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不思議な少年
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「ありがとうございます」
そう言って腕の中で頭を下げた少年をレオナルドは不思議な生き物を見るように見ていた。
ここまでされて何故自分に頭を下げられるのか。
レオナルド自身が何かしたわけではないのだが、それでも王女に関わりがある自分は怒りをぶつけるにはちょうどいいはずだ。
治癒魔法を使った時ももちろん驚いたが、それをレオナルドに躊躇いなく使ったことが何より驚いたものだ。
数秒だが頰に触れた手はかなり冷え切っており、ならば恨み言の一つでも言えばいいものを逆に赤く頰を張らせたレオナルドの心配をする。
足の怪我にしても何も言わず、レオナルドが気付かなければきっと最後まで言わなかっただろう。
彼は転んだだけだと言っているが、その背中には人の足跡が残っており後ろから蹴り飛ばされたか、踏まれ押さえつけられたのかが分かる。
聞いたところによると成人してはいるようだが、見た目の細さから子どもを相手にしている気になってしまう。
そんな彼が自身は何もしてないのに訳が分からない理由で捕らえられ牢に入れられていたならばもう少し混乱し慌てても良さそうなのだが、少し話しただけでも彼が落ち着いているのが分かった。
「一般的な立場で言えば母親ですからね。大切な我が子です」
「………は?」
泣き止まない赤子の声に心配そうな顔を見れば父親というより母親のように見えた。
だがそれを伝えれば自ら母親だという少年に何を言っているんだと思ったが、駆け寄る待ち人たちに囲まれ尋ねることは出来なかった。
案の定ギルマスたちに口々に責められ睨みつけられるが、やはりというか予想通りというか当事者である少年が怒ることはなく、むしろ王子が褒められ嬉しいと喜んでいる。
大丈夫なのか?
感情がないわけではないだろう。
自分のことよりレオナルドの頰を心配してくれたほどで、我が子を抱きしめる顔は本当に嬉しそうに笑っている。
なのに怒るということをしない。
何も思っていないわけなかろうにそれをレオナルドに言うわけでも八つ当たりするわけでもない。
「……君は何かないのか?」
気付けばそう尋ねていた。
「何か?」
何のことだと本当に不思議そうに言う少年に、不思議を通り越して心配になってくる。
「なぜ怒らない?ここまでのことをされたんだ。小言の一つや二つ言ってもいいはずだ。いや、言わない方がおかしい」
現にギルマスたちは怒り、先程からレオナルドを睨みつけてきているのだから。
「私は宰相様に何もされてませんよ?」
「それはそうだが……」
「私も人間なので今までのことに怒りがないわけではありません。ありませんが、それを宰相様に言っても仕方ないでしょう?私は貴方に何もされていないのですから」
言っていることは分かる。
分かるがそれをそうとも割り切れないのが人間だ。
あの王女を自分が止められなかったのも悪かったと言うが、それさえキョトンとされてしまう。
「宰相様のお仕事は王様の相談役であり補佐、国のため人のために尽くすことでしょう?子どもたちの教育係でもなければ、父親母親でもありません。そんな貴方を何故責めなければいけないのでしょうか」
「………」
彼が言っていることは正論だが、普通なら出来ない考え方でもある。
「私が色々されたのは王女様です。そのことに怒りはあっても、それを貴方に八つ当たりしようとは思いません。文句も謝罪も当人同士がしなければ解決することもしませんよ」
彼は本当に自分より歳下なのだろうか?
見た目も歳も確認はしたが、あまりに達観した考え方に疑ってしまう。
「こうなってもまだ話し合う機会を与えてくれるということだろうか?」
「もちろんです。その為に来たのですから」
そこまで言ってくれた彼に感謝しつつ、従者に王女を呼びにいってもらう。
数分後ーー
「レオナルドどういうことです!?あの男を牢から出したですって!」
「牢!?お前エニシさんを牢に入れたのか!」
「当たり前ではないですか!」
「ふざけるなっ!勝手に国から追い出そうとしただけでなく、牢に入れただと!?どれだけ馬鹿なことをすれば気がすむんだ!」
「馬鹿!?私はお兄様のためにーー」
「今までの行いからよく兄だと言えたな。私はお前を妹だと思ったことなど一度もない!」
「なんてこと仰るの!?」
そんな喧嘩を繰り広げながら現れた兄妹に、その場の全員が大きな溜め息をつくのであった。
ただ1人を除いて。
「疲れたでしょう?ゆっくりお休みなさいケイ」
泣き疲れた我が子を寝かしつけるその姿はまさに母親だった。
そう言って腕の中で頭を下げた少年をレオナルドは不思議な生き物を見るように見ていた。
ここまでされて何故自分に頭を下げられるのか。
レオナルド自身が何かしたわけではないのだが、それでも王女に関わりがある自分は怒りをぶつけるにはちょうどいいはずだ。
治癒魔法を使った時ももちろん驚いたが、それをレオナルドに躊躇いなく使ったことが何より驚いたものだ。
数秒だが頰に触れた手はかなり冷え切っており、ならば恨み言の一つでも言えばいいものを逆に赤く頰を張らせたレオナルドの心配をする。
足の怪我にしても何も言わず、レオナルドが気付かなければきっと最後まで言わなかっただろう。
彼は転んだだけだと言っているが、その背中には人の足跡が残っており後ろから蹴り飛ばされたか、踏まれ押さえつけられたのかが分かる。
聞いたところによると成人してはいるようだが、見た目の細さから子どもを相手にしている気になってしまう。
そんな彼が自身は何もしてないのに訳が分からない理由で捕らえられ牢に入れられていたならばもう少し混乱し慌てても良さそうなのだが、少し話しただけでも彼が落ち着いているのが分かった。
「一般的な立場で言えば母親ですからね。大切な我が子です」
「………は?」
泣き止まない赤子の声に心配そうな顔を見れば父親というより母親のように見えた。
だがそれを伝えれば自ら母親だという少年に何を言っているんだと思ったが、駆け寄る待ち人たちに囲まれ尋ねることは出来なかった。
案の定ギルマスたちに口々に責められ睨みつけられるが、やはりというか予想通りというか当事者である少年が怒ることはなく、むしろ王子が褒められ嬉しいと喜んでいる。
大丈夫なのか?
感情がないわけではないだろう。
自分のことよりレオナルドの頰を心配してくれたほどで、我が子を抱きしめる顔は本当に嬉しそうに笑っている。
なのに怒るということをしない。
何も思っていないわけなかろうにそれをレオナルドに言うわけでも八つ当たりするわけでもない。
「……君は何かないのか?」
気付けばそう尋ねていた。
「何か?」
何のことだと本当に不思議そうに言う少年に、不思議を通り越して心配になってくる。
「なぜ怒らない?ここまでのことをされたんだ。小言の一つや二つ言ってもいいはずだ。いや、言わない方がおかしい」
現にギルマスたちは怒り、先程からレオナルドを睨みつけてきているのだから。
「私は宰相様に何もされてませんよ?」
「それはそうだが……」
「私も人間なので今までのことに怒りがないわけではありません。ありませんが、それを宰相様に言っても仕方ないでしょう?私は貴方に何もされていないのですから」
言っていることは分かる。
分かるがそれをそうとも割り切れないのが人間だ。
あの王女を自分が止められなかったのも悪かったと言うが、それさえキョトンとされてしまう。
「宰相様のお仕事は王様の相談役であり補佐、国のため人のために尽くすことでしょう?子どもたちの教育係でもなければ、父親母親でもありません。そんな貴方を何故責めなければいけないのでしょうか」
「………」
彼が言っていることは正論だが、普通なら出来ない考え方でもある。
「私が色々されたのは王女様です。そのことに怒りはあっても、それを貴方に八つ当たりしようとは思いません。文句も謝罪も当人同士がしなければ解決することもしませんよ」
彼は本当に自分より歳下なのだろうか?
見た目も歳も確認はしたが、あまりに達観した考え方に疑ってしまう。
「こうなってもまだ話し合う機会を与えてくれるということだろうか?」
「もちろんです。その為に来たのですから」
そこまで言ってくれた彼に感謝しつつ、従者に王女を呼びにいってもらう。
数分後ーー
「レオナルドどういうことです!?あの男を牢から出したですって!」
「牢!?お前エニシさんを牢に入れたのか!」
「当たり前ではないですか!」
「ふざけるなっ!勝手に国から追い出そうとしただけでなく、牢に入れただと!?どれだけ馬鹿なことをすれば気がすむんだ!」
「馬鹿!?私はお兄様のためにーー」
「今までの行いからよく兄だと言えたな。私はお前を妹だと思ったことなど一度もない!」
「なんてこと仰るの!?」
そんな喧嘩を繰り広げながら現れた兄妹に、その場の全員が大きな溜め息をつくのであった。
ただ1人を除いて。
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泣き疲れた我が子を寝かしつけるその姿はまさに母親だった。
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