二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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もうやだ

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 相性というものは大事だと縁は思っている。
 表にあまり出さないながらも縁にも人の好き嫌いはあり、なるべくなら嫌いな人間には関わりたくないというのが本音だ。

 「これはどういうことなの!」

 そう叫び入ってきた女性は、一目で機嫌が悪いと分かるほど目がつり上がり怒りで口を震わせている。

 「どうなさいました?王妃様」

 縁たちを守るように前に出たレオナルドだが、怒り狂った女性は聞く耳を持たず近くに座る王女に気付くとその手をガシッと掴み上げる。

 「こんな所で何をやっているのです!貴方は王女としてやるべきことがあるでしょう。さっさと部屋にお戻りなさい!」

 「……お母様…でも…」

 チラチラとこちらを見ているのはきっと縁を気遣ってのことだろう。
 大丈夫だというように王女に笑って頷いてやれば、申し訳なさそうにしながらも言われた通り部屋を出て行くのだった。

 「それで?貴方は誰です?」

 格好からも貴族ではないと分かっているのだろう。
 見下すような態度を隠すことなく、早く帰れとばかりに縁を睨みつけてくる。

 「お待ち下さい母上。この方は私がお呼びしーー」

 「お黙りなさい。お前に母と呼ぶことを許可した覚えはありません」

 「っ!」

 呆れて物も言えないとはこのことだ。
 いつから子どもは母親の許しなくして母と呼べなくなったのか。
 いくらリックが気にしていないと言っても、こうも人前で親子であることを否定されては悲しいだろう。

 「足を怪我しておりましてこのような格好になり申し訳ありません。私、宰相様に頼まれ王太子殿下の教育係をさせていただいております縁と申します」

 「宰相に?…まぁ、いいわ。ですが言葉には気をつけなさい。王位をを継ぐのは娘のマリアンヌ、この国初の女王です」

 どうやら王妃はリックに王位を継がせるのは反対らしい。
 話しの流れからも娘というのは先程の王女のことだろう。
 宰相も賛成なのかとチラリと窺えば、気づいたらしいレオナルドが首を横に振っている。

 「…………そうですか……エリック」

 「は、はい!」

 「もし貴方が望むのであれば今日から私のことを母と呼ぶことを許可しましょう」

 「え」

 「なっ!貴方は何を言っているのですか!」

 驚く周囲と、やりやがったという顔をするレオナルドに微笑みつつエリックを呼ぶ。

 「嫌ですか?」

 「い、いえ!え、あ、あの、でも本当にいいんですか?」

 「エリックが嫌でないのであれば」

 大丈夫ですよと微笑めば嬉しそうに頷くエリックに王妃が慌てたように止めに入ってきた。

 「何を言っているのですか!そんなこと出来るわけないでしょう!」

 「何故ですか?」

 「なぜ?なぜってこの子は……」

 「この子は?」

 「この子は………」

 そこまで己の子だと認めるのが嫌なのか。
 彼のどこに認められないほどの落ち度があるというのだろう。
 
 「そんなことどうでもいいわ。それより男の貴方が母などおかしいでしょう!仮にも王族に連なるものが男の、しかも貴方のような身分卑しき者を母と呼ぶなど!」

 「ならば彼は誰の子ですか?仮とは言え王族というのであればその母親は?」

 「………」

 それほど認めるのが嫌なのか。
 
 「宰相様ならばご存知ですよね?この子は誰の子ですか?」

 ならば無理にでも認めさせてやるとレオナルドに振り返れば、面倒くさいとばかりに大きく溜め息をつかれた。

 「はぁ。殿は現国王陛下と王妃さーー」

 「このような薄気味悪い子が私の子なわけないでしょう!わ、私の子はマリアンヌだけです!」

 それだけ言うとこの国の王妃とも思えないようなバタバタと優雅さのかけらもない足取りで部屋を後にするのであった。

 「「「「「………」」」」」

 薄気味悪い…ね。どこが?
 瞳の色の違いぐらいであれほど騒ぐとは頭は大丈夫だろうか?

 「エリック?」

 「大丈夫です。分かっていたことですから。さすがに面と向かって言われたのは初めてでしたが」

 辛い想いをさせたのは分かっている。
 それでも、もしかしたらとかけた願いすら王妃は叶えはしてくれなかった。

 「……宰相様。貴方から見て次期国王に相応しいのは?」

 「殿、エリック様です」

 ならば問題はない。
 俯くエリックの顔を上げさせると右頰を抓る。

 「エ、エニシさん?」

 「ふふ、変な顔。そんな情けない顔しない!この宰相様のお墨付きですよ。私の子ならば胸を張りなさい」

 「あ……へへ。はい、あの、えっと…母上」

 先程の縁の言葉をしっかりと覚えていたようだ。
 照れながらもはっきりとそう答えたエリックはとても嬉しそうであった。

 「君は人を巻き込むのが上手いな」

 「お褒めいただき光栄です」

 「褒めてはいない」

 「宰相様も共犯ですね。いや、戦友かな?」

 「悪友の間違いではないのか?」

 友であることを否定はしないようだ。
 にこにこと笑いながらレオナルドを見れば、言いたいことに気づいたのか苦い顔をし逸らされた。
 照れ屋だなぁ。

 「ねぇねぇ、あの女に教育係って言ってたけどいいの?」

 ………あ。忘れてた。
 



 
 

 



 
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