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やだなぁ
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現実に打ちのめされながらも、もうこれらに関わりたくないと彼らに背を向け歩き出す。
きっと先程の救難信号にエルたちもこちらに向かっていることだろう。
「真と愛依は大丈夫でしょうかねぇ」
泣いてないことを祈ろう。
「ママ」
ぎゅっと抱きついてきた繋にどうしたのかと視線の先を追えばーー
「さっきは仲間が申し訳なかった」
謝罪と共に頭を下げてくるが、その後ろでは先程の怒鳴り散らしていた男たちがこちらを睨みつけてきていた。
まともなのは目の前の男だけらしい。
「旅の途中で食料が底をついて苛立っていたんだ。こんなことがあった後で申し訳ないが、もしよければ食べ物を少し分けてくれないだろうか?」
「お断りします」
「っ!?」
謝ってそれで終わりだとでも思っていたのだろうか?
大体謝りにくる人間が違う。
仲間であるならば彼も無罪とは言わないが、元々こちらに暴言を吐いてきたヤツが誠心誠意謝ってこそ謝罪に意味があるのだ。
「お腹が空いているのは可哀想だとは思いますが、先程言ったように私はいきなり怒鳴りつけてくる相手に優しくしようとは思っていません。子どもがいるにもかかわらず更に怒鳴り、挙句手を上げようとする相手に誰が手を貸そうと思いますか。それに貴方はそう謝ったところで当の本人たちは反省どころかこちらを睨みつけていますよ」
「っーーお前たち!」
バッと振り返り見えた仲間の表情に男の顔が青くなる。
それでも仲間たちは睨みをやめないのだから救いようがないだろう。
「町まで頑張って下さい。ではーー」
「エニシっ!」
「ーーエル!」
やはり来てくれた。
駆け寄ってくるエルの後ろには双子を抱えたロンの姿も見えた。
ホッと息をつき縁も駆け寄ろうとすれば、シャキンと言う音が背後から聞こえた。
「魔族だとっ」
「一体どこから来たのよ!」
「あの、後ろの人も何か嫌な感じがしますっ」
見れば男たちが武器を構えエルたちを睨みつけている。
なんだか嫌な予感がし、エルに警告しようとすればこちらもまた縁の名を呼びいつの間にか剣を構えていた。
「いくぞ!俺が先にいく。カイは後ろから追撃、アメリは魔法で攻撃、サフィは皆の援護を」
完全に臨戦態勢。
「相手は1人だ。迅速に行くぞ」
「繋、離れていなさいっ」
素早く繋を近くの岩場に下ろすと今にも飛びかかってこようとする男たちとエルの間に割り込む。
「やめなさいっ!!ーーっ!」
「エニシっ」
「っ!?」
突如割り込んできた縁に男が剣を止めようとするが、間に合わずエルを狙っていた刃が縁の腹を掠めた。
襲いくる痛みと熱に膝をつきそうになるが、なんとