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監禁前夜
三話・変えられなかったモノ①
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メアとの昼食の後、アイネは清々しい気持ちで午後の講義に出席した。ダルくて堪らない水曜日も、彼との昼食という楽しみが出来たのだから話は別だ。これからは眠たい水曜日だって良いものとなるだろう。
嬉しくて、楽しみで、だからこそ……悩ましい。それはもう頭が痛くなるほどに。脳みそにこびりついて離れなくなった悩みは、未消化のTo do リストよろしく思考回路に居座り続け、それらを思い出す度にアイネは知らず溜め息をこぼしていた。
たった一枚の問題が否が応でも存在を主張する。薄くて、ぺらくて、一行しか書いていない悩み。それなのに、それは、こんなにも大きくて重い。
午後の講義が終わると、アイネはそそくさと荷物をまとめ廊下へと出た。悶々とした気持ちは依然切り替わることがなく、意識はまるで別世界を彷徨っているかのようにぼんやりとし、ただただ歩みを進める。
そうして、もう少しで学び舎を離れ一般社会との境をまたぐ、……と言ったところで声をかけられた。
「昼間の、誰だ?」
前に進もうとした身体はグンッと後方に引っ張られ、足がたたらを踏む。誰かがアイネの腕を掴んだのだ。かけられた声音と掴む腕の力はしっかりと強く、けれど傷付けるほどの粗暴さは無い。
声の主にアイネは覚えがあった。朧だった世界へと割り込んできた来訪者に警戒することもなく、後ろをちらりと振り返る。と、そこには思った通りの如何にもスポーツマンといった風体の男が立っていた。すっと伸びた背筋に、意志の強そうな瞳、短く切り揃えられた運動部らしい短髪は今日も爽やかだ。
「なんだ、圭吾か。お前には関係ないだろ。幼馴染だよ」
「……客じゃなくて?」
「違う。アイツはそんなことオレに求めない」
お前らとは違うんだよ。
内心、吐き捨てるように吠えた。
「アイネがあんな風にスキンシップさせてるの、初めて見た」
「そりゃ幼馴染だからな。アイツは良いの。……で、なに?」
男、圭吾の目に咎めるような色が濃く塗られていることに気付きながら、アイネは澄まし顔を崩さず彼を見上げた。彼が好む態度を演じ、本当の己をひた隠す。
これから先に起こることを理解した心が、密かにどよめきザワつくのを感じながら。
嬉しくて、楽しみで、だからこそ……悩ましい。それはもう頭が痛くなるほどに。脳みそにこびりついて離れなくなった悩みは、未消化のTo do リストよろしく思考回路に居座り続け、それらを思い出す度にアイネは知らず溜め息をこぼしていた。
たった一枚の問題が否が応でも存在を主張する。薄くて、ぺらくて、一行しか書いていない悩み。それなのに、それは、こんなにも大きくて重い。
午後の講義が終わると、アイネはそそくさと荷物をまとめ廊下へと出た。悶々とした気持ちは依然切り替わることがなく、意識はまるで別世界を彷徨っているかのようにぼんやりとし、ただただ歩みを進める。
そうして、もう少しで学び舎を離れ一般社会との境をまたぐ、……と言ったところで声をかけられた。
「昼間の、誰だ?」
前に進もうとした身体はグンッと後方に引っ張られ、足がたたらを踏む。誰かがアイネの腕を掴んだのだ。かけられた声音と掴む腕の力はしっかりと強く、けれど傷付けるほどの粗暴さは無い。
声の主にアイネは覚えがあった。朧だった世界へと割り込んできた来訪者に警戒することもなく、後ろをちらりと振り返る。と、そこには思った通りの如何にもスポーツマンといった風体の男が立っていた。すっと伸びた背筋に、意志の強そうな瞳、短く切り揃えられた運動部らしい短髪は今日も爽やかだ。
「なんだ、圭吾か。お前には関係ないだろ。幼馴染だよ」
「……客じゃなくて?」
「違う。アイツはそんなことオレに求めない」
お前らとは違うんだよ。
内心、吐き捨てるように吠えた。
「アイネがあんな風にスキンシップさせてるの、初めて見た」
「そりゃ幼馴染だからな。アイツは良いの。……で、なに?」
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これから先に起こることを理解した心が、密かにどよめきザワつくのを感じながら。
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