32 / 475
男の子の憧れです
しおりを挟む
そんなことを話しながら歩くこと数分。
大きな岩が積み重なった切り立った崖に到着。
行き止まりかと思ったが、いきなりジークに抱えあげられた。
「えっ!なっ、なんですか?」
アズを抱っこした縁を抱えるジークの腕は揺らぐことがなく流石熊の獣人だと思ったが、次の瞬間スッとした浮遊感と共に崖下に向かって落ちていく恐怖に言葉も出なかった。
「~~~っ!?」
ムリムリムリ!
恐怖に固まりながらも最悪アズだけでもと腕の中の存在を力の限り抱きしめる。
「もう大丈夫だぞ。……わりぃ、驚かせたか?」
腕の中で震える縁に、ジークも少々やり過ぎたようだと気まずげに見てくる。
「縁っ!」
「縁、大丈夫かっ!」
震えながらもなんとか降ろしてもらえば、慌ててかけよってきた2人に抱きしめられ安堵の溜息を溢す。
やはりこの2人の腕が一番安心する。
ジェットコースター並みの急降下は獣人の並外れた身体能力があってこそである。
普通の人間である縁に紐なしバンジーは恐怖でしかない。
「しょ、少々、膝が、笑ってますが、大丈夫です」
未だ力が入らない手足にアズをセインに任せ、縁はアレンに手を貸してもらう。
「スマン。俺たちにはいつものことだから忘れてた」
へっぴり腰の縁に手下の男たちも心配そうに見てくる。
申し訳ない。
驚いてはいるが、獣人のアレンたちも紐なしバンジーは問題なかったようで1人足を引っ張ってしまい少し落ち込む。
「まぁ、なんだ。随分驚かしまったようだし、中でゆっくり休んだらいい」
そう言って今降りてきたばかりの崖の一部の岩に手をかけると、ゴゴゴッという大きな音ともに岩だと思っていた扉が開いていく。
「もしかしてここ全部ジークたちの隠れ家なんですか?」
大きな切り立った崖だと思っていたものは、中をくり貫いて作ったジークたちの隠れ家だったらしい。
薦められるまま中に入れば、岩の壁はそのままに所々に灯された明かりは薄暗い岩中を明るく照らしてくれる。
「……すごい」
思いの外広い中は小さな村ぐらいはあるのではないだろうか。
ジークを出迎いに出てきた人々やはりというか頭に獣の耳をつけた人ばかりである。
「だろ。ここなら人間の目から身を守れる上に、あの崖と扉じゃまず入って来れない」
確かにあの急な崖を降りた上、何キロあるんだという岩でできた扉を開くのはかなり難しいだろう。
男の子の憧れ秘密の隠れ家に、すごいすごいとジークたちを褒め称えれば嬉しそうにニヤニヤとなんとも言えない顔をしていた。
一応個々に部屋もあるようで、他にも皆で入れるような大きな風呂や食堂、武器庫といった男の子なら一度は想像したような隠れ家だった。
見て回りたかったが、ここに来たばかりで敵対している人間が彷徨くのはよくないだろうと諦める。
「ほらこっちだ。腹減ってるだろ?お前はもっと肉を食え。食わねぇとデカくなれねぇぞ」
案内された食堂では、まるで子ども相手かのようにジークに世話される。
食ってデカくなれだの、お前は小さすぎるだの、もうムリだろうけと諦めるななど応援してるのか貶しているのかどちらなんだろう。
どうせならアズにしてやってほしいお節介もジークは何故か縁に構ってくる。
「私のことはいいですから。人の世話ばかりやいてないで自分の食事をして下さい」
縁にばかり食べさせて自分の食事に手をつけていないジークの口にご飯をつっこんでやる。
「……うまいな」
嬉しそう食べるジークに縁も美味しいですねと頷きながらアズにも食べさせるのだった。
隣でそんなジークを睨んでいるアレンたちにも気付かず。
「それで?聞きたいことがあるんだって?」
食事中ではあったがジークに頼みごとをしていたのだった。
「もしなんですが、この中に蛇の獣人の方がいるなら紹介してほしいんです」
これだけの獣人が集まっている場所に来れることはそうそうないだろう。
ならば今後のためにも少しでも情報を集めておきたい。
