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逃亡
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「これでよし!繋行きますよ」
知らない部屋に連れてこられた縁だったが、最初は大人しくしていてもずっとそうだとは限らない。
自分は囚われのか弱いお姫様ではないのだ。
昼寝中だったため鞄を置いてきてしまい心許ないが、敵がいない今が行動すべき時!
両手が使えないのは困るだろうと部屋にあった布切れを拝借し、簡単ではあるがおんぶ紐を作ると胸元に繋を括り付けた。
落ちないよう確認すると扉は無理だろうと窓を開け周囲を確認する。
「敵影なし。しかし結構高いですね」
何階建てかと聞きたくなる。
5階建てぐらいの高さになるであろう高さに怯みそうになるが、逃げるならばここしかない。
セインたちは絶対に助けに来てくれる。
ならば自分が今すべきことはそれまで逃げ切ること。
「ーー行きます」
窓枠にかけていた両足を外へと一歩踏み出せば、足場がなくなる感覚に身体が震えた。
落ちる前に何度も確認し出来ると確信してはいるが、やはり怖いものは怖い。
風魔法で落ちる勢いを殺し、閉じそうになる瞼を必死に開けると地面につくだろう直前にふわりと身体を浮かせるように着地する。
「……こわ、こわかった」
想像より遥かに上回る恐怖に手足の震えが止まらなかったが、じっとしている場合ではないと力を入れ音がしないよう静かに歩く。
「彼が言っていたのは本当だったんですね。まるで廃墟みたい」
昔はかなり立派だっただろう建物たちだが、誰も住まなくなくなって長いのかかなり朽ち果てている。
近くの壁に触れてみればサラサラと粉が舞い、元々あったヒビがさらに大きくなった。
「早く離れたほうがいいですね。それにしても似たような建物ばかりでどこへ向かえばいいのやら……」
ほとんどが白く荒れた建物ばかりで方向感覚に自信のない縁にはどう進めばいいのか分からなかった。
「エルならきっと気づいてくれる。とりあえず隠れながら少しでも離れなければ」
魔力感知ができるエルならば近くにいれば気付くはずだ。
大丈夫だと自分に言い聞かせ、捕まらないよう足早に建物から離れるのだった。
「どこ?どこ行った!!」
兄を探しに部屋を離れたが、結局見つからず戻った時にはもぬけの殻だった。
部屋に吹き込む風に慌てて明け放れた窓に駆け寄れば、かなり遠目にだがキラキラと揺れる銀色が見えた。
「くそっ!」
まさか赤子を抱えて逃げるとは思っていなかった。
いくら魔法を使えるといっても人間であり、自ら危険な目に合いにいくようなこともないだろうと油断した。
自分も素早く窓から飛び降りると先程見えた姿を追いかける。
「そこまでイヤ?オレがそんなにイヤなわけ?」
酷いことを言っている自覚はあった。
それでも目の前の希望に手を伸ばさずにはいられず、嫌がる彼を無理矢理連れてきた。
会うたび嫌な顔をされたが、それでもどこか温かみがあり子どもに言い聞かせるようなそれだった。
実際彼は言葉では言いはするが、手は出さなかった。
近寄るなと言いながらも切りかかってくるわけでも殴りかかってくるわけでもない。
むしろ困った子だと言いたげで構ってほしくて余計に近づいていった。
「やっと、やっと見つけたのに」
好きになってほしいとは言わない。
愛してほしいとは言えない。
ただ……受け入れてほしかった。
いつもヘラヘラと笑い、周りなどどうでもいいと振舞っていたのも現実を見るのが怖かったからだ。
残された兄弟2人、長男としてしっかりしようとしている兄にこれ以上負担をかけることもできず、だからといって自分1人でできることなどほとんどない。
そんな弱い自分も、もう自分たちしかドラゴンしか残っていないのだという現実もイヤでイヤで、唯一の希望である番も見つけられず怖くて仕方なかった。
「お願いだからオレを見てよ」
数分前までこの手にあったものがなくなり、心に冷たい風が吹く。
まだ、まだ大丈夫だ。
「どこ行った?どこ?どこだよ!」
見つからない焦りに近くの壁を殴りつければ、パラパラという何かが崩れる音と頭上から小石が降ってきた。
「そこから離れなさい!」
「え?ーーっ!」
突然の叫びに振り返ろうとするが、次の瞬間ガラガラと地面を揺らすほどの大きな音と共に目の前に壁が迫ってくるのだった。
知らない部屋に連れてこられた縁だったが、最初は大人しくしていてもずっとそうだとは限らない。
自分は囚われのか弱いお姫様ではないのだ。
昼寝中だったため鞄を置いてきてしまい心許ないが、敵がいない今が行動すべき時!
