二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
203 / 475

慣れ

しおりを挟む
 ふと目が覚めた。
 あれからどれくらい時間が経ったか分からないが、布団を被っていたにもかかわらず肌寒さを感じる。
 身体は睡眠を求めているのに心が落ち着かず、頑張って寝ようとはするが中々寝付けない。
 それを何度か繰り返し、申し訳ないとは思ったがエルに連絡をとり来てもらうことにした。

 「どうしたの?」

 それほど待つことなく現れたエルは心配そうに近寄ってくると、横になっていた縁の顔を覗き込んできた。

 「ごめんなさい」

 自分の代わりに頑張ってくれているのに呼び出して申し訳ないと謝れば、気にするなと笑われた。

 「あの、こんなこと言うと小さい子みたいで恥ずかしいんですが…その、1人で寝るのが、なんだか落ち着かなくて……」

 こちらの世界に来てからというもの、早々にアレンに出会い、間も無くしてアズとセインとも暮らし始めたため1人で寝るということが殆どなかった。
 寝られないわけではないが、どことなく落ち着かない。
 我儘だとは思ったが一緒に寝てほしいと頼めば、意外にもあっさりと頷かれた。

 「オレで良かったの?アイツ呼んでこようか?」

 エルが言うアイツとはルーのことだろう。
 認めていないわけではないだろうが、まだ完全には受け入れられてないらしい。

 「いえ、エルがいいです」

 ルーでは他の意味で落ち着かない。縁ではなくルーが。
 アレンたちのように抱きしめてもらうわけにはいかないので、手を繋いでもらうことにした。
 先程までのそわそわしたものがなくなっていく。

 「ほら、ちゃんと肩まで掛けて。繋たちなら大丈夫だよ。よく分からないけど繋はランに懐いてたし、真と愛依はあのジジババが頑張ってくれてるから」

 ルーの存在がなくなっている。

 「私は幸せ者、ですね。エル、ありが、とう。だい…す……き…」

 ふわふわと訪れる眠気にそのまま身を委ねるのだった。






 スゥスゥと隣で寝息をたてるエニシにホッとする。
 疲れているのには気づいていた。
 それでもエルがエニシにしてやれることは少なく、自分のことになると手伝ってほしいと言わないエニシにヤキモキしていたのだ。

 「大好き、か……」

 その言葉だけでどれだけ頑張れることか。
 連絡が来た時は何かあったのかと駆けつけたが、聞いてみれば寂しくて1人で眠れないという何とも可愛らしい理由だった。
 普段がしっかりしているエニシだけに驚きはしたが、それでも自分を頼ってくれたのが嬉しい。
 握られた手から伝わってくる体温に心まで温まってくる気がする。

 「ずっと一緒にいられたらいいのに……」

 エニシが人間であることが悔やまれる。
 明らかに違いがある寿命に残された時間は後どれくらいかと考えてしまう。
 少ないと分かっているからこそ大切で、少しでもいいから何かしてやりたいと思う。

 「ねぇ、もっと頼ってよ」

 もっとオレを必要として。
 もっとそばにいさせて。
 番になりたいわけではない。
 それでも家族として愛してくれているエニシに自分もそれを返したい。
 人間や獣人に比べ魔族はそれほど情が厚いとは言い難い。
 けれどそれはあくまで魔族間でのことだ。
 こうして大切にしてくれるエニシに、アズライトだけでなくエルも家族としてエニシを愛している。

 「アズライトがさ、強くなりたいって」

 ママを守るにはどうしたらいいかと聞いてきたアズライトに、ならばとエルは暇を見つけては魔法を教えていた。
 属性が違うため上手く出来ているかは謎だが、アズライトも子どもながらに頑張っている。

 「分かる?みんな、エニシを中心に回ってるんだよ」
 
 番たちも、あの世話焼きのジジババも、あの元バカ王子も、自分たち兄弟も。
 だから生きてほしい。少しでも長く。
 以前約束した通り彼の子どもたちを見守ることはするつもりだ。
 しかし、やはり自分にとってエニシが一番なのだ。
 弟であるアズライトとは別に、自分を大切に思ってくれている彼が。
 彼の子ではなく、エニシと少しでもいいから一緒にいられればいい。
 
 「今はゆっくり休んで」

 あまり表情に出さないエニシだが、最近いつもの余裕がなくなっていた。
 ここへ来る前に絡んできた男たちにも珍しくイライラしているのが目に見えて分かった。
 だからこうして休める内に少しでも休んでほしく、自分がその手助けが出来るならば喜んでしよう。
 一緒に寝るのも、手を繋ぐのもエルには喜びしかないのだから。

 「オレも大好きだよ」

 言葉を伝えるのは苦手ではあるが、寝ている今ならばと口にすれば繋いでいた手に微かだが力が込められたような気がするのであった。
 
 

 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...