自称引きこもりの悪役令嬢

ぎんさむ

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ヒロイン襲来したらしいよ

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「えっと、それは昨日のことをもってですか?」

「違う、母上に言われていたんだ。成人するまでに婚約者を決めろと」

「それで………なぜ私?」

「………落ち着くから」

「え!?」

「一緒にいて………落ち着くから」

顔を真っ赤にしてくれながら言ってくれたその言葉に思わずくぅぅぅぅと言ってしまいそうになる。ツンデレ最高!でも、まずいぞ。これじゃあ普通の悪役令嬢がヒロインになっちゃうという王道を進んでしまう。引きこもりが王道など進んでられるものか!

「申し訳ありません………」

「…………そうか。理由を聞いていいか」

「わたくしよりお似合いの方がいるからです」

「なぜそう思う」

「わたくしは今日見て分かったかと思いますけど、大の猫被りです。それに性格もあまりいいとは言えません。家柄や、見た目は申し分ないと思いますが長年付き合っていく上では大変だと思います。
ですから、貴方のためを思っても断ったのです」

「そうか、いらぬ心配をかけたな。
だが安心しろ。俺はつまらない女は嫌いだ。お前みたいな性悪ぐらいがちょうどいい。次に申し込むときは絶対はいと言わせてやる」

…………かっけぇ。こんな言葉言ってみたいわ~。しかもなんでこういう時だけ照れないの?なんで?異世界ほんと最強だな。なんとなくこちらが照れくさくなってしまいそ、そうですかとしか言えなくなってしまった。気まずい。

「あの、中どうぞ」

「いやいい。今日はこれを言いたかっただけだ。用事は済んだからもう帰る。あと、お前を惚れさせる約束忘れてないからな」

「あ………はい」

スタスタと自由気ままに帰ってしまう王子にハッと気づく。名前、知らないわ。名前知らないのに婚約されちゃったわ。アカンくね?これやばくね?え、ど、どうしよう。わたわたオロオロ。どうしようとやっているとどこから出てきたのやら。嬉しそうな顔をしたシャルルが出てきた。

「へえ、なんか面白そうだね!」

「………他人事じゃないよ?私が義姉になるかも知れないんだよ?」

「え………」

「おい」

「まあ、それはいいとして僕ねゲームとか頭脳戦とか心理戦とか大好きなんだよね」

「うん」

「ふふ、僕ねー、また面白いゲーム思いついちゃったんだ~。明日から付き合ってね」

「えー、いいけど」

「それから、
兄様の名前はローズ・グリッド・ジルダ。
君の嫌っている変態糞兄…ゔゔん、の名前はローズ・グリッド・イヴだよ」

「あ、どうもご丁寧に」

最後の変態糞兄は心の片隅に放っておくから大丈夫だよ。途中どす黒い顔になったことも忘れておくからね。違うよね。君はもっとふわっとした穏やかな微笑を絶やさない素敵な少年だよね。お姉さん知ってるから。うん。「じゃあね」と言って去っていくシャルルにハハハハハと乾いた笑みを漏らしながら手を振った。違う。幻想だ。そうだ。
明日からまたゲーム付き合わなきゃいけなのかー、私忙しいのに~でも、シャルルくんのためだったらいいかな☆なんてこと言いません。乙女ゲームを制覇したと言っても過言ではない私です。それってつまりあのケモ耳王子から私を奪うって展開じゃない!?やっだ、心臓買ってこないと。いやーヒロインさんに本当に申し訳ないなぁ。いやごめんねほんと。謝るよ。けどさ、いっつも壁の陰から見てるのバレバレなんだよね。すっごい顔しながら。やめなよ。私の取り巻きに集団リンチされるよ?と、思っていたら教室に戻った時に研修生たちにいじめられてました。おやめなさい、品格が下がりますよ。それから私も地獄に落ちるのでやめてください。

「よしてあげて。マリーさんこれ、東屋の近くに落ちてたわよ」

「あわわ、本当ですか!?」

「えぇ、でもよくあそこに入れたわね。東屋の付近ではいつも警備隊がいて私の認証がないと入れないはずなのだけど……」

「そうなんですか!?普通に入れましたよ!?」

血の気が去った顔をしながら取り繕うヒロインを見て少し楽しくなってしまう。いけないよ。悪役魂はしまっておかないとね。
今度からは気をつけてね~今度一緒に我が家の東屋でお茶しましょうね~と、ことを終わらせようとしたその時

「いいえ、貴方見張りを買収なさったでしょう」

いきなり登場優秀補佐官シリル様。

「え!?そんな………私そんなこと……」

「証拠があるわ」

「えっ」

大変なことになりそうだ。
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