二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
115 / 475

心の内

しおりを挟む
 久しぶりの外の空気に、自分でも知らず知らずの内に少なからずストレスが溜まっていたのだと感じた。

 「子どもができることをみんなが喜んでくれるのは嬉しいんです。嬉しいけど……」

 みんなが心配してくれているのは分かる。感じる。
 ただの人間である縁に、獣人ほど体力のない縁に、魔族より身体が頑丈ではない縁に、みんなが心配してくれている。
 あの日、目を覚ましてからエルに会いに行ってみたら泣いて謝まられ驚いた。
 気付けなくてごめんと、何もできなくてごめんと、守ると約束したのにと。
 謝らなければいけないのは縁の方なのに。

 「まぁ、ずっと動かないで部屋に籠ってろってのも辛いよな。今まで出来てたことをいきなりするなって言われても不思議で仕方ないよな」

 いつもの花畑。
 いつもジークと訪れるこの場所なら、素直に胸の内を話せるような気がした。
 花だらけの中2人腰を下ろし、抱きつくように膝に乗せられれば、その広い胸元に頭を傾ける。

 「エルが泣いてたんです。何も出来なくてごめんって、エルは何も悪くないのに。だってこれは私の問題です。私がちゃんと自覚してなかったからでーー」

 「そうだな、もっと早く気付けてれば良かった。でもな…初めてのことばかりで誰も気付けるわけないとは思わねぇか?」

 「………」

 トクトクと耳元で聞こえる規則正しい心臓の音にホッとする。

 「俺だって男の番は初めてなんだ。縁だってそうだろ?本来なら人間の女と結婚して、そのカミさんに子どもが出来て一緒に育てていく。それが普通なんだ。けど、今は男だが俺は縁の番で、縁も男だが俺の番だ。初めてのことばかりで混乱するのは分かるが、それならそれでちゃんと言ってくれ」

 「……………怖いんです」

 「そうか。俺も怖ぇよ」

 まるで子どもを寝かしつけるようにポンポンとリズムよく背を叩くジークにぎゅっと抱きつく。

 「みんなが、サッズさんが、アレンにセイン、エルがみんなが、心配だから何もするなと言われる度、自分が情けなくて仕方なくなるんです。確かに人間である私はあそこに住む誰より脆く、弱いでしょう………けど、けど!私だって男で、何も出来ない子どもじゃない!赤ん坊がいるからと言って何もするなと言われては私の存在価値まで無くなってしまう気がして怖いんです」

 「そうか…そうだな、それは俺たちが悪かった。そうだよな、お前は初めて来た時から自分は何も出来ないって落ち込んでたものな」

 やっと少しでもみんなの為に何か出来ると思えた矢先に、何もするなと言われてしまえば縁には不安で仕方なかった。
 番に頼りきってばかりで、仕事まで休ませて自分の世話をさせるなんてどれだけ自分はみんなの足を引っ張っているのかと。
 大丈夫だからと言われる度に、本当は邪魔だと思われていたらどうしようと考えることもあった。

 「私は臆病者なんです。みんなに嫌われることが怖い。大切な人たちにいらないと、必要とされないのが怖くて仕方がないんです」

 早くに両親を亡くしたせいか縁は人の愛情に飢えていた。
 誰かに愛してもらいたくて、誰かに必要とされたくて、誰かに関わっていたくて警察官という仕事を選んだこともある。
 ずっと独り身で、毎日交番の前を通る子どもやおじいちゃん、おばあちゃんが挨拶してくれるのが嬉しかった。
 誰かが毎日のように話しかけてくれるのが嬉しかった。
 
 「獣人は愛情深いと言ってましたよね。人間には重いだろうとセインは言ってましたが、私にとってはその重さが嬉しくて仕方なかった。アレンが、セインが、ジークが、3人が変わらず愛してくれると言ってくれて凄く嬉しかったんです」

 アズやエル、スノーとはいつか別れがやってくる。
 だが、番である3人は変わらず最後まで縁の側にいてくれるだろう。

 「でも、だからこそ何か私に出来ることをみんなに返したい。みんなの役に立つことをしたい。そうじゃないと………そうじゃないと私はどうしたらいいか分からない」

 溢れる涙を止めることが出来ず、その温かい胸に擦り付ける。
 まるで子どものように泣く縁に、呆れられたらどうしようと不安になり顔を上げれば、熱を持つ瞼に温かい何かが触れた気がした。

 「愛してる。エリーと比べることは出来んが、その他の誰より俺は縁を愛してる」

 チュッチュッと音をならし、瞼、額、頰、口と口付けを落としていくジークにまた涙が溢れた。

 「その綺麗な目が、俺の心をほぐしてくれたその優しさが、愛してると抱きしめてくれるその両手が、その縁の全てが俺は愛しくてたまらない」

 だから不安になるなと顔中にキスされる。

 「私も……私もジークを愛してます。ジークのことが大好きなんです」

 3人が3人共縁を一番愛していると言ってくれる中、縁は誰か一人を一番と言うことは出来ない。
 出来ないが、それでも3人をそれぞれ愛し、愛され、言葉を使い伝えることを縁は惜しみはしない。
 彼らが大切だと、3人を愛していると。
 何より大切で、絶対に失いたくない温もり。
 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...