二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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増えました

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 建前上アレンは縁の奴隷ということにし、こちらに来てから初めての町を2人で観光する。
 いくつもの店々が建ち並び、我れ先にといらっしゃいとかけられる声に前世の市場みたいだなと思った。
 屋台もいくつも点在しておりアレンと買い食いしては色々と店を見てまわる。
 お金はどうしたかというと、神さまたちがくれた色々と入れておいたという鞄(縁は気付いていないがマジックバッグ)に金額を言って手を突っ込めば出てくるということに気付いてからは多用してしている。
 こちらの世界では紙幣はないらしく、金貨.銀貨.銅貨と馴染みのものから大きいもので白金貨というものもあるらしい。
 
 「そこな綺麗お方、奴隷はいかがですか?」

 ある店の前を通りかかった時にふとそう声をかけられた。

 「って、ちょっ、ちょっと!待って、待って下さい!」

 だがまさか自分に言われているとは思わず、気に留めず通り過ぎようとして慌てて男が追ってきた。
 
 「なにか?」

 いきなり後ろから腕を掴まれたと思えば、すかさずアレンが男の手を縁から引き剥がしてくれた。

 「随分躾のなってない犬ですね。どうでしょう?当店で新しい奴隷でも見繕ってみては」

 割り込んできたアレンに侮蔑の表情を浮かべながら、新しく買い替えてはどうだと言ってくる。
 
 「結構で……いえ、やっぱり見せてもらってもいいですか?」

 「!?」

 「どうぞっ!どうぞこちらに!」

 嬉々として店内に案内する店主らしき男とは裏腹にアレンの表情は青褪めている。
 本当にすげ替えられると思っているのだろうか。
 もちろん縁にそんな意思はなく、これから卵を育てるにあたり何も知らない自分を手伝ってくれる人が欲しいだけだったのだが。 

 「こちらは如何でしょう?まだ16と若く容姿もそれなりで家事も得意ですのでーー」

 「他には?」

 店主が言うには容姿が整った若い獣人がオススメらしいが、如何せん縁の中身は年寄りのジジイであるわけで年頃の男の子を侍らせる趣味はない。
 それに加え、先程から「それなりの容姿」と言ってはいるが自分のことを棚に上げてよく言えたものだと思う。
 よく肥えた脂肪の固まりは腹にこれでもかと巻きつけられ、動く度にぶるんぶるんとよく揺れる。典型的なメタボ。
 脂ぎった顔は吹き出物ばかりでお世辞にも綺麗とは言えず、縁を見てニヤニヤと笑うそれは気持ち悪くて仕方がない。

 「………」

 店に入ってからと言うもの一切喋らず黙り込むアレンは、しかし何も言わないくせに縁の服の裾をずっと握っていて動きづらかったがそのままにしておいた。
 首輪のことで縁を騙していたことへの意趣返しである。

 「出来れば身の回りの世話とある程度の自衛ができる方がいいのですが」

 これからどうするかはまだ決めていないが、アレンは大丈夫としても卵を抱えた縁と自衛もできない世話がかりではアレンの足手まといにしかならない。
 卵が孵ったとしても蛇など育てたことない縁は助言をしてもらえる相手を探していた。
 そんな有能な人材はいないと思うが、最悪どちからの能力が特化した者を2人雇えばいい。
 先程から店主が薦める奴隷たちは縁の希望とは合わないため、自由に見させてほしいと頼めば渋々ながら了承してくれた。
 これ以上は下手に薦めて帰られても困ると思ったのだろう。
 他の客の接客に向かう店主を見送り店の奥に進む。

 「こうして人が店で売られているというのはなんとも奇妙というか怖いですね」

 部屋中には檻がいくつも設置されており、中には獣人や人間などの子どもから年寄りといった年齢の者たちが閉じ込められている。
 はっきり言って見ていて気持ちのいいものではない。
 だがこちらの世界では普通のことで、見ていて辛いからといって皆が皆を縁が救ってやることはできない。

 「こうも怯えられていては買うことも難しーーん?」

 なにやら視線を感じ右奥のさらに奥にある檻の方を見れば、鉄格子越しにこちらを驚いたように見ている男の姿が目に入った。

 「猫?いや、微妙に違う?豹とかチーターですかね」

 細身だが引き締まった無駄のない筋肉に、これまた整った綺麗な顔と透き通った薄緑色の瞳。
 汚れてはいるが肌は白く、短く切られた髪と揃いの黒い耳はピクピクと頭の上で動いていて可愛い。
 決して女性に見えることはないがどことなく色気を感じもする。

 「あなたのお名前は?」

 「セイン」

 怯えられないよう静かに語りかけるが意外にもしっかりと返事が返ってきた。

 「ではセイン。あなたの特技は?」

 「元は貴族家で従事をしていたのである程度の身の回りの世話と簡単な護衛ぐらいならできます」

 命を狙われることもある貴族を守るためある程度は戦えるようである。
 これはいい。
 物扱いするわけではないが、セインは縁の条件に当てはまっており容姿も縁の好みである。
  目の保養だ。
 うんうんと頷く縁にさらに身の危険を感じたのか、後ろからアレンに腕を引かれた。

 「そんな顔しなくても、あなたが望まない限り手を離すことも売ることもしませんよ」

 「……本当か?」

 不安で仕方ないのだろう。
 アレン自身は縁に惜しみなく愛を伝えてはくれているが縁はそれをしたことがない。
 アレンが縁に向ける愛情と縁がアレンの向けるものは今はまだ一緒とは言えないのだ。
 だが大切には思っている。
 幸せになってほしいと願うぐらいにはアレンを大切に思っているのだ。

 「約束、したでしょう?あなたが自由を望む時は言ってくれと。つまりその時が来るまで私たちはずっと、一緒だといいうことです」

 「……あぁ、約束だ」

 ギュッと抱きついてくるアレンの背中に手を回すと優しく撫で下ろしてやった。
 なんとも手がかかる子だなと思っているとーー

 「その人に触るなっ!」

 ガシャガシャと激しく格子が揺れる音とセインの叫び声が聞こえた。
 落ち着いた雰囲気だと思っていたセインは今はこちらを鬼の形相で睨みつけている。
 正しくは縁を抱きしめるアレンをだが。

 「どうしました?ーーわっ!?」

  なにかあったかと檻に近づけば、すごい勢いで格子越しにセインに抱き寄せられる。
  渡さないと言わんばかりにギュウギュウと抱きつかれれば苦しさに呻くしかない。

 「なっ、何事ですか!今すごい音がーーっ!?お前っ、なにしてる!?」

 駆けつけた店主に速攻引き離された。
 
 「キサマッ!お客様に向かってなにをしてくれたんだ!」

 「ゲホッ、ゲホッ…まっ…まって、まってください。彼を、傷付けない、でっ」
 
 鞭を振るおうとする手を慌てて止めると、心配そうに見るアレンに大丈夫だと伝え再び檻に近寄る。

 「大丈夫、大丈夫です。どこにも怪我なんてしてません。ちょっとびっくりしただけです」

 自分がしでかしたことに気付いたのか顔面蒼白で震えて蹲るセインを撫でてやった。
 
 「私も男なのでそう簡単には壊れませんよ。でもになるんですからこれから少しずつ慣れていきましょう」

 「…家族?」

 「お客様っ!?」

 商品の失態に謝ろうとした店主を遮り私は宣言したのだった。

 「この子買います」


 


 
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