両手が使えないのは困るだろうと部屋にあった布切れを拝借し、簡単ではあるがおんぶ紐を作ると胸元に繋を括り付けた。
落ちないよう確認すると扉は無理だろうと窓を開け周囲を確認する。
「敵影なし。しかし結構高いですね」
何階建てかと聞きたくなる。
5階建てぐらいの高さになるであろう高さに怯みそうになるが、逃げるならばここしかない。
セインたちは絶対に助けに来てくれる。
ならば自分が今すべきことはそれまで逃げ切ること。
「ーー行きます」
窓枠にかけていた両足を外へと一歩踏み出せば、足場がなくなる感覚に身体が震えた。
落ちる前に何度も確認し出来ると確信してはいるが、やはり怖いものは怖い。
風魔法で落ちる勢いを殺し、閉じそうになる瞼を必死に開けると地面につくだろう直前にふわりと身体を浮かせるように着地する。
「……こわ、こわかった」
想像より遥かに上回る恐怖に手足の震えが止まらなかったが、じっとしている場合ではないと力を入れ音がしないよう静かに歩く。
「彼が言っていたのは本当だったんですね。まるで廃墟みたい」
昔はかなり立派だっただろう建物たちだが、誰も住まなくなくなって長いのかかなり朽ち果てている。
近くの壁に触れてみればサラサラと粉が舞い、元々あったヒビがさらに大きくなった。
「早く離れたほうがいいですね。それにしても似たような建物ばかりでどこへ向かえばいいのやら……」
ほとんどが白く荒れた建物ばかりで方向感覚に自信のない縁にはどう進めばいいのか分からなかった。
「エルならきっと気づいてくれる。とりあえず隠れながら少しでも離れなければ」
魔力感知ができるエルならば近くにいれば気付くはずだ。
大丈夫だと自分に言い聞かせ、捕まらないよう足早に建物から離れるのだった。
「どこ?どこ行った!!」
兄を探しに部屋を離れたが、結局見つからず戻った時にはもぬけの殻だった。
部屋に吹き込む風に慌てて明け放れた窓に駆け寄れば、かなり遠目にだがキラキラと揺れる銀色が見えた。
「くそっ!」
まさか赤子を抱えて逃げるとは思っていなかった。
いくら魔法を使えるといっても人間であり、自ら危険な目に合いにいくようなこともないだろうと油断した。
自分も素早く窓から飛び降りると先程見えた姿を追いかける。
「そこまでイヤ?オレがそんなにイヤなわけ?」
酷いことを言っている自覚はあった。
それでも目の前の希望に手を伸ばさずにはいられず、嫌がる彼を無理矢理連れてきた。
会うたび嫌な顔をされたが、それでもどこか温かみがあり子どもに言い聞かせるようなそれだった。
実際彼は言葉では言いはするが、手は出さなかった。
近寄るなと言いながらも切りかかってくるわけでも殴りかかってくるわけでもない。
むしろ困った子だと言いたげで構ってほしくて余計に近づいていった。
「やっと、やっと見つけたのに」
好きになってほしいとは言わない。
愛してほしいとは言えない。
ただ……受け入れてほしかった。
いつもヘラヘラと笑い、周りなどどうでもいいと振舞っていたのも現実を見るのが怖かったからだ。
残された兄弟2人、長男としてしっかりしようとしている兄にこれ以上負担をかけることもできず、だからといって自分1人でできることなどほとんどない。
そんな弱い自分も、もう自分たちしかドラゴンしか残っていないのだという現実もイヤでイヤで、唯一の希望である番も見つけられず怖くて仕方なかった。
「お願いだからオレを見てよ」
数分前までこの手にあったものがなくなり、心に冷たい風が吹く。
まだ、まだ大丈夫だ。
「どこ行った?どこ?どこだよ!」
見つからない焦りに近くの壁を殴りつければ、パラパラという何かが崩れる音と頭上から小石が降ってきた。
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「え?ーーっ!」
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