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当たるものです
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2度あることは3度ある。
その顔を見た瞬間その言葉が浮かんだ。
「竜族って鼻がいいんですか?」
「うーん、どっちかというと悪いと思うよ~」
ヘラヘラと笑いながらそう答える赤男(勝手に命名)に、隣にいるエルの「爆ぜろ」という呟きが聞こえた。
以前とは違い瞳は人間のそれだったが、顔(と態度)は変わっていないためすぐに分かった。
「1人ですか?」
「兄貴がさ~いなくなっちゃって~。いい歳して迷子とか笑えるよね~」
「私には貴方が迷子に見えますけどね」
「そうとも言える!ははははははっ」
こりゃダメだ。
もう話すだけで疲れるため、今にも襲いかかろうとしているエルの手を引き来た道を戻る。
「ねぇねぇソイツだれ?見たことないんだけど」
「教える義理はありません」
「はははははっ、マジいい!マジでいいよ」
何故かついてくる赤男にうんざりする。
「貴方は迷子のお兄さんでも探しに行きなさい。ついてこられても迷惑です」
「あー、マジいい。このオレにこの悪態。いいわ~」
心底気持ち悪い。
人の性癖をどうこう言う気はないが、それも自身が関わっていなければの話しだ。
何故悪態をついて喜ばれなければいけないのか。
苛立ちのせいかエルが爪を噛み始めた。
「ねぇねぇ名前教えてよ」
「タロウですよ」
「ぶふっ!」
明らかな偽名にそれまで怒り心頭だったはずのエルが吹き出す。
その反応に赤男も嘘だと分かったらしく、教えろとしつこく聞いてくる。
「ポチです」
「うそだ~」
「タマです」
「う~そ~」
「じゃあ…ゴン太」
「じゃあって言っちゃってんじゃん!」
我ながら適当過ぎるとは思うが、真面目に考えるのも馬鹿らしい。
「貴方に教えたくないんですよ。それぐらい察して下さい」
「えー、ムリ~。空気読めとかよく言われるけどさ、空気読むって……ププッ、空気なんてどう読むんだよって感じしない?」
「「………」」
もう疲れた。
相手すらしたくない。
「ねぇねぇお腹すかない?」
「そこら辺で泥団子でも作って食べたらどうですか?」
「えー、それ美味しいの?」
んなわけないでしょ!
「……では良いものを差し上げますので今日はそれでお引き取り下さいませんか」
「急にテイネイになったんだけど~なになに?なにくれんの?」
「とても貴方に相応しいものです。ですが約束してもらえなければ渡すことはできません」
「するする!ちょうだいちょうだい!」
「では……そーれ取ってこい!」
鞄から取り出すと大きく振りかぶりソレを空に向かって放り投げた。
興味津々に追いかける馬鹿をエルと2人見送る。
「………何投げたの?」
「骨」
「……そう…………犬か!」
「犬に失礼ですよ」
「うん」
可愛い上、主人に忠実な犬とあの馬鹿を比べるなんて間違っている。
あんな面倒くさい相手10分が限界だ。
「疲れました。どこかでお茶でもして帰りましょう」
「だね。ところであれって何の骨だったの?」
「…鹿、かな?いや、兎…鳥だったかも。あー、でも太さから言って鹿ですね」
入れておいたことは覚えていたのだが、何の骨かは裏覚えだった。
「何でそんなもん持ってたの?」
「使おうと思って。出汁をとるのにちょうどいいかと」
「だし?なにそれ」
「こう……肉の旨みというか…」
「肉じゃダメなの?」
ダメではないが、肉は食べるものであり出汁は飲むものなのだ。
しかし職人でもなければ、簡単なものしか作ったことがない縁には上手く説明できず、では今度作ってみようということになった。
「そうですね。お肉を柔らかく煮れば私もたくさん食べられるかもしれません」
「………ソウダネ」
単純に焼いた肉も好きだが、いかんせん人間である縁の顎はそこまで強靭ではない。
弾力がある分厚い肉を皆と同じ量食べるにはお腹も顎も無理があるのだ。
これで1つ悩みが解決したと喜ぶ縁にエルもヨカッタネ(棒読み)と笑ってくれる。
「じゃあ必要なものを買いに行きましょう。エルは何が好きですか?」
「うーーーん、肉?」
「若さですね。なら森に行きましょう。狩りの仕方を教えて下さい」
「……この前行ったんじゃなかった?」
「あの兄弟に邪魔されて動物がいなかったんですよ。まぁ、そもそもやり方を知らなかったのでいいんですけど」
「それでよく行ったね!?」
ジークもいたためやり方が違えば教えてくれるだろうとズンズン森を練り歩いていたのだが、そのジークが教えたくないとわざと黙っていたことを縁は知らないのであった。
「やはり弓を用意した方がいいですかね?しかし慣れないものを使うのもあれなので魔法でもいいですね。あ、それとも罠でも張りますか?」
