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やっと会えた
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「2人とも私の番になってくれませんか?」
嬉しかった。いや、嬉しい。
断わられると思っていた。
縁は今まで出会った人間の中でも一番優しく、綺麗で、美しく、なにより愛しい俺の運命の番だ。
だが縁は人間で、かたや俺は獣人。
結果は目に見えていた。でも諦められなかった。
可能性がゼロだとしても、縁ならもしかしたらという気持ちを捨てきれなかったのだ。
獣人の半分は獣だ。
狙った獲物を逃すことなく追いかけ、ただ本能で求める。
人間なんて大嫌いだった。
何度死んでほしいと思ったか分からない。
首輪さえなければ今頃多くの人間の喉笛に噛みついて、死体の山を築きあげていることだろう。
あの日。
あの店で
あの瞬間。
この人だと思った。
肩まであるサラサラと揺れる綺麗な銀髪に、キョトンとこちらを見る美しい金色の瞳。
細過ぎることはないが、獣人であるアレンやセインと比べれば全然細く、日焼けのない綺麗な白い肌がさらに細さを強調しているかのようだ。
言いようのない強い感情に唯々惹かれ目を離すことができない。
「あなたのお名前は?」
優しく語りかけるような声はセインを気遣ってくれたのだろうか?
そんな甘いことを考えてしまう。
相手は人間。
自分たち獣人を物としか思ってない人間だと言い聞かせるが、頭の隅でもしかしたらという気持ちもある。
それからセインができることを伝えば満足そうに頷く姿に、期待する心は強くなる。
だがーーー
「そんな顔しなくてもあなたが望まない限り手を離すことも売ることもしませんよ」
そう言い、傍らにいた獣人を抱きしめる姿に腹わたが煮えくりかえりそうだった。
俺の、俺の番だ!
お前のじゃない、俺の番だ!
「その人に触るなっ!」
回る腕に、密着する身体に、俺のものに触れるなと気付けば叫んでいた。
セインの変わり様にどうしたんだと近寄ってきた縁を、誰にも渡すものかと抱き寄せる。
しかしそれも束の間、騒ぎを聞きつけやってきた店主に引き剥がされ、咳き込む縁の姿が目に入った。
なんてことをしてしまったんだと後悔する中、店主が振り上げる手を咳き込みながらも止めた縁。
大丈夫、これから家族として慣れていこうと言う姿は見たことはないが女神のようで泣きたくなった。
ずっと、奴隷として生きてきた。
幼い頃に奴隷商人に拾われ、その容姿とまだ頭の出来が良い方だったため転々と働き場所が変わりながらも、結局それも年をとるごとに変わっていき最後にはいらなくなったとまた商人に売られ、型落ちとして処分されるのを待つだけだった。
なんで自分がと何度思ったことだろう。
いったい自分が人間になにをした?
こんな家畜同然に扱われ、なんでこんなことも出来ないんだと蹴られ殴られ、それでも逆らうこともできずに耐える日々。
死んで楽になりたいと何度思ったことか。
死ぬことでしか自由になれないなら何のために生まれてきたのか。
生きる希望もなく、死を待つだけだった自分に縁が与えてくれたもの。
獣人である自分を1人の個と見てくれた。
ケガをさせそうになったのに大丈夫、家族になろうと言って撫でてくれた。
奴隷が一生食べることができなかっただろう豪華な料理を一緒に食べようと言ってくれた。
孤独に死んでいくしかなかった自分に番になってくれと言ってくれた。
今まで生きてきた中で今が一番幸せだと宣言できる。
アレンのせいで怒られて土下座で謝るのもどこか遊びの延長みたいに感じて楽しく、奴隷の時とは比べようもない。
ずっと、死ぬまでずっと1人だと思っていたのにたった1日で家族が3人もできた。
アレンについては認めたくないが、縁が言うなら仕方ない。
縁が人間なんてどうでもよく思え、縁が死ぬなら自分も死んでもいいと思える。
縁がいてくれればいい。
縁さえいてくれればいい。
俺の最愛の運命の番。
これからの残っている命、全てを使って縁を愛していこう。
どこか達観してるような縁だが、どこか抜けている。
放っておくととんでもないことを起こしそうだから、ちゃんと見張っておかなければと考えるセインだった。
「あ、発情期のこと話すの忘れた」
泣き疲れて寝てしまった縁を運びながら、まぁいいかと一緒に横になるセインとアレン。
明日でも、明後日でも時間はたっぷりあるんだと考え目を閉じるのだった。
嬉しかった。いや、嬉しい。
断わられると思っていた。
縁は今まで出会った人間の中でも一番優しく、綺麗で、美しく、なにより愛しい俺の運命の番だ。
だが縁は人間で、かたや俺は獣人。
結果は目に見えていた。でも諦められなかった。
可能性がゼロだとしても、縁ならもしかしたらという気持ちを捨てきれなかったのだ。
獣人の半分は獣だ。
狙った獲物を逃すことなく追いかけ、ただ本能で求める。
人間なんて大嫌いだった。
何度死んでほしいと思ったか分からない。
首輪さえなければ今頃多くの人間の喉笛に噛みついて、死体の山を築きあげていることだろう。
あの日。
あの店で
あの瞬間。
この人だと思った。
肩まであるサラサラと揺れる綺麗な銀髪に、キョトンとこちらを見る美しい金色の瞳。
細過ぎることはないが、獣人であるアレンやセインと比べれば全然細く、日焼けのない綺麗な白い肌がさらに細さを強調しているかのようだ。
言いようのない強い感情に唯々惹かれ目を離すことができない。
「あなたのお名前は?」
優しく語りかけるような声はセインを気遣ってくれたのだろうか?
