二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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頼み

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 拝啓皆様どうお過ごしでしょうか。
 日に日に暑くなる毎日に私も少々体力がなくなっておりますが、そんな弱っている中で盗賊(?)に誘拐されるという失態を犯してしまいました。
 誠に残念ではございますが誘拐されてしまったものはもう仕方ないと諦め、脱出する方法を考えている現在です。

 「せめてもの救いは攫われたのが私1人だったってことですね」

 今日はアズもスノーも留守番のため一緒ではなく、セインと2人で来たのだがそのセインと休憩している時に数人の男たちによって誘拐されたのだ。
 最初はセインも縁を守ろうと必死に抵抗していたが、背後からの一瞬をつかれ縁が捕まってしまったのだ。

 「まさか町中でこんな目に合うとは……」

 盗み聞きした彼らの話しによれば奴隷であるセインはすぐに解放されたようだが、何故か勘違いしたらしい彼らによって貴族とでも思われているのか縁は金になると捕まったままである。
  本当は庶民なのだが。

 「まぁセインたちが助けに来てくれるでしょうし、それまでの辛抱ですね」

 彼らがこのままジッとしているわけがないのだ。
 男たちは奴隷だから何もできないと思っているだろうが、それ以前にセインたちは縁の番だ。
 攫われたと知れば容赦なく男たちも倒すだろう。

 「できれば人殺しはさせたくないんですが……」

 縁が死体を見たくないというのもあるが、なによりセインたちにそんなことさせたくない。
 日本にいた時とは違い、こちらでは強盗も誘拐も珍しくないようだがそれでも殺人はさせたくなかった。

 「窓もないので場所も分からないですし……まぁ見えても私に分かるとは思えませんけど」

 方向音痴は自覚してしまえば楽だった。
 治せるならば治したほうがいいのだろうが、そう簡単に治せるものでもなく、それならば誰かと出かけたほうが早いと思う。
 何度も通っていれば流石に覚えるだろうし、無理をしてまで覚える必要はない。

 「というか寒いですね。地下だから仕方ないと思いますが誰か上着でも貸してくれませんかね?」

 そんな優しい誘拐犯がいるとは思えないが。
 閉じ込められてはいるが拘束されてはいないため自由に部屋を動き回る。

 「無駄な体力は使わない方が賢明ですが……」

 「目ぇ覚めたみたいだな」

 「いえまだ覚めてません」

 だからもう少し放っておいてほしい。
 声をかけてきた男を無視し逃げ道を探す。

 「………」

 男が入ってきただろう入り口の戸は開いているが……

 「今なら出れそうな気も……しないですね」

 「しねぇのかよ!!頑張ってみろよっ!」

 何故か応援されてしまった。

 「いえ無理ですよ。私、見た目通り体力ないので」

 「……開き直んじゃねぇよ」

 実際縁が体力的にも目の前の男に勝てる気はしない。

 「アンタ……誘拐された自覚ねぇの?」

 それは少々縁を馬鹿にしすぎではないだろうか。
 いくら暢気な縁でさえそれぐらい理解している。
 理解しているだけであって期待通りの反応をしてやることはできないが。

 「分かってますよ。それで…貴方が盗賊のお頭さんですか?」

 「まぁいいけど。そう、俺がお頭さんね。と言っても盗賊なんて言えるほど立派なものでもねぇけど」

 「盗賊じゃないんですか?では……何ですかね?」

 「さぁ?俺に聞かれてもね。それより自分の心配でもしたら?殺しはしねぇけど逆に言えばそれ以外は何でもするよ俺ら」

 それは死にさえしなければ手足が捥がれることさえあるということだろう。

 「それは嫌ですねぇ。我が子もまだ小さいですし、放っておいたら何をしでかすか分からない番もいますから」

 「は?我が子ってアンタ何歳なわけ?大体番って……もしかしてアンタ獣人と番ってるわけ?」

 「そうですが?あと歳は16です。言っておきますが私の子ではありますが血は繋がっていません。ですが大事な可愛い子なので生きて帰りたいです」

 「………」

 そう簡単に逃がしてもらえるとは思えないが希望だけでも伝えておく。
 お頭だと言う目の前の男は、口調こそ軽く顔も笑ってはいるが目が虚ろでどこか冷めているような表情だった。
 肩まで伸びた黒髪は無造作に結ばれ、こちらを見る紅い瞳はどこか見覚えがーー

 「ん?あれ?お頭さんは魔族なんですか?」

 見慣れたその瞳にふと気付いた。

 「今さら気付いたのかよ。どうりで反応おかしいと思った。で?気持ち悪いって泣き叫ぶ?それとも近寄んなって喚き散らす?どっちにしてもうるさいだろうから喉潰したくなるけど」

 ?
 何故そんなことをするのだろう?
 首を傾げるだけで反応しない縁に男も首を傾げている。

 「「………」」

 えーと?
 ここは期待された通り叫んだ方がいいのだろうか?
 だがそれでは縁の喉が死んでしまう。
 それは困る。
 ーー見つめ合うこと数分。
 
 「えーと、そんなことよりーー」

 「そんなこと!?待ってたオレがバカみたいだろ!」

 やはり期待した反応とは違っていたらしい。
 だが縁も自分の喉は大事なためそんな無茶はできない。

 「期待に応えられずすいません。ですが聞いておきたいことが」

 「なに?」

 いや、そんな不満そうな顔されても。
 喉って大切なんですよ。
 家族とおしゃべりもしたいですし、美味しいご飯だって食べたい。

 「魔族の方って苦手な食べ物あったりするんでしょうか?」

 「………」

 あ、もう呆れた顔を隠そうともしないですね。
 いや最初から隠してはいなかったか。
 こちらに来てからというもの随分と見慣れたその表情に、縁は自分の常識が足りてないという自覚はあった。

 「……んなもの聞いてどうすんの?オレに食わせようとでも?こんなとこでそんなのムリだからね」

 それはそうだろう。
 そんなことする気なら縁だって食べ物ではなく、弱点を聞くだろう。
 馬鹿正直に答える人間もいないと思うが。

 「いえ、お頭さんのというより魔族一般の方々で。これを食べたらお腹を壊すとか、これは毒だから駄目とかを教えてほしいのですが」

 まさかこんな所で出会えると思っていなかったアズの同族に、これから育てていく上で注意すべきことを聞いておく。
 という説明すらしてないため、いきなりそんなことを聞かれた男は呆れたような顔をしていた。

 「なに?アンタそんなにオレらのことバカにしてんの?殺すよ?」

 何故男が怒っているのか分からない。
 ただ食べ物の好き嫌いを聞いただけなのだが。
 わけがわからず首を捻る縁であった。


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