「それはかまわねぇが、なんで蛇なんだ?まさかまだ番を増やすつもりだとか言わねぇだろうな?」
言うわけないでしょう。
そしてアレンたちも何を焦ってるんですか。
少々呆れながらもアズを呼ぶとスノーを出してもらう。
「驚かせてすいません。訳あってこの子を育てることになったんです。ですが私もなにぶん子育ては初めてなので誰かに助言をもらえたらと」
ずっと鞄に入れていたせいか、出てきたスノーは甘えるように首に巻きついてくると頰に擦り寄ってくる。
「そいつは…大丈夫、なのか?」
アズと一緒にスノーの頭を撫でてやれば、その懐きようにジークも警戒を解いた。
待ってろと言い連れてきてくれたのは蛇の獣人。
しかも女性だった。
「はじめまして。驚かせてしまい申し訳ありません。突然ではありますが少しお話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「私でよければ」
警戒しているようではあったが、気が強いのか怯える様子もなく頷いてくれる。
それから縁は思いつく限りスノーを育てる上で注意しなければならないことを聞いていく。
獣人と本物の獣では違いあるだろうが聞いておいて損はないだろう。
意外にも丁寧教えてくれた女性は、最後にはスノーの頭も撫でてくれた。
基本的には他の獣人とは違いがないようだが、体温調節が苦手らしく、小まめに気にしてやってほしいとのことだった。
「もういいのか?」
「ありがとうございます。彼女には聞きたいことが聞けました」
「には?まだ聞きたいことがあるのか?」
「もし許してもらえるようなら」
今聞いていたことは大切だがスノーのためのことだ。
今から聞こうと思っていることは縁自身のこと。
聞けなくても問題はないが聞くことができるなら聞いておきたい。
たとえ恥ずかしくても。
「俺でいいのか?それとも他の連れてくるか?」
「もしいるようであればジークの番の方を」
「……」
苦い顔をするジークにそれがいないことを悟ったのだった。
大きな岩が積み重なった切り立った崖に到着。
行き止まりかと思ったが、いきなりジークに抱えあげられた。
「えっ!なっ、なんですか?」
アズを抱っこした縁を抱えるジークの腕は揺らぐことがなく流石熊の獣人だと思ったが、次の瞬間スッとした浮遊感と共に崖下に向かって落ちていく恐怖に言葉も出なかった。
「~~~っ!?」
ムリムリムリ!
恐怖に固まりながらも最悪アズだけでもと腕の中の存在を力の限り抱きしめる。
「もう大丈夫だぞ。……わりぃ、驚かせたか?」
腕の中で震える縁に、ジークも少々やり過ぎたようだと気まずげに見てくる。
「縁っ!」
「縁、大丈夫かっ!」
震えながらもなんとか降ろしてもらえば、慌ててかけよってきた2人に抱きしめられ安堵の溜息を溢す。
やはりこの2人の腕が一番安心する。
ジェットコースター並みの急降下は獣人の並外れた身体能力があってこそである。
普通の人間である縁に紐なしバンジーは恐怖でしかない。
「しょ、少々、膝が、笑ってますが、大丈夫です」
未だ力が入らない手足にアズをセインに任せ、縁はアレンに手を貸してもらう。
「スマン。俺たちにはいつものことだから忘れてた」
へっぴり腰の縁に手下の男たちも心配そうに見てくる。
申し訳ない。
驚いてはいるが、獣人のアレンたちも紐なしバンジーは問題なかったようで1人足を引っ張ってしまい少し落ち込む。
「まぁ、なんだ。随分驚かしまったようだし、中でゆっくり休んだらいい」
そう言って今降りてきたばかりの崖の一部の岩に手をかけると、ゴゴゴッという大きな音ともに岩だと思っていた扉が開いていく。
「もしかしてここ全部ジークたちの隠れ家なんですか?」
大きな切り立った崖だと思っていたものは、中をくり貫いて作ったジークたちの隠れ家だったらしい。
薦められるまま中に入れば、岩の壁はそのままに所々に灯された明かりは薄暗い岩中を明るく照らしてくれる。
「……すごい」
思いの外広い中は小さな村ぐらいはあるのではないだろうか。