そんな甘いことを考えてしまう。
相手は人間。
自分たち獣人を物としか思ってない人間だと言い聞かせるが、頭の隅でもしかしたらという気持ちもある。
それからセインができることを伝えば満足そうに頷く姿に、期待する心は強くなる。
だがーーー
「そんな顔しなくてもあなたが望まない限り手を離すことも売ることもしませんよ」
そう言い、傍らにいた獣人を抱きしめる姿に腹わたが煮えくりかえりそうだった。
俺の、俺の番だ!
お前のじゃない、俺の番だ!
「その人に触るなっ!」
回る腕に、密着する身体に、俺のものに触れるなと気付けば叫んでいた。
セインの変わり様にどうしたんだと近寄ってきた縁を、誰にも渡すものかと抱き寄せる。
しかしそれも束の間、騒ぎを聞きつけやってきた店主に引き剥がされ、咳き込む縁の姿が目に入った。
なんてことをしてしまったんだと後悔する中、店主が振り上げる手を咳き込みながらも止めた縁。
大丈夫、これから家族として慣れていこうと言う姿は見たことはないが女神のようで泣きたくなった。
ずっと、奴隷として生きてきた。
幼い頃に奴隷商人に拾われ、その容姿とまだ頭の出来が良い方だったため転々と働き場所が変わりながらも、結局それも年をとるごとに変わっていき最後にはいらなくなったとまた商人に売られ、型落ちとして処分されるのを待つだけだった。
なんで自分がと何度思ったことだろう。
いったい自分が人間になにをした?
こんな家畜同然に扱われ、なんでこんなことも出来ないんだと蹴られ殴られ、それでも逆らうこともできずに耐える日々。
死んで楽になりたいと何度思ったことか。
死ぬことでしか自由になれないなら何のために生まれてきたのか。
生きる希望もなく、死を待つだけだった自分に縁が与えてくれたもの。
獣人である自分を1人の個と見てくれた。
ケガをさせそうになったのに大丈夫、家族になろうと言って撫でてくれた。
奴隷が一生食べることができなかっただろう豪華な料理を一緒に食べようと言ってくれた。
孤独に死んでいくしかなかった自分に番になってくれと言ってくれた。
今まで生きてきた中で今が一番幸せだと宣言できる。
アレンのせいで怒られて土下座で謝るのもどこか遊びの延長みたいに感じて楽しく、奴隷の時とは比べようもない。
ずっと、死ぬまでずっと1人だと思っていたのにたった1日で家族が3人もできた。
アレンについては認めたくないが、縁が言うなら仕方ない。
縁が人間なんてどうでもよく思え、縁が死ぬなら自分も死んでもいいと思える。
縁がいてくれればいい。
縁さえいてくれればいい。
俺の最愛の運命の番。
これからの残っている命、全てを使って縁を愛していこう。
どこか達観してるような縁だが、どこか抜けている。
放っておくととんでもないことを起こしそうだから、ちゃんと見張っておかなければと考えるセインだった。
「あ、発情期のこと話すの忘れた」
泣き疲れて寝てしまった縁を運びながら、まぁいいかと一緒に横になるセインとアレン。
明日でも、明後日でも時間はたっぷりあるんだと考え目を閉じるのだった。
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