、こんなに苦しい思いをするならいっそ死んだ方がマシだ」

自己陶酔に浸った顔でナルキッソスは語っている。


(ごめん…俺、もう無理。笑いを堪えるの限界)
(絶対ダメーーーーーー!!!)

アドニスが我慢して限界を越えるギリギリのところで彼の語りは終わった。


「ナルキッソス……」
ヒュアキントスはナルキッソスの話を最後まで真剣に聞いていた。

「お、お前…辛い思いをしてきたんだなぁ」
アドニスは目を滲ませてそうナルキッソスに声をかけた。
笑いそうになるのを堪えて、涙目になっていたのを誤魔化すためだった。


「ナルキッソス……。ありがとう、僕達に打ち明けてくれて。おかげで君のこと、少し理解できたよ。必ず達成しよう、そのために協力し合おう!」

ヒュアキントスも目を潤ませながらナルキッソスの手をギュッと握った。



ナルキッソスは少し照れ臭そうに、ほんの少しだけ頬を赤くして、そっぽを向いた。

(よし……!何とか誤魔化せたぞ……!!)
心の中でガッツポーズをするアドニスと、それを見透かしているかのようにニヤニヤしているガニュメデスだった。


こうして、少年達は同じ気持ちを確認し、少しだけ仲間意識を強めることができたのだった。


第4話に続く・・・
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...