二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
113 / 475

は?

しおりを挟む
 あれからどれだけ経っただろう。
 眠り続ける縁に、部屋の隅で椅子に腰かけていたジークがいつの間にか寝ていた目を開けると膝にはアズがおり眠っていた。
 スースーと寝息を立てる姿に笑みを浮かべ、ベッドに視線を向ければ変わらず横たわる縁の姿がある。

 「変わらんか…」

 先程よりは顔色は良くなっているようだが、その瞳は閉じたままである。
 アレンとセインも疲れたのかそのままで、頭だけベッドに預けて眠っているようだ。

 「ーーママ?」

 変わらない様子にガッカリしながらも立ち上がろうとすれば、腕の中で突如パチリと目を開けたアズに驚く。
 何事かと聞こうとすれば下ろせとばかりに暴れだしたアズに、訳も分からないまま手を離せば縁が眠るベッドに駆け寄っていく。

 「アズ?縁がどうかしーー」

 「ママ、ママ」

 起こそうとするかのような声に慌てて止めに入るが、イヤイヤと首を振り暴れる。

 「アズ、今は寝かせてやーー」

 「やぁっ!ママいたくないもん」

 「ん?そういえば……さっきも何か言おうとしてたな。もうちょっとって言ってたが、あれはどういうことだ?」

 今こうして暴れる姿はいつものアズだが、運ばれ眠る縁を見ている時はいつもと違い落ち着いていた。
 まるでどうしてこうなったか分かっているかのように。

 「ママね、もういたくないって。ごめんねっていってるの。いいこいいこ」

 そう言い縁を撫でるアズの姿に気付いたジークは驚き、足下がふらついた。

 「……なんだ…そういうことかよ…」

 理由が分かったジークは今度こそ縁を起こそうとするアズを止めることはなかった。
 その様子を横で眺め、震えた瞼にホッとした。
 もしかしたらもう目を覚まさないのでは思っていたため、開いた瞳がこちらを向いた時は泣きそうなほど嬉しかった。

 「ジーク…アズも……おはようございます?」

 間抜けな挨拶に笑えば、その声で起きたのだろうアレンとセインが慌てて縁に手を伸ばす。

 「どうやらかなり心配させてしまったようですね。本当にすいませんでした。これからは体調管理には気をつけてます」

 「お願いだから無理はしないでくれ」

 「縁がいないと俺は生きていけない」

 セインとアレンが泣きそうなりながら縁を抱きしめれば、今度はジークの番だと縁が両手を差し出してくる。
 こうしてジークのことも忘れず伸ばされる手に喜びながらも抱きしめれば、ドクドクと心臓を打つ鼓動に安心した。

 「本当に無事でよかった。これからは気をつけてくれ。もう1人の身体じゃないんだからな」

 「え?」
 「「は?」」

 3人が驚き口を開く中、促すようにアズに目線を向ける。

 「ごめんねって。ママ、イタイイタイしてごめんねって」

 「「「………」」」

 ジークも分かった時は驚いたが、アズが縁のを撫でるのを見て変な病気ではなかったと安心したものだ。

 「うそ……赤ちゃん、ですか?……本当に?」

 信じられないと腹を撫でるアズの手に自分も手を乗せると、確認するように縁はアズを見た。

 「もしかして、倒れる前に言っていたおにいちゃんだからというのは……この子のおにいちゃんということだったんですか?」

 「うん。ママごめんねって、だからアズ、いいこいいこしてあげたの」

 どうして声が聞こえたかは分からないが、ママを苦しめてしまっていると腹の子が泣いているのをアズは慰めていたらしい。

 未だ呆然とする3人に、ジークもそっと縁の腹に触れてみる。
 流石にまだ膨らむことはないが、そこに自分の番の子が宿っているのだと思えば、自分の子ではないとしても喜びはひとしおだ。

 「最近ずっと体調が悪かっただろ。たぶんだが、身体が作り変わってたんじゃないか?今日にしてもやっと身体が安定したからかその反動かもしれん」

 どういう風に作り変わるかは知らないが、アズの様子がおかしかったことからも弟を守ろうとしていたのかもしれないと思えば納得できる。

 「俺も男の番を見たのは初めてだからな。はっきりそうだとは言えんが、アズの反応から言って可能性は高いんじゃねぇか?」

 「そう、そうですか……私に、赤ちゃんが………セイン」

 未だ無言のセインに縁が手を伸ばせば、涙を零しながら抱き締めた。

 「ありがとう、ありがとう縁。本当にありがとう。こんなに嬉しいことはない」

 「私も嬉しいです。家族が増えるんですから頑張って下さいね、お父さん」

 「ははっ、そうだな。でもアズもいるから呼び方はパパの方がいいかな」

 確かにアズがパパと呼ぶのにお父さんでは少々ややこしいだろう。
 そうだなと笑い合えば、それまで静かだったアレンがセインを引き剥がしガバッと抱きついた。

 「セインの子だけど、縁の子でもあるんだから番である俺もその子のパパだぞ!」

 「……ははっ、はははははっ、そう、そうですね。アレンもパパなんですから一緒に頑張っていきましょう。もちろんジークもね。この子のしつけはジークが頼りです」

 「なんでだよ!」
 「俺は!?」

 確実に親バカの甘々な父親になりそうだとは言わないでおこうと、縁と頷き合うのであった。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...