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だれ?
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「ママどこ?」
アズが周りに誰もいないことに気づいたのは、縁たちが魔物に出くわす直前だった。
遠目に目当ての薬草を見つけたアズはママに褒めてもらおうと走って採りに行くと周辺の薬草も探している内に縁たちからかなり離れてしまっていたのだ。
いくら探してもママの姿は見えず、声を上げても返事どころか何の音もせずアズの不安を煽る。
「ママ、ママっ!ママどーーわっ」
1人に耐えられず走り出せば足下の石に躓き転んでしまう。
「ゔう、いたい……いたいママ、ママ、ゔぇ~ん」
見れば膝からは血が出ており、子どものアズには我慢の限界だった。
大声で泣き出せばママ、ママと縁を呼び続けその場に座り込んでしまう。
「ヤダ、アズおいてかないで。アズ、ママがいい。ママ」
どうしていいか分からず泣き続けていれば、ふと何かが手に触れる感触がした。
「ママっ、マーーん?…スノーっ」
ペロペロと指を舐めてくるスノーに慌てて抱きしめる。
「スノー、ママいなくなっちゃった。どうしよう」
縋るようにスノーをギュッと抱きしめれば、スノーも嫌がることなくアズの頰に擦り寄ってくる。
「アズね、ママにはっぱあげようとおもってね。ママえらいねっていってくれるの。アズだからいっぱいさがしたのに」
ほらと手に持っていた薬草を見せればスノーも頷くように頭を振り、何を思ったかズルズルと先程まで自分が入っていた鞄を引き摺ってくる。
「?、アズはいんないよ?」
「キュァ、キュァー」
目の前まで運んできたスノーは鞄をペシペシと尻尾で叩くと、今度はアズが薬草を持っている右手を叩く。
「……うん、いれる。あとでママにあげるの」
スノーの意思が伝わったらしく、キョロキョロと鞄と右手を見た後大切そうに薬草をしまうのだった。
「スノーもはいって。アズとママさがそ」
「キュァー」
スノーのおかげで少し元気を取り戻したアズは薬草とスノーが入った鞄を肩に歩き出す。
「ママっ、ママー」
ママと呼びかけながらも周りを見てママの姿を探す。
子どものため歩みは遅いがそれでも一歩ずつ進んでいけば見知らぬ場所に出た。
どうやら誰かの家のようで怖かったが、ソロソロと近づいていけば家のすぐ前には畑があり、アズにも見知った野菜がいくつかあった。
「グゥ~~」
動き回ったせいか盛大にお腹が鳴り、お腹を押さえる。
「おなかへった」
だがお昼ご飯はママである縁の鞄に入っている。
天気がいいから外で食べようとお弁当を持ってきていたのだ。
「ママのごはんたべたい」
ママが食べさせてくれるものに不味いものはないと思っているアズはお昼ご飯をとても楽しみにしていたのだが、そのママと離れてしまったためどうしていいか分からなかった。
縁に買われてからというもの毎日三食きちんと食べれていたので、それに慣れてしまった今、食べられないのが辛い。
「ママっ、ママー」
「あらあら可愛いらしいお客様ね」
「!?」
突如背後からかけられた声にビクリと飛び跳ねる。
ビクビクしながら振り向けば知らないおばあさんがいた。
「……ママ」
「あら迷子かしら?」
「ママいないの」
それだけ伝えればソロソロと後ろへ下がる。
アズはおばあさんに獣耳がないこと気付いていたのだ。
未だに縁以外の人間が怖いアズは少しずつ離れていくが、おばあさんはそんなアズを止めることなく畑に入っていくと数個トマトをもぎアズに手渡した。
「お腹すいているんでしょ?こんなのでよかったら食べてちょうだい」
「………」
お腹は空いている。
空いてはいるが恐ろしい人間からもらったものを素直に食べていいか迷っているのだ。
食べて怒られるか、なぜ食べないと怒られるか分からず固まっていれば鞄の中がサワサワと動き出すのが分かった。
「スノー?」
どうしたのかと鞄に触れようとした瞬間ーー
「アズっ、アズどこですかっ」
「ーーっ!ママ、ママっ!」
慌てて声がした方に振り返れば何故かボロボロなママの姿が。
何があったのかいつも綺麗なはずの銀髪はボサボサになっており、服はどこを通ってきたんだと思うほど泥だらけである。
額に汗を浮かべ駆け寄ってくるママにアズも泣いて抱きつけばギュッと抱きしめられた。
「……よかった。本当によかった」
痛いぐらいに抱きしめられれば、その後ろからはパパであるアレンが抱きしめてくる。
「ママいなくて、アズさがしたけどママいなくて……」
先程までの恐怖を思い出し涙を溢せば優しく背を撫でてくれる。
大好きなママの手。
大好きなママの匂い。
「いっぱい探してくれたんですね。もっと早く見つけてあげられなくてごめんなさい。無事で本当によかった」
また置いていかれたのかと思った。
本当のママには置いてかれたけど、今のママがアズは大好きだ。
出来損ないと怒られることもなければ、いくら泣いてもうるさいと叩かれることもない。
毎日ご飯を食べさせてくれ、美味しいジュースも食べたこともない甘い美味しい食べ物も作ってくれる。
名前を呼べば笑ってくれ、大好きだと抱きしめてくれるママが誰よりも大好きなのだ。
「アズ、ママにはっぱあげようとおもって、でもママいなくて、さがしたけどいなくて、だからアズおいてかれたとおもって、アズまたひとりで……でもやなの。アズはママがいい。ママがいいの」
ママがいい。ママじゃないといやだと言えば、ママも泣きながら笑って「私もアズがいいです」と言ってくれた。
「私のために頑張って探してくれたんですね、ありがとうございます。でもお願いですから1人でどこでも行かないで下さい。アズがいないと分かって死にそうでした」
「ごめんなさいっ」
「私には葉っぱなんかよりアズの方が大切なんです。大好きなアズを私からとらないで」
「アズもママだいすきっ」
ごめんなさいごめんなさいと泣いて謝れば、背を撫で額にキスしてくれた。
「ママが見つかったみたいで良かったわ。エニシさんの子どもだったのね」
トマトをくれたおばあさんがそう言えば、ママも笑ってありがとうございますと返していたので、アズもまだ怖くはあったが礼を述べる。
「トマトありがとう」
「親子共々お世話になりました。見つけくれたのが貴方で本当に良かったです」
「いいえ、私は何もしてないわ。その子が自分で頑張ったからだわ。トマトも持って帰ってママと一緒に食べてね」
「うん」
ニコニコと笑うおばあさんにアズもようやく肩の力を抜くのであった。
アズが周りに誰もいないことに気づいたのは、縁たちが魔物に出くわす直前だった。
遠目に目当ての薬草を見つけたアズはママに褒めてもらおうと走って採りに行くと周辺の薬草も探している内に縁たちからかなり離れてしまっていたのだ。
いくら探してもママの姿は見えず、声を上げても返事どころか何の音もせずアズの不安を煽る。
「ママ、ママっ!ママどーーわっ」
1人に耐えられず走り出せば足下の石に躓き転んでしまう。
「ゔう、いたい……いたいママ、ママ、ゔぇ~ん」
見れば膝からは血が出ており、子どものアズには我慢の限界だった。
大声で泣き出せばママ、ママと縁を呼び続けその場に座り込んでしまう。
「ヤダ、アズおいてかないで。アズ、ママがいい。ママ」
どうしていいか分からず泣き続けていれば、ふと何かが手に触れる感触がした。
「ママっ、マーーん?…スノーっ」
ペロペロと指を舐めてくるスノーに慌てて抱きしめる。
「スノー、ママいなくなっちゃった。どうしよう」
縋るようにスノーをギュッと抱きしめれば、スノーも嫌がることなくアズの頰に擦り寄ってくる。
「アズね、ママにはっぱあげようとおもってね。ママえらいねっていってくれるの。アズだからいっぱいさがしたのに」
ほらと手に持っていた薬草を見せればスノーも頷くように頭を振り、何を思ったかズルズルと先程まで自分が入っていた鞄を引き摺ってくる。
「?、アズはいんないよ?」
「キュァ、キュァー」
目の前まで運んできたスノーは鞄をペシペシと尻尾で叩くと、今度はアズが薬草を持っている右手を叩く。
「……うん、いれる。あとでママにあげるの」
スノーの意思が伝わったらしく、キョロキョロと鞄と右手を見た後大切そうに薬草をしまうのだった。
「スノーもはいって。アズとママさがそ」
「キュァー」
スノーのおかげで少し元気を取り戻したアズは薬草とスノーが入った鞄を肩に歩き出す。
「ママっ、ママー」
ママと呼びかけながらも周りを見てママの姿を探す。
子どものため歩みは遅いがそれでも一歩ずつ進んでいけば見知らぬ場所に出た。
