二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
17 / 475

話を戻しましょう

しおりを挟む
 この2人はいつまで言い争っているつもりだろう?
 仲良くしろとは言わないが、せめて静かに喧嘩してほしい。
 両隣りに座る2人に挟まれながら大声で喧嘩されてはうるさくて仕方がなかった。

 「そうだ。アズにもう1人…いやもう1匹?家族を紹介しましょうね」

 うるさい2人は放っておきアズを連れて寝室に向かう。
 ふわふわのベッドの上には宿についてすぐに置いておいた卵があった。
 割れないようにと置いておいたが、とくに変化はないようでそっと抱き上げると膝をつきアズに見せてやる。

 「アレンの兄弟で、こちらに来たばかりの時に親御さんに頼まれたんです。獣人ではなく蛇そのものですが、お兄ちゃんとしてアズもこの子を一緒に可愛がってあげてくれますか?」

 「アズ、おにいちゃん?」

 「そうです」

 「うん。アズ、おにいちゃんなる!」

 元気よく答えると大切そうに卵を撫でる。
 家族に、母親に捨てられるなんてどれだけの辛さだろう。
 成人しているならまだしもこの歳で、母親に甘えたい盛りの幼さでどれだけ悲しんだだろう。
 12年という短い時間だったとはいえ、縁は両親の愛情をきちんともらった。
 だが、アズはもっと短い。
 だが、これからは自分たちがいる。
 種族も違えば、寿命もちがう。
 どれだけ時間があるか分からないし、たぶん縁が一番短い。
 それでも精一杯愛してあげよう。

 「こんな優しいおにいちゃんがいるならこの子も寂しくないですね」

 「パパもいるからな」

 「パパは俺だ。お前はこの卵の兄弟だろうがバカ」

 まだ続いてたのか。
 こんなに騒がしければアズも寂しいと感じる暇もないだろう。
 
 「で……なんでしたっけ?えーと…そう、番がなんだかこんだか」

 思い出したようで思い出しきれてない。
 アズに卵を抱かせるとそのアズを抱き上げソファに戻る。

 「番になるかならないかでしたっけ?断ったらどうなるんですか?」

 獣人が相手を大事にするのは分かったが、縁からすればその相手が縁である必要があるのか?と思ってしまう。
 セインには悪いが。

 「……どうにもならない。普通の番であればどうにもならないが、運命の番に限ってはそうじゃなく最悪狂って死ぬ」

 それはもはや脅迫ではないだろうか。
 断ったらセインは死んでしまう?
 怖い。怖すぎる。
 こちらに来てからなぜ次々と他人の命を掴んでばかりいなければいけないのだろうか?
 なんか仕組んだりしてませんよね?
 疑心暗鬼になってしまい、こちらに率先して送り込んだ2人を疑ってしまう。

 「それって拒否権がないってことですよね?気に入らなくても受け入れなければいけないってことですか?」

 「受け入れてもらえば一番良いが、もちろん相手にも拒否することはできる。相手のことなんて無視すればいい。獣人とは違って人間には相手を求める本能が薄いんだ。どこかしら惹かれることもあるかもしれないがそれだけで決めるには人間には難しい」

 獣人であるがゆえに嗅覚が鋭く匂いで番が分かり、獣人であるがゆえに獣の本能で唯一人を求める。

 「………」
 
 重くないですか?
 この世界の方みんな重くないですか?
 こちらでは普通なんですかね。

 「番ではなく今このままでいることはできないんですか?」

 決してセインを奴隷と思ったことはないが、1人の家族として一緒に暮らしていくのではダメなのだろうか。
 
 「……不可能、ではないかもしれないが、俺には無理だ。耐えられない」

 「耐えられない?何がですか?」

 「発情期」

 「………アズ、今日は色々あって疲れたでしょう?お風呂に入ってもう休みましょうか」

 危ない。危なかった。
 まだ幼いアズに聞かせる話しではない。
 
 「おふろ?」

 お風呂が分からないらしく案内してやるが、見たことないものばかりで戸惑っていた。
 奴隷は水に浸した布で体を拭くぐらいしかしないようだ。
 どちらにせよ幼いアズを1人で入れられないと思っていたので、一緒に入ると頭を洗ってやり背を流してやる。
 洗い終えると今度はアズが縁を洗うと言い出したので喜んで頼むのだった。
 
 「…次また覗きをするようなら部屋から出しますからね」

 「ごめんなさい」
 「ごめんなさい」

 成人男性2人が土下座する姿。
 一緒に入りたいと強請る男共にだが断固拒否し、諦めたかと思えば風呂の入り口で覗き。
 なんて情けないんだろう。そこまで見たかったのだろうか。
 2人にも入るように言うと縁はアズと卵を寝かしつける。
 ガチャガチャという音と怒鳴り声が遠くの方で聞こえるので喧嘩しながらでもちゃんと入ってるのだろう。
 ふわふわだと喜ぶアズと、隣に卵を置いてやれば守ってやるかのようにギュッと卵に抱きついた。

 「では弟をお願いしますね、おにいちゃん」

 「うん!」

 おやすみなさいと言って頭を撫でてやれば、そう時間もかからず眠りについた。
 やはり疲れていたのだろう。
 腹を満たし、お風呂でホカホカの体にアズは満足そうな寝顔だった。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...