二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
9 / 475

懐かれました

しおりを挟む
 アレンとの言い合いの末、とりあえず町まで案内を頼むことにした。
 呼び名に関しては名前で呼ばないなら抱っこして連れて行くと言われ仕方なく了承し、それでは縁が名前を教えないのもおかしいだろうとこれまた仕方なく名前を呼ぶことを許した。
 前世では押しに弱いとよく言われてはいたが、どちらかというと面倒くさいことはもうどうでもいいと流してしまう性格なのである。

 「エニシ、エニシ。大好きだエニシ」

 「そうですか。楽しそうで何よりです」

 勝手に一人で楽しんでなさい。
 あれからずっと嬉しそうに、無意味に縁の名前を呼び続け、事あるごとに「好きだ」「愛してる」と愛を囁き続けてくる。
 ウザい。正直言って鬱陶しい。
 これはあれだ。雛の刷り込みのようなものなのだろう。
 アレンが相手を探しているその時にタイミングよく縁が現れただけだ。
 そう、縁にとっては運悪く条件が揃ってしまっていただけ、ただそれだけだ。
 好かれることが嫌とは言わないし、恋愛対象という意味では縁も同性が対象ではあるが、縁だって好みはある。
 おかげで前世では恋人どころか結婚もできていなかったが、こちらでは少し頑張ってみようと思っている。
 
 「町に着く前にエニシに頼みがあるんだが」

 突然アレンがそう切り出し、目の前に差し出されたはシルバーのネックレス?らしきものだった。

 「唯一残ってた親の形見なんだ。捨てられたか助けるために残していったかはもう分からないが、それでもこれを置いていった意味があるはずなんだ。今までは着ける覚悟ができてなかったけど、今はエニシにつけてほしいって思ってる。…ダメか?」

 チラチラとこちらを見てくるアレンに溜め息がでた。
 なにか嫌な予感がしないでもないが、着けてやるくらいでなにもないだろうと思い直し後ろを向いたアレンの首に着けてやった。
 前を向いたアレンがニヤリと笑っているのも知らずに。





 それから数時間程歩けば無事に町に到着できた。
 あれほど迷って迷って歩き回ったのが嘘かのように。
 獣人は嫌われていると言っていたので、アレンとはここまでと思っていたのだがーー

 「後ろの獣人はあんたのか?問題を起こすようなら速攻叩き出すからそのつもりでな」

 「ーーえ?」
 
 日本のものと比べあまりに簡単な審査にする意味があるのかと考えていたため反応が遅れた。
 どういうことかと門の前で入国審査していた衛兵に聞こうとしたが、順番待ちの波に押され門を通過してしまう。
 
 「……どういうことですか?」

 後ろを振り返ればニヤニヤと笑うアレンがいた。

 「の意味やっぱり知らなかったんだな」

 「?」

 アレンがと言い指差したのは、先程縁が付けてあげたシルバーのネックレスだった。
 あの時感じた嫌な予感は正しかったらしい。

 「エニシは知らなかったみたいだけどコレは従属の首輪なんだよ」

 「ジュウゾクの、首輪?」

 どうやら獣人ないし奴隷の人間、罪人などに付けるものらしい。
 付けられると首輪の主人には逆らうことができなくなり、逃げることも自分で外すこともできず、逆らおうものなら首輪が絞まるというなんとも物騒なものだった。

 「なんてもの付けさせたんですか!そんなものさっさと外して下さい。私はそんなこと望んでない」

 「いやだ」

 誰かの命を握っているかもしれないと分かり、恐ろしさに慌てて外せと訴えるがアレンはただ笑うだけで外そうとはしない。

 「なにがイヤですか。小さい子みたいに我儘なんか言ってないで早く外して下さい!外し方は!?」

 「教えない」

 「~~~っ」

 ここに来るまでアレンを散々鬱陶しい、離れてほしいと思っていたが決して嫌いなわけではなかった。
 蛇との橋渡しもしてくれ、町まで案内もしてくれた。
 こちらに来てからずっと一人で森を彷徨っていた寂しさもあり、鬱陶しいが一緒にいてくれるアレンの存在は正直有り難かった。
 鬱陶しいくらい縁への好意を示してくれたアレンに好感はあれど嫌悪感はなく嫌いでもない。
 そんなアレンを奴隷扱いするのは嫌だった。

 「お願いですから外して下さい。私はあなたを奴隷にしたくはない」

 「だがコレがあれば俺はずっとエニシのものだ」

 「あなたは……バカですか」

 そんなもので愛情を感じるなんて間違ってる。
 だが嬉しそうに笑うアレンに縁はそれ以上何も言えなかった。

 「…では約束して下さい。自由になりたいと思ったら必ず言うこと。私のことより自分の幸せを優先すると」

 今はいい。今は縁が好きだと言っているが、それがいつまでも続くとは限らない。
 色んな獣人や人に出会う中で、本当にアレンが大切だと思う人がきっと見つかるだろう。
 そんな時は必ず言うようにと言えば、大丈夫だと笑って約束してくれた。

 「それにこんな所で首輪なんか外したら捕まるか売られるか、最悪殺されちまうぞ。逆にコレのおかげでエニシの側にいられるんだからいいんだよ」

 だから気にするなと言われ、頰を撫でられれば縁ももう反対することは諦めたのだった。
 後で聞いたことだが、なぜ首輪を外せという命令に逆らっても大丈夫だったのか聞けば、そもそも自分で外せないようにというもののため逆に外せという命令ではなんともならないらしい。


 


しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...