どうやら誰かの家のようで怖かったが、ソロソロと近づいていけば家のすぐ前には畑があり、アズにも見知った野菜がいくつかあった。
「グゥ~~」
動き回ったせいか盛大にお腹が鳴り、お腹を押さえる。
「おなかへった」
だがお昼ご飯はママである縁の鞄に入っている。
天気がいいから外で食べようとお弁当を持ってきていたのだ。
「ママのごはんたべたい」
ママが食べさせてくれるものに不味いものはないと思っているアズはお昼ご飯をとても楽しみにしていたのだが、そのママと離れてしまったためどうしていいか分からなかった。
縁に買われてからというもの毎日三食きちんと食べれていたので、それに慣れてしまった今、食べられないのが辛い。
「ママっ、ママー」
「あらあら可愛いらしいお客様ね」
「!?」
突如背後からかけられた声にビクリと飛び跳ねる。
ビクビクしながら振り向けば知らないおばあさんがいた。
「……ママ」
「あら迷子かしら?」
「ママいないの」
それだけ伝えればソロソロと後ろへ下がる。
アズはおばあさんに獣耳がないこと気付いていたのだ。
未だに縁以外の人間が怖いアズは少しずつ離れていくが、おばあさんはそんなアズを止めることなく畑に入っていくと数個トマトをもぎアズに手渡した。
「お腹すいているんでしょ?こんなのでよかったら食べてちょうだい」
「………」
お腹は空いている。
空いてはいるが恐ろしい人間からもらったものを素直に食べていいか迷っているのだ。
食べて怒られるか、なぜ食べないと怒られるか分からず固まっていれば鞄の中がサワサワと動き出すのが分かった。
「スノー?」
どうしたのかと鞄に触れようとした瞬間ーー
「アズっ、アズどこですかっ」
「ーーっ!ママ、ママっ!」
慌てて声がした方に振り返れば何故かボロボロなママの姿が。
何があったのかいつも綺麗なはずの銀髪はボサボサになっており、服はどこを通ってきたんだと思うほど泥だらけである。
額に汗を浮かべ駆け寄ってくるママにアズも泣いて抱きつけばギュッと抱きしめられた。
「……よかった。本当によかった」
痛いぐらいに抱きしめられれば、その後ろからはパパであるアレンが抱きしめてくる。
「ママいなくて、アズさがしたけどママいなくて……」
先程までの恐怖を思い出し涙を溢せば優しく背を撫でてくれる。
大好きなママの手。
大好きなママの匂い。
「いっぱい探してくれたんですね。もっと早く見つけてあげられなくてごめんなさい。無事で本当によかった」
また置いていかれたのかと思った。
本当のママには置いてかれたけど、今のママがアズは大好きだ。
出来損ないと怒られることもなければ、いくら泣いてもうるさいと叩かれることもない。
毎日ご飯を食べさせてくれ、美味しいジュースも食べたこともない甘い美味しい食べ物も作ってくれる。
名前を呼べば笑ってくれ、大好きだと抱きしめてくれるママが誰よりも大好きなのだ。
「アズ、ママにはっぱあげようとおもって、でもママいなくて、さがしたけどいなくて、だからアズおいてかれたとおもって、アズまたひとりで……でもやなの。アズはママがいい。ママがいいの」
ママがいい。ママじゃないといやだと言えば、ママも泣きながら笑って「私もアズがいいです」と言ってくれた。
「私のために頑張って探してくれたんですね、ありがとうございます。でもお願いですから1人でどこでも行かないで下さい。アズがいないと分かって死にそうでした」
「ごめんなさいっ」
「私には葉っぱなんかよりアズの方が大切なんです。大好きなアズを私からとらないで」
「アズもママだいすきっ」
ごめんなさいごめんなさいと泣いて謝れば、背を撫で額にキスしてくれた。
「ママが見つかったみたいで良かったわ。エニシさんの子どもだったのね」
トマトをくれたおばあさんがそう言えば、ママも笑ってありがとうございますと返していたので、アズもまだ怖くはあったが礼を述べる。
「トマトありがとう」
「親子共々お世話になりました。見つけくれたのが貴方で本当に良かったです」
「いいえ、私は何もしてないわ。その子が自分で頑張ったからだわ。トマトも持って帰ってママと一緒に食べてね」
「うん」
ニコニコと笑うおばあさんにアズもようやく肩の力を抜くのであった。
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