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懐かれました
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アレンとの言い合いの末、とりあえず町まで案内を頼むことにした。
呼び名に関しては名前で呼ばないなら抱っこして連れて行くと言われ仕方なく了承し、それでは縁が名前を教えないのもおかしいだろうとこれまた仕方なく名前を呼ぶことを許した。
前世では押しに弱いとよく言われてはいたが、どちらかというと面倒くさいことはもうどうでもいいと流してしまう性格なのである。
「エニシ、エニシ。大好きだエニシ」
「そうですか。楽しそうで何よりです」
勝手に一人で楽しんでなさい。
あれからずっと嬉しそうに、無意味に縁の名前を呼び続け、事あるごとに「好きだ」「愛してる」と愛を囁き続けてくる。
ウザい。正直言って鬱陶しい。
これはあれだ。雛の刷り込みのようなものなのだろう。
アレンが相手を探しているその時にタイミングよく縁が現れただけだ。
そう、縁にとっては運悪く条件が揃ってしまっていただけ、ただそれだけだ。
好かれることが嫌とは言わないし、恋愛対象という意味では縁も同性が対象ではあるが、縁だって好みはある。
おかげで前世では恋人どころか結婚もできていなかったが、こちらでは少し頑張ってみようと思っている。
「町に着く前にエニシに頼みがあるんだが」
突然アレンがそう切り出し、目の前に差し出されたソレはシルバーのネックレス?らしきものだった。
「唯一残ってた親の形見なんだ。捨てられたか助けるために残していったかはもう分からないが、それでもこれを置いていった意味があるはずなんだ。今までは着ける覚悟ができてなかったけど、今はエニシにつけてほしいって思ってる。…ダメか?」
チラチラとこちらを見てくるアレンに溜め息がでた。
なにか嫌な予感がしないでもないが、着けてやるくらいでなにもないだろうと思い直し後ろを向いたアレンの首に着けてやった。
前を向いたアレンがニヤリと笑っているのも知らずに。
それから数時間程歩けば無事に町に到着できた。
あれほど迷って迷って歩き回ったのが嘘かのように。
獣人は嫌われていると言っていたので、アレンとはここまでと思っていたのだがーー
「後ろの獣人はあんたのか?問題を起こすようなら速攻叩き出すからそのつもりでな」
「ーーえ?」
日本のものと比べあまりに簡単な審査にする意味があるのかと考えていたため反応が遅れた。
どういうことかと門の前で入国審査していた衛兵に聞こうとしたが、順番待ちの波に押され門を通過してしまう。
「……どういうことですか?」
後ろを振り返ればニヤニヤと笑うアレンがいた。
「コレの意味やっぱり知らなかったんだな」
「?」
アレンがコレと言い指差したのは、先程縁が付けてあげたシルバーのネックレスだった。
あの時感じた嫌な予感は正しかったらしい。
「エニシは知らなかったみたいだけどコレは従属の首輪なんだよ」
「ジュウゾクの、首輪?」
どうやら獣人ないし奴隷の人間、罪人などに付けるものらしい。
付けられると首輪の主人には逆らうことができなくなり、逃げることも自分で外すこともできず、逆らおうものなら首輪が絞まるというなんとも物騒なものだった。
「なんてもの付けさせたんですか!そんなものさっさと外して下さい。私はそんなこと望んでない」
「いやだ」
誰かの命を握っているかもしれないと分かり、恐ろしさに慌てて外せと訴えるがアレンはただ笑うだけで外そうとはしない。
「なにがイヤですか。小さい子みたいに我儘なんか言ってないで早く外して下さい!外し方は!?」
「教えない」
「~~~っ」
ここに来るまでアレンを散々鬱陶しい、離れてほしいと思っていたが決して嫌いなわけではなかった。
蛇との橋渡しもしてくれ、町まで案内もしてくれた。
こちらに来てからずっと一人で森を彷徨っていた寂しさもあり、鬱陶しいが一緒にいてくれるアレンの存在は正直有り難かった。
鬱陶しいくらい縁への好意を示してくれたアレンに好感はあれど嫌悪感はなく嫌いでもない。
そんなアレンを奴隷扱いするのは嫌だった。
「お願いですから外して下さい。私はあなたを奴隷にしたくはない」
「だがコレがあれば俺はずっとエニシのものだ」
「あなたは……バカですか」
そんなもので愛情を感じるなんて間違ってる。
だが嬉しそうに笑うアレンに縁はそれ以上何も言えなかった。
「…では約束して下さい。自由になりたいと思ったら必ず言うこと。私のことより自分の幸せを優先すると」
今はいい。今は縁が好きだと言っているが、それがいつまでも続くとは限らない。
色んな獣人や人に出会う中で、本当にアレンが大切だと思う人がきっと見つかるだろう。
そんな時は必ず言うようにと言えば、大丈夫だと笑って約束してくれた。
「それにこんな所で首輪なんか外したら捕まるか売られるか、最悪殺されちまうぞ。逆にコレのおかげでエニシの側にいられるんだからいいんだよ」
だから気にするなと言われ、頰を撫でられれば縁ももう反対することは諦めたのだった。