「……一番安全な方法でお願いします」
わくわくと尋ねる縁にエルが諦めたように大きな溜め息をつくのであった。
その顔を見た瞬間その言葉が浮かんだ。
「竜族って鼻がいいんですか?」
「うーん、どっちかというと悪いと思うよ~」
ヘラヘラと笑いながらそう答える赤男(勝手に命名)に、隣にいるエルの「爆ぜろ」という呟きが聞こえた。
以前とは違い瞳は人間のそれだったが、顔(と態度)は変わっていないためすぐに分かった。
「1人ですか?」
「兄貴がさ~いなくなっちゃって~。いい歳して迷子とか笑えるよね~」
「私には貴方が迷子に見えますけどね」
「そうとも言える!ははははははっ」
こりゃダメだ。
もう話すだけで疲れるため、今にも襲いかかろうとしているエルの手を引き来た道を戻る。
「ねぇねぇソイツだれ?見たことないんだけど」
「教える義理はありません」
「はははははっ、マジいい!マジでいいよ」
何故かついてくる赤男にうんざりする。
「貴方は迷子のお兄さんでも探しに行きなさい。ついてこられても迷惑です」
「あー、マジいい。このオレにこの悪態。いいわ~」
心底気持ち悪い。
人の性癖をどうこう言う気はないが、それも自身が関わっていなければの話しだ。
何故悪態をついて喜ばれなければいけないのか。
苛立ちのせいかエルが爪を噛み始めた。
「ねぇねぇ名前教えてよ」
「タロウですよ」
「ぶふっ!」
明らかな偽名にそれまで怒り心頭だったはずのエルが吹き出す。
その反応に赤男も嘘だと分かったらしく、教えろとしつこく聞いてくる。
「ポチです」
「うそだ~」
「タマです」
「う~そ~」
「じゃあ…ゴン太」
「じゃあって言っちゃってんじゃん!」
我ながら適当過ぎるとは思うが、真面目に考えるのも馬鹿らしい。
「貴方に教えたくないんですよ。それぐらい察して下さい」
「えー、ムリ~。空気読めとかよく言われるけどさ、空気読むって……ププッ、空気なんてどう読むんだよって感じしない?」
「「………」」
もう疲れた。
相手すらしたくない。
「ねぇねぇお腹すかない?」
「そこら辺で泥団子でも作って食べたらどうですか?」
「えー、それ美味しいの?」
んなわけないでしょ!
「……では良いものを差し上げますので今日はそれでお引き取り下さいませんか」
「急にテイネイになったんだけど~なになに?なにくれんの?」
「とても貴方に相応しいものです。ですが約束してもらえなければ渡すことはできません」
「するする!ちょうだいちょうだい!」
「では……そーれ取ってこい!」
鞄から取り出すと大きく振りかぶりソレを空に向かって放り投げた。
興味津々に追いかける馬鹿をエルと2人見送る。
「………何投げたの?」
「骨」
「……そう…………犬か!」
「犬に失礼ですよ」
「うん」
可愛い上、主人に忠実な犬とあの馬鹿を比べるなんて間違っている。
あんな面倒くさい相手10分が限界だ。
「疲れました。どこかでお茶でもして帰りましょう」
「だね。ところであれって何の骨だったの?」
「…鹿、かな?いや、兎…鳥だったかも。あー、でも太さから言って鹿ですね」
入れておいたことは覚えていたのだが、何の骨かは裏覚えだった。
「何でそんなもん持ってたの?」
「使おうと思って。出汁をとるのにちょうどいいかと」
「だし?なにそれ」
「こう……肉の旨みというか…」
「肉じゃダメなの?」
ダメではないが、肉は食べるものであり出汁は飲むものなのだ。
しかし職人でもなければ、簡単なものしか作ったことがない縁には上手く説明できず、では今度作ってみようということになった。
「そうですね。お肉を柔らかく煮れば私もたくさん食べられるかもしれません」
「………ソウダネ」
単純に焼いた肉も好きだが、いかんせん人間である縁の顎はそこまで強靭ではない。
弾力がある分厚い肉を皆と同じ量食べるにはお腹も顎も無理があるのだ。
これで1つ悩みが解決したと喜ぶ縁にエルもヨカッタネ(棒読み)と笑ってくれる。
「じゃあ必要なものを買いに行きましょう。エルは何が好きですか?」
「うーーーん、肉?」
「若さですね。なら森に行きましょう。狩りの仕方を教えて下さい」
「……この前行ったんじゃなかった?」
「あの兄弟に邪魔されて動物がいなかったんですよ。まぁ、そもそもやり方を知らなかったのでいいんですけど」
「それでよく行ったね!?」
ジークもいたためやり方が違えば教えてくれるだろうとズンズン森を練り歩いていたのだが、そのジークが教えたくないとわざと黙っていたことを縁は知らないのであった。
「やはり弓を用意した方がいいですかね?しかし慣れないものを使うのもあれなので魔法でもいいですね。あ、それとも罠でも張りますか?」
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