ジークを出迎いに出てきた人々やはりというか頭に獣の耳をつけた人ばかりである。
「だろ。ここなら人間の目から身を守れる上に、あの崖と扉じゃまず入って来れない」
確かにあの急な崖を降りた上、何キロあるんだという岩でできた扉を開くのはかなり難しいだろう。
男の子の憧れ秘密の隠れ家に、すごいすごいとジークたちを褒め称えれば嬉しそうにニヤニヤとなんとも言えない顔をしていた。
一応個々に部屋もあるようで、他にも皆で入れるような大きな風呂や食堂、武器庫といった男の子なら一度は想像したような隠れ家だった。
見て回りたかったが、ここに来たばかりで敵対している人間が彷徨くのはよくないだろうと諦める。
「ほらこっちだ。腹減ってるだろ?お前はもっと肉を食え。食わねぇとデカくなれねぇぞ」
案内された食堂では、まるで子ども相手かのようにジークに世話される。
食ってデカくなれだの、お前は小さすぎるだの、もうムリだろうけと諦めるななど応援してるのか貶しているのかどちらなんだろう。
どうせならアズにしてやってほしいお節介もジークは何故か縁に構ってくる。
「私のことはいいですから。人の世話ばかりやいてないで自分の食事をして下さい」
縁にばかり食べさせて自分の食事に手をつけていないジークの口にご飯をつっこんでやる。
「……うまいな」
嬉しそう食べるジークに縁も美味しいですねと頷きながらアズにも食べさせるのだった。
隣でそんなジークを睨んでいるアレンたちにも気付かず。
「それで?聞きたいことがあるんだって?」
食事中ではあったがジークに頼みごとをしていたのだった。
「もしなんですが、この中に蛇の獣人の方がいるなら紹介してほしいんです」
これだけの獣人が集まっている場所に来れることはそうそうないだろう。
ならば今後のためにも少しでも情報を集めておきたい。
「それはかまわねぇが、なんで蛇なんだ?まさかまだ番を増やすつもりだとか言わねぇだろうな?」
言うわけないでしょう。
そしてアレンたちも何を焦ってるんですか。
少々呆れながらもアズを呼ぶとスノーを出してもらう。
「驚かせてすいません。訳あってこの子を育てることになったんです。ですが私もなにぶん子育ては初めてなので誰かに助言をもらえたらと」
ずっと鞄に入れていたせいか、出てきたスノーは甘えるように首に巻きついてくると頰に擦り寄ってくる。
「そいつは…大丈夫、なのか?」
アズと一緒にスノーの頭を撫でてやれば、その懐きようにジークも警戒を解いた。
待ってろと言い連れてきてくれたのは蛇の獣人。
しかも女性だった。
「はじめまして。驚かせてしまい申し訳ありません。突然ではありますが少しお話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「私でよければ」
警戒しているようではあったが、気が強いのか怯える様子もなく頷いてくれる。
それから縁は思いつく限りスノーを育てる上で注意しなければならないことを聞いていく。
獣人と本物の獣では違いあるだろうが聞いておいて損はないだろう。
意外にも丁寧教えてくれた女性は、最後にはスノーの頭も撫でてくれた。
基本的には他の獣人とは違いがないようだが、体温調節が苦手らしく、小まめに気にしてやってほしいとのことだった。
「もういいのか?」
「ありがとうございます。彼女には聞きたいことが聞けました」
「には?まだ聞きたいことがあるのか?」
「もし許してもらえるようなら」
今聞いていたことは大切だがスノーのためのことだ。
今から聞こうと思っていることは縁自身のこと。
聞けなくても問題はないが聞くことができるなら聞いておきたい。
たとえ恥ずかしくても。
「俺でいいのか?それとも他の連れてくるか?」
「もしいるようであればジークの番の方を」
「……」
苦い顔をするジークにそれがいないことを悟ったのだった。
99
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる