二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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飲酒に注意

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 工房を案内してもらい、では試飲してみてはどうかとなった。

 「お酒の良し悪しなんか分かりませんよ?」

 「そうなんですか?」

 意外だとランが驚いていた。
 見た目はどうあれこちらに来てからというもの飲んだことはなく、日本にいた頃は所謂ザルだったこともありあまりこだわりがなかったのだ。
 飲めさえすればなんでもいいとは言わないが、安くても高くてもある程度美味しければそれでいいと思っている。

 「ランは強いんですか?」

 「かなり強ぇぞ」

 教えてくれたのはガンズで、慌てるランに笑って答えてくれた。

 「こいつの父親がかなり強くてな。酒が好きで好きでとうとう自分で作り始めちまった」

 なんと。
 趣味が高じて酒造りを始めるとはかなりの酒好きだったようだ。
 そう思えばランが強いのも納得できた。
 
 「あ、あの!ぼ、僕は、お酒を作るのが好き、なだけで!そんな、呑んだくれとかじゃ、なくて……えっと、だから……えーと、なんだっけ?」

 自分でも何を言っていたか分からなくなったらしい。
 可愛いなぁと頭を撫でてやれば恥ずかしそうに俯いてしまうのだった。

 「では、そのランの手作りを少しいただいてもよろしいですか?」

 飲んでみたいと言えば嬉しそうに準備するランにガンズも苦笑いしている。
 その生き生きとした表情にランにとって酒造りが生きがいなのが見て分かった。

 「これです。どうぞ」

 さっと差し出されたコップに入った液体はやはり縁が知る日本酒にそっくりで懐かしさに自然と笑みが溢れた。
 透き通った無色透明で一見水に見えるが、匂いを嗅げば酒特有のツンとした匂いがした。
 礼を言い受け取ると一口飲んでみる。

 「ーー美味しい」

 もう感じることができないと思っていた故郷の味に気分が上がる。
 甘みがありながら喉を通る清々しさに何杯でも飲めてしまえそうだ。

 「よかった。父さんが一生懸命考えたのでエニシさ…エニシくんに飲んでもらえてよかった」

 ランにとって自慢の父なのだろう。
 先程までのオドオドした様子はなく、笑顔で話す姿は本当に嬉しそうだ。

 「私も嬉しいです。こんなに素晴らしいものを残してくれたランのお父様に感謝したーー」

 「……エニシくん?」

 急に言葉を止めた縁に皆が不思議そうにこちらを見てくるが、その瞬間目の前が真っ暗になったのだった。





 突如糸が切れた人形のように前のめりに倒れていく縁の姿に慌てて手を伸ばせば、ドサリと倒れこんでくるのを何とか受け止めた。

 「エニシくん!?」
 「おいっ、大丈夫か!?」

 真後ろにいた為気付けたが、未だドキドキと早鐘を打つ心臓が苦しい。
 震える手でアレンが縁を抱き起こし、瞳を閉じるその顔を覗きこめばスゥスゥと規則正しい吐息が聞こえた。

 「……寝てる」

 「え?」
 「はぁ?」

 駆け寄ってきたランたちに縁を見せれば盛大な溜め息と共にホッと胸を撫で下ろしている。

 「「「………」」」

 あまりのことに3人が無言になる。

 「おい、こいつにはもう飲ますんじゃねぇぞ」

 「分かった」
 「うん」

 いきなり倒れこんだかと思えば意識もなく眠りこける姿に、皆が思った。
 どんだけ(酒に)弱ぇんだよ!!
 スヤスヤと幸せそうな寝顔に文句を言うこともできず、しかしどこも打ちつけることがなくて良かったと安堵した。
 
 「これじゃ無理だな。もう帰って寝かしてやれ」

 呆れたようにそう言うガンズにアレンも頷くと、縁を横抱きにし工房を出ようとし呼び止められた。
 
 「あ、あの!これ、良かったら…その…他の方たちと飲んでみて下さい」

 手渡されたのは先程縁が飲んでいた酒が入った瓶で、まさか自分に渡すなど思っていなかったアレンが驚いていれば、早く受け取れとガンズに促される。

 「……ありがとう」

 「いえ、エニシくんにはお薦めはできませんけど、その、あの、良かったら番のみなさんで飲んでみてください」

 そう言って笑うランにアレンはどう接していいか分からず戸惑いながらも礼を言うと縁を抱え工房を後にした。
 町を抜け隠れ家までの道をひたすら歩く。

 「………」

 まさか受け入れてもらえるとは思ってなかった。
 どんなに縁が優しく、自分たちを大切にしてくれていると分かってはいてもそれを他に期待していなかったのだ。
 とくに話すことなく縁に寄り添うだけだったアレン。
 そのことに何も触れないランたちに自分は無視されているのだろうと思っていたのだが、それもいつものことだろうと気にしていなかった。
 縁さえいれば他などどうでも良かったから。
 楽しそうに縁と話すランたちに嫉妬しなかったと言えば嘘になるが、話しの内容を聞いていればなるほど縁が気にいるわけだと納得し、なるべく邪魔にならないようにしていた。
 人間に期待などしていない。
 それはアレンに限らず、セインにアズ、他の獣人連中もそうだろう。
 だが縁も人間だ。
 いくらアレンたちの番になったとは言え、やはり人間の仲間ともいたいだろうと縁のために我慢していた。
 早く連れ帰りたいと思っていれば、いきなり目の前で倒れた縁に心臓が止まりそうになった。
 慌てて確認すれば眠りこける縁にホッと息をついた。
 駆け寄ってくるランたちに寝ていることを伝えれば彼らも安心したようだ。
 だが、まさか縁があれほど酒に弱いとは思っていなかった。
 スヤスヤと気持ち良さそうに腕の中で眠る縁に笑みが溢れる。
 縁が友と認めた人間はオドオドしながらもしっかりとアレンの目を見て酒を渡してきた。
 もう酒を飲ますなとアレンを見て言ったガンズも顔は険しかったが、それは縁を心配してのことだろう。
 無視されていると勝手に思っていたアレンにとって有り得ないことだらけで戸惑い無愛想な返事しかできなかった。

 「俺たちは……俺も、少しぐらいは人間を許してもいいのかもな」

 今までのことを思えば全ての人間を許すことなんて絶対に出来ないだろう。
 だが。
 それでも。
 今日、アレンのことを1人の人間として見てくれたランたちは認めてもいいのかもしれない。
 縁ほどではないがそれでも蔑み、獣人たちを奴隷としか思っていない人間たちとは違う人間もいるということを。

 「ありがとな…縁」

 それを知る機会を与えてくれた愛する番に。
 誰よりも、何よりも愛しているという気持ちを込めてキスを贈るのだった。
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