二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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災難

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 「救出が遅れて大変申し訳なかった。ついでと言っては何だがもう暫く付き合ってほしい」

 「それは構いませんが……大丈夫ですか?その頰」

 見事に頰に咲く紅葉模様は、まだ時間が経って間もないのが見て分かるほどに赤く熱を持っているのが分かる。
 あまりの痛々しさに大丈夫か聞けば、苦い顔をしながらも大丈夫だと言われた。
 大方マーガレット辺りにやられたのだろうと分かるだけに縁も何だが申し訳ない気持ちになった。

 「気休めですが……」

 まだきちんと試したことがないため出来るか半々ではあったが、そっと彼の赤い頰に触れると治りますようにと念じてみる。

 「っ!……君は、回復魔法が使えるのか?」

 確証はなかったが、きちんと出来たようでその整った顔立ちが元に戻りホッとした。

 「きちんと治せて良かった。その目の下のクマも消せたら良かったんですが……こればかりは本人が無理せず休んだ方がいいですね」

 どれだけ頭が回り出来る人間であっても無理がたたれば体調を崩してしまう。
 適度に休んだ方がいいと言えば、周りにもよく注意されているのか苦虫を噛み潰したような顔になっていた。

 「寒かっただろう。暖かい部屋を用意させた。あの人たちも待たせているので急ごう」

 マーガレットたちから離れ数時間。
 お城に向かった縁たちだが、着いた早々あの王女様に見つかり縁だけが牢屋に入れられていた。
 咄嗟に繋はエルに任せたため無事だとは思うが、宰相直々に救出されるまで地下の寒い牢に閉じ込められていた縁の手足はかなり冷えていた。
 両手に息を吹きかける縁に気付いたのか宰相が上着を貸してくれたため有り難く貸してもらう。

 「……足を引きずっているようだがどうした?」

 「連れて行かれる時に、その……転んでしまって。大丈夫です。遅いですが歩けーーわっ」

 実際は牢に入れられる時に王女様につき飛ばされたため転んで足を捻ってしまったのだが、そこまで言っても仕方ないだろうと歩けることを主張しようとすれば、親切な宰相様は抱えて運んでくれるらしい。

 「怪我人を歩かせるわけにはいかない。それにあの人たちもこれ以上待たせると城中色々と壊して歩き兼ねないから大人しくしていなさい」

 「ありがとうございます」

 「……」

 意外にもしっかりと筋肉がついた身体は縁1人抱えたところでびくともしないようだ。
 ………羨ましくなんかありませんよ。そう、ちょっと分けてくれないかなぁとか思っているだけで。
 繋を心配しながらも大人しく運ばれていれば、遠くの方から子どもの泣き声が聞こえてきた。

 「元気な子だな。あれからずっと泣き続けている」

 「心配かけてしまいましたね。熱を出していなければいいんですが」

 滅多に泣かない繋が泣き続けていたとなればかなり体力を消耗しているだろう。
 泣きすぎで熱を出していなければいいと心配していれば、そんな縁を見て意外にも宰相様にくすりと笑われた。

 「何ですか?」

 「いや、申し訳ない。馬鹿にしたわけではなく、まるで母親のようだなと思ってな」

 どうやら宰相様は繋を縁の子と認識してはいるようだが、それも父親としてなのだろう。
 当たり前だが男である縁が産んだとは思っていない。

 「一般的な立場で言えば母親ですからね。大切な我が子です」

 「………は?」

 「繋!無事ですか?」

 扉が開いた瞬間そう声をかければ気付いたマーガレットたちが慌てて駆け寄ってくる。

 「エニシ!?」
 「怪我はないかい?」
 「どど、どうして抱っこされているんだい?」
 「無事なようで安心したわい」

 心配顔のみんなに大丈夫だと伝えると未だ泣き続ける繋を抱き抱える。
 ただいま、1人にしてごめんなさいと謝りながらもギュッと抱きしめれば泣きすぎて顔を赤くしながらも漸く泣き止んでくれた。
 この子が無事で本当によかった。
 繋が無事なら少々足を捻ったことぐらいどうとも思わない。

 「少し足を痛めてしまって。お言葉に甘えてここまで運んでもらいました」

 そう言った瞬間、皆の目が一斉に睨みつけるように宰相様に向いたが、彼のせいではないと宥めた。
 ソファーに下ろしてもらい、痛めた足にはマーガレットが包帯を巻いてくれる。

 「それで?アンタ、この落とし前どうつけるつもりだい?いくらあの王女こむすめの言いつけって言ってもやっていいことと悪いことも分からないのかい」

 縁の腫れた足に、マーガレットはまるで自身が怪我したように顔を歪めながらも許さないとばかりに宰相を睨んでいる。

 「分かっている。王女役立たずだと放っておいた私の落ち度だ。まさかあそこまでとは……王子の方は最近使えるようになってきたと喜んでいたのだが」

 少しずつだがリックの存在が認められてきたようで嬉しかった。
 未だ両親とは無理なようだが、リックもそれはそれで構わないらしくどうでもいいと言っていた。

 「リックも……いえ、王太子殿下も喜んでいましたよ。宰相様に褒めてもらえたと」

 「……最近は勉学も武芸の方も真面目に取り組んでいるようだ。取り組むまでに時間がかかってしまったが、このままいけば彼が王の後を継ぐのもそう遠くないだろう」

 宰相がここまで言うのならばもう何も心配することはないだろう。
 良かった良かったと頷く縁であった。


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