君と僕の妊娠計画

白亜依炉

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君と僕の妊娠計画④

 生徒会業務を終えて帰り支度を整える頃には、陽もとっぷり暮れ藍色の天井をベースにスパンコールが煌めき始めていた。部活動もすでに終わっているようで廊下からは何の物音もしない。
 先輩はというと、結局それなりに長い時間生徒会室に居座り続け、色んな人との談笑を楽しんでいた。オレンジの光が眩しい夕暮れになって、ようやく戻ってきた会長に見つかって大目玉を食らい、しぶしぶ寮へと連行されたのが最後の姿だった。最後のさいごまでどうにか抵抗しようとしていた先輩の、あの強情な精神性に弟との繋がりを感じずにはいられない。

 ……あれ、もしかして今度は僕がその役目に……??

 さすがにそれはぞっとしない。今から対策を考えておこうかな……。そんなことを思いながらかぶりを振って嫌な想像を霧散させる。残ったモヤは隅の方に置いておいて、僕は制服の内ポケットの中にずっと仕舞いっぱなしだったスマートフォンをようやく開いた。ロック画面に映った通知のそっけない文面。それに思わず顔が緩んで、他の子たちへの挨拶もそこそこに僕は半ば走り出すように部屋を出た。
 短い筈の廊下が長く感じて、急く気持ちに引っ張られるように足を進める。角を曲がり、昇降口で靴を履き替え、玄関を抜け――

「よ。お疲れ」

 そしたら、そこに彼がいた。
 一面にガラスが張られた正面玄関は外が筒抜けで、玄関先にある3段程度の小さな段差に座り込む背中が丸見えだった。褪せた黄色は風に揺れて、私服に着替えたらしく見慣れたパーカーを羽織っている。駆け寄る音を耳聡く聞きつけた彼は振り返って、上記の言葉を僕にくれた。

「ごめん、待たせた?」
「ま、ほどほどに。……なんてな、事情もわかってっし別にイーよ」

 何も気にしてないよと冗談めかして笑う顔が可愛くて、どうして僕の恋人はこんな可愛いのかと議論したくなる。可愛く見えてるのなんてお前くらいだろって優弥には言われるけど。可愛いものは可愛いんだから仕方ない。惚れた病に薬なしだ。

  優弥の隣に並ぶと、目線の少し下に優弥の顔があって必然的に見上げられる。無自覚な上目遣いをされることもあって、とてもイイ。……けど、身長は数センチしか変わらないからそれほど大きな差っていうものはない。僕としてはちょっと悔しい話だ。αは体格的にも優れやすいっていうのに、僕は他のαと比べれば低い方になってしまう。反対に優弥はΩにしては背が伸びた方で、他のΩと比べるとひょこっと少し飛び出る形になるらしい。
 そんな訳で、僕らは二人並べばそれぞれの影響でプラスマイナスほぼゼロだ。今からでも身長って伸びますか……。

 ゆっくりとした足並みで寮への道を辿っていく。歩きなれた平坦な道も、二人で歩けばちょっとしたデートコースになるんだからお得な頭をしてるなぁって自分でも思う。

「それで、先輩カンカンに怒っちゃってさぁ。寮に戻ってもらうの大変、」
「? ……どうした?」 

 ふと、優弥のあたりから仄かに甘い香りが漂ってきた。意識すると匂いはどんどん甘ったるいものへと変化し、濃くなっていく。僕はこの匂いの正体を知っている。
 優弥のフェロモンだ。Ωがヒート時に発するフェロモンは他のαやβの性的欲求を誘い、思考力を奪う困った特性がある。これは番を得ることで変化し、番相手にしか感じなくなるか完全に消えてなくなる。優弥の場合は番の相手にだけ感知できるようになった。
 よって、僕という番を持つ優弥のフェロモンは僕にしか感じない。他の誰にも影響はない。……のは、良いんだけど……。

「……優弥、お前体調わるい?」
「は? いや全然」

 きょとんとした顔で言う優弥の表情に嘘は見えない。肌も赤らんでいる様子はない。つまり、ヒートにはなっていない。なによりヒートだった場合、こんな呑気な速度で歩こうとはしないだろう。

 じゃあ、……なんで?
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