後で聞いたことだが、なぜ首輪を外せという命令に逆らっても大丈夫だったのか聞けば、そもそも自分で外せないようにというもののため逆に外せという命令ではなんともならないらしい。
呼び名に関しては名前で呼ばないなら抱っこして連れて行くと言われ仕方なく了承し、それでは縁が名前を教えないのもおかしいだろうとこれまた仕方なく名前を呼ぶことを許した。
前世では押しに弱いとよく言われてはいたが、どちらかというと面倒くさいことはもうどうでもいいと流してしまう性格なのである。
「エニシ、エニシ。大好きだエニシ」
「そうですか。楽しそうで何よりです」
勝手に一人で楽しんでなさい。
あれからずっと嬉しそうに、無意味に縁の名前を呼び続け、事あるごとに「好きだ」「愛してる」と愛を囁き続けてくる。
ウザい。正直言って鬱陶しい。
これはあれだ。雛の刷り込みのようなものなのだろう。
アレンが相手を探しているその時にタイミングよく縁が現れただけだ。
そう、縁にとっては運悪く条件が揃ってしまっていただけ、ただそれだけだ。
好かれることが嫌とは言わないし、恋愛対象という意味では縁も同性が対象ではあるが、縁だって好みはある。
おかげで前世では恋人どころか結婚もできていなかったが、こちらでは少し頑張ってみようと思っている。
「町に着く前にエニシに頼みがあるんだが」
突然アレンがそう切り出し、目の前に差し出されたソレはシルバーのネックレス?らしきものだった。
「唯一残ってた親の形見なんだ。捨てられたか助けるために残していったかはもう分からないが、それでもこれを置いていった意味があるはずなんだ。今までは着ける覚悟ができてなかったけど、今はエニシにつけてほしいって思ってる。…ダメか?」
チラチラとこちらを見てくるアレンに溜め息がでた。
なにか嫌な予感がしないでもないが、着けてやるくらいでなにもないだろうと思い直し後ろを向いたアレンの首に着けてやった。
前を向いたアレンがニヤリと笑っているのも知らずに。
それから数時間程歩けば無事に町に到着できた。
あれほど迷って迷って歩き回ったのが嘘かのように。
獣人は嫌われていると言っていたので、アレンとはここまでと思っていたのだがーー
「後ろの獣人はあんたのか?問題を起こすようなら速攻叩き出すからそのつもりでな」
「ーーえ?」
日本のものと比べあまりに簡単な審査にする意味があるのかと考えていたため反応が遅れた。
どういうことかと門の前で入国審査していた衛兵に聞こうとしたが、順番待ちの波に押され門を通過してしまう。
「……どういうことですか?」
後ろを振り返ればニヤニヤと笑うアレンがいた。
「コレの意味やっぱり知らなかったんだな」
「?」
アレンがコレと言い指差したのは、先程縁が付けてあげたシルバーのネックレスだった。
あの時感じた嫌な予感は正しかったらしい。
「エニシは知らなかったみたいだけどコレは従属の首輪なんだよ」
「ジュウゾクの、首輪?」
どうやら獣人ないし奴隷の人間、罪人などに付けるものらしい。
付けられると首輪の主人には逆らうことができなくなり、逃げることも自分で外すこともできず、逆らおうものなら首輪が絞まるというなんとも物騒なものだった。
「なんてもの付けさせたんですか!そんなものさっさと外して下さい。私はそんなこと望んでない」
「いやだ」
誰かの命を握っているかもしれないと分かり、恐ろしさに慌てて外せと訴えるがアレンはただ笑うだけで外そうとはしない。
「なにがイヤですか。小さい子みたいに我儘なんか言ってないで早く外して下さい!外し方は!?」
「教えない」
「~~~っ」
ここに来るまでアレンを散々鬱陶しい、離れてほしいと思っていたが決して嫌いなわけではなかった。
蛇との橋渡しもしてくれ、町まで案内もしてくれた。
こちらに来てからずっと一人で森を彷徨っていた寂しさもあり、鬱陶しいが一緒にいてくれるアレンの存在は正直有り難かった。
鬱陶しいくらい縁への好意を示してくれたアレンに好感はあれど嫌悪感はなく嫌いでもない。
そんなアレンを奴隷扱いするのは嫌だった。
「お願いですから外して下さい。私はあなたを奴隷にしたくはない」
「だがコレがあれば俺はずっとエニシのものだ」
「あなたは……バカですか」
そんなもので愛情を感じるなんて間違ってる。
だが嬉しそうに笑うアレンに縁はそれ以上何も言えなかった。
「…では約束して下さい。自由になりたいと思ったら必ず言うこと。私のことより自分の幸せを優先すると」
今はいい。今は縁が好きだと言っているが、それがいつまでも続くとは限らない。
色んな獣人や人に出会う中で、本当にアレンが大切だと思う人がきっと見つかるだろう。
そんな時は必ず言うようにと言えば、大丈夫だと笑って約束してくれた。
「それにこんな所で首輪なんか外したら捕まるか売られるか、最悪殺されちまうぞ。逆にコレのおかげでエニシの側にいられるんだからいいんだよ」
だから気にするなと言われ、頰を撫でられれば縁ももう反対することは諦めたのだった。
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