二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
10 / 475

絶対に離れない

しおりを挟む
 縁に言ったことは半分嘘だった。
 付けてもらった従属の首輪は親の形見であるわけないし、捨てられたか置いてかれたか覚えてないと言ったが本当は覚えている。
 親は人間に捕まりそうだったのを自分が助かりたいがためにアレンを奴隷商人に売り飛ばしたのだ。
 子どもだからと油断していたのだろう。
 すぐに首輪を付けられることはなく、隙をついて商人の元から逃げ出した。
 追っ手から逃れるため森の中に入り、姿を隠しながらも体力が続く限り走り続けた。
 しかしまだ5歳の子どもが森の中で一人で暮らすには難しく、すぐに生き倒れてしまったところをあの大蛇に拾われたのだ。
 最初は餌にでもされるかと思ったが、大蛇は倒れて動かないアレンを甲斐甲斐しく世話してくれた。
 何とか体調もよくなり、身振り手振りで礼を言えば子どもを褒めるかのようにその長い舌で舐められた。
 それからは大蛇を本当の親のように慕い、少しでも役に立とうと近くで木の実や薬草を取っている時だった。
 食べ物を探しに来たのだろう、種族が違えど同じ耳と尻尾を持つ獣人の仲間を見つけた。
 嬉しさに近寄ろうとすれば相手も気付いたようで、こちらを見る瞳が驚きに見開かれる。

 「あの…」

 「近寄るなっ!!」

 「っ!?」

 鋭い叫びと共になにかが投げつけられ、額に痛みが走った。
 驚き額に触れてみれば少しだが手に血がついていた。

 「……なんで」

 訳がわからず目の前の男の獣人を見れば、恐怖に引きつった表情でこちらを見ている。
 よく考えれば分かることだったが、その時アレンの後ろには一緒に採取に来ていた大蛇がおり、男は大蛇に怯えていたのだ。
 牽制するように投げられた石はしかし大蛇には届かず、運悪くその前にいたアレンの額に石が当たった。
 幼かったアレンは仲間であるはずの獣人に気付けられたショックと恐怖で後ずさると逃げるようにその場を走り去ったのだった。
 それからは人間だけでなく、獣人さえ敵だと考え家族である大蛇たちを守れるよう必死に強くなる努力をした。
 そして数年、それなりに強くなったと感じていた時にアレンの親でもある大蛇の卵が盗まれるという事件がおきた。
 もう少しで兄弟の誕生だと喜んでいたアレンと、親である大蛇は必死に森を探し回った。
 だが森は広い。不安ではあったが二手に分かれ探しているとしばらくして強い血の匂いがした。
 慌てて駆けつければ血塗れで横たわる大蛇と、目の前には探していたはずの卵があった。
 大丈夫かと怪我の様子を診れば、その太い首の後ろには深々と槍が刺さっている。
 出血量からいって助からないのはすぐに分かった。
 
 「ごめん。ごめんなさい。俺が、俺がもっと早く駆けつけてればーー」

 「シャァーシャァー」

  痛むだろう身体を必死に動かすと、お前のせいじゃないとばかりに泣き出しそうなアレンの頰を舐めてくれる。
 しばらくそうして大人しく舐められていれば、ふいに大蛇が頭を上げシャァーシャァーと何処かに向かって鳴き始めた。

 「なに?」

 どうしたのかと問うが大蛇は鳴き続ける。まるで誰かを呼ぶかのように。
 そうして現れたのがエニシだった。 
 人間が何の用だと警戒したが、エニシは大蛇を怖がる様子もなく、逆に鳴き続ける大蛇を心配するように近付いてきた。

 「どうしました?」

 「卵がどうしました?どこか割れていましたか?」

 キズでもあったのかと綺麗に洗うエニシの姿に、こんな綺麗な人間もいるのかと驚いた。
 それはその綺麗な整った容姿だけでなく、大蛇に怖がることなく見上げるその瞳に、本気で心配してくれているのだろうその表情に。
 エニシのその姿全てが輝いて見えた。
 大蛇の大きい胴体でエニシはアレンに気づいてなかったようだが。

 「お前にその子を託したいそうだ」

 気付けばそう声をかけていた。
 いきなり声をかけたせいか驚いたエニシが倒れそうになるのを腰を掴んでおさえた。
 あまりの細さに確かめるように撫でてしまったが、エニシは気付いたようで離れようとするのを捕まえ離さない。
 どういことかと説明を求めるエニシに大蛇はもう助からないことを伝えれば、驚きなんとかしようと腕の中で暴れ出したため落ち着けと抱き込む。

 「可哀想か?何も出来ず辛いか?ならコイツの最期の願いをきいてやってくれ」

 卵を差し出したということは、この先の子どものことをエニシに頼んでいるということは分かっていた。
 アレンにとっては兄弟になるのだ。
 自分が大蛇の代わりに育てようと思っていたが、エニシと一緒に育てられるならそれ以上はないだろう。
 卵を受け取り、お疲れ様でしたと優しく大蛇の頭を撫でるエニシはまるで女神のように美しく目を離すことができない。
 人間も獣人も信用できないとずっと思っていた。
 でもエニシなら、エニシならば大丈夫だと思えた。
 相手は同じ男だとか、自分は忌み嫌われる獣人だとか、そんなことどうでもいいと思えるくらいエニシが愛おしく思えて仕方がなかった。
 だから誓ったのだ。
 風に舞っていく亡骸に、エニシと必ず幸せになってみせるからと。
 残された子どもをエニシと一緒に大切に育ててみせると。
 これまで愛情深く育ててくれた恩ある大蛇に、アレンはエニシとずっと一緒にいることを誓ったのだった。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...