二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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 店員vs.エルの戦いはエルの勝利に終わった。
 げっそりとした顔色に「悪いことしようとするからですね」と言えば流石に反省したのか謝る店員に笑って許した。

 「指輪型、腕輪型、耳飾り、首飾り、手鏡などもありますがどうされますか?」

 「意外にあるんですね。(手鏡とか何かの変身道具みたい)」

 ボソッと呟いた縁の言葉に店員が首を捻っていたが、何んでもないと言いリックに好きなものを選ばせる。

 「なるべく肌身離さず持てるものにして下さい。誰かの手に渡ると危ないので」

 魔道具事態高価なものであるが、下手に誰かの手に渡り隠れ家の仲間に何かあっては問題だ。
 
 「腕か耳がいいです。あとはエニシさんが選んで下さい」

 「では耳飾りで。この感じなら男性でも違和感ありませんし、腕輪は……大きさが合いませんから」

 すでに大きさが決まっている腕輪では縁にはサイズが合わず、少し手を動かしただけですっぽ抜けていった。

 「ではこれを3つお願いします」

 当たり前に払おうとする縁にリックから慌てて止めが入る。

 「わ、私が出します。私の我儘でこうなったのに……」

 「全然問題ありませんよ。それにそれは貴方ではなく、国のお金でしょう?皆さんが汗水流して頑張って稼いだお金をここで使うのは感心しません」

 王子であるエリックならば簡単であろうが、それは王子としての務めを果たしていればの話しだ。
 ただ欲しいからと、町の人たちが頑張って納めたものを使うのはおかしい。

 「………なら、やっぱりやめーー」

 「貴方が本当にそれでもいいなら構いませんが、そうは思っていないんでしょう?もし、値段を気にしているようならば自分で稼げるようになった時にでも返して下さい」

 「自分で?」

 「ギルドで登録したでしょう?今は私たちと一緒に低ランクを受けていますが、強くなればもっと上の依頼も受けられます。それが嫌なのであれば王子としての務めを頑張ってみればいいです。両親がなんです、自分は才能があると見せてやれば彼方から擦り寄ってきますよ。その時は思いっきり鼻で笑ってやりなさい」

 やりたいことは今からでも決めていけばいい。
 冒険者としてランクを上げていくことも出来れば、王子として国のために尽くし利益を上げることも出来る。
 何かを始める時は何かしらの努力は必要だ。
 それが冒険者としか、王子としてかはさておき頑張ってみるのも悪くはないだろう。
 
 「………私に出来ますかね?」

 「さあ?そんなこと私には分かりません」

 「え?」

 自分で言っておいて何だが、それは縁の知るところではない。
 頑張り方も、どれだけ頑張れるかもリック次第なのだ。

 「結果はやってみないことには分かりませんよ。私は預言者ではないので。貴方が何を選ぶかも分かりませんし、どれだけ出来るのかも知らないですから」

 「………」

 俯き考えるリックに近寄ると優しく頭を撫でてやる。

 「ですが、そんな難しく考える必要はありません。どちらにせよ頑張らなければいけませんが、思い詰めるほどではないです。もし無理だと感じたら違う道を歩けばいいんですから」

 逃げ場がない状況では人は追い詰められ、良い結果を残す者もいれば、挫折し再起不能になる者もいる。
 リックがどちらかは分からないが、もし片方が駄目でももう片方を頑張ればいい。

 「だから力を付けなさい。身体的なことだけでなく、精神的にも。親に期待されてないのならそれを利用しなさい。期待がなければそれを重荷に感じることなく、好きに学べる。好きなことを、得意なものを極めるのもいいでしょう。王子である貴方にはその手段も時間も揃っているんですから」

 お金も時間も方法も知っているリックならば学びたいだけ学べる。
 庶民ならば家族のため、生活のためと諦めなければいけないことも出来るのだ。

 「教えてもらうことに躊躇してはいけません。それが悪いことでも良いことでも情報として得られたんですから。才能を伸ばしてくれた方には感謝を。悪事は何かあった時役に立つこともあるでしょうから胸に秘めておきましょう。いつかのためにね(叩き潰す時とか)」

 ふふふと笑う縁にエルが隣で引いていたことに気付くことはなかった。

 「とまぁ、偉そうなことを言いましたが選ぶのは貴方です。とりあえずここは私が出しておきますので考えがまとまったら教えて下さいね」

 「……はい、ありがとうございます」

 買ったばかりのものを一つはリックに手渡してやり、一つはエルに渡す。

 「え?オレ?」

 驚き固まるエルに微笑むとささっと着けてやる。

 「アズにはまだいらないだろうし、アレンたちに関しては魔力がないので意味がないでしょう?」

 リックは縁たちに比べれば微々たるものだが、魔道具に少し流すぐらいならば問題ないらしい。
 
 「あの日エルにはかなり心配をかけてしまいましたからね。これで万全とは言いませんが、連絡できる方法があるのとないのでは安心感が違うでしょう?」

 姿を見れるのが一番だが、それが無理な時は声だけでも届けられれば安心するのではないかと思ったのだ。
 アズと縁を置いていくのはかなりの不安だっただろう。
 あの日、助けを呼びに行くのは必然だったが、それでも声をかけられる方法があればと良かったのにと考えていた。

 「うん。ありがとう」

 イヤーカフス型の通信魔道具は笑うエルにとても似合っていた。

 
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