二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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 「実は王妃って暇なんですか?」

 「「「ぶふぅっ」」」

 縁の心からの純粋な質問に話しを聞いていた3人が飲んでいたお茶を吹き出していた。
 ゴホゴホと咳き込みながらもどういうことかと聞いてくるレオナルドにーー

 「私たちが城に来る度にどこから聞きつけてきたのか嫌味ばかり言ってくるんですよ」

 毎回と言っていいほど上品とはかけ離れた歩き方で近寄ってきては帰れと文句を言ってくる。
 宰相様の命令なのでと言えば引き下がるのだが、それならば最初から来んなというのが正直なところだ。

 「ある意味ではそうだな」

 「というと?」

 「王妃の仕事が務まるほど王妃あの女の頭はよろしくない」

 つまりは馬鹿だと。よく王妃になれたものだ。
 あの女呼ばわりにリックは大丈夫なのかと隣を見れば…嬉しそうにケーキを頬張っていた。
 特に気にした様子はなく、もう完全に割り切っているのかもしれない。

 「ではその責務も貴方と王様の肩にかかっているということですか。大変ですねぇ」

 主に宰相様よりではあると思うが。

 「まるで他人事だな」

 「実際そうですからねぇ。ここへも遊びに来ている感じですから」

 「そのわりには兵たちの間ではかなり噂になっているようだったが?」

 誰だ。そんな噂流したの。

 「あれは不可抗力ですよ。私はただ疑問に思ったことを聞いただけです」

 「かなり気に入られたようだな。あのマルズス隊長が珍しく年甲斐もなくはしゃいで報告に来た時はうるさくてかなわなかった」

 なんという言いよう。
 隊長を何だと思っているのか。

 「確かに楽しい人ではありましたね。笑いながら背を叩かれた時は驚きましたが」

 「強すぎて咳き込んでたよね」

 明らかに鍛え抜かれた兵士相手への力加減でガハハと背を叩かれれば一般人である縁には受け止めることは出来なかった。
 咳き込む縁に兵士みんなで心配された。

 「悪い人ではないのだが、いかんせん戦闘と身体を鍛えることにしか興味がない人でな。作戦を練る時も主に副隊長が動いている」

 「それで成り立っているならいいじゃないですか。誰もかしらが宰相様と違って何でも出来るわけじゃないんです」

 「君は私をどれだけ出来る人間だと思っているんだ?」

 何でも出来るわけないだろうというレオナルドに冗談ですと笑い返す。
 探せばいるとは思うが、強さもあり頭が回る人間などそうはいないだろう。
 強ければ強いほど作戦を練る必要もなく、強さが足りないと思う者が作戦を練り闘う。
 全てが出来るのは理想であり、限りなく不可能に近い。
 ならば補える相手と手を取ればいい。

 「副隊長さんも面白い方ですね。すごく真面目そうに見えてかなり気分屋なところがあって」

 隊長を怒っていたかと思えば次の瞬間にはもうどうでもいいとばかりに書類仕事をしていたり。

 「根は真面目なんだ。だが隊長の代わりに書類仕事をし、その上隊員たちの面倒も見なければいけないと嘆いていた」

 隊長の立場とは?

 「宰相様と似た者同士ですね」

 「かもな。時々話しをするがとても気持ちが分かる時がある」

 遠くを見ながらそう呟くレオナルドに苦労が絶えないんだろうなぁと思った。

 「ではそんな苦労性な宰相様に疲れを癒す御守りお菓子をーー」

 「貰おう」

 言い切る前に手を差し出してくるレオナルド笑ってしまう。

 「いくらで買います?」

 「言い値で買おう」

 冗談めかして言ってみただけだったのだが、いくらでもいいと言うレオナルドに自分はどれだけ信用されているのだと苦笑いした。

 「嘘ですよ。これでお仕事頑張ってくださいね」

 「?、作ってもらっているんだ。対価は払おう」

 真面目。だが、もらうことを当たり前にしないいい考えだ。

 「ならばこの子をお願いします。味方になってほしいというわけではありません。むしろ鍛えて上げて下さい」

 隣でケーキを頬張るエリックを見れば、分かったというように頷いていた。
 学ぶことに躊躇してはいけない。
 縁が言った通りエリックは頑張ろうとしている。

 「まるで母親だな。……私は厳しいぞ?」

 「ですが為になります。耐えられるかどうか、それを判断するためにもいい勉強にはなるでしょう」

 厳しくともレオナルドであれば無駄になることを教えはしないだろう。
 周りに認めてもらうためにも、自信をつけるためにもいいことだ。
 それを分かっているからこそエリックも頷くだけで文句も言わなかった。

 「……君が本当に母親だったのなら私ももっと楽できていたんだろうな」

 「そんな頑張っている宰相様だからこそみんな貴方についていくんですよ」

 今までの頑張りに無駄なことはないと言えばそうかとだけ素っ気なく返されたが、意外にも恥ずかしがり屋の彼が照れていることは分かったので深くつっこみはしなかった。

 「私は面倒くさがりなので宰相様がいてくれて良かったです」

 「色々と台無しだ」

 「頼れる人がいるというの素晴らしいです」

 「都合が良くないか?」

 「さすが宰相様ということです」

 「君は人を誑かすの上手いな」

 「人聞きが悪い」

 こうして言い合っていても険悪なことはなく、むしろ楽しそうなレオナルドに少しでも息抜きになればいいと思った。

 


 

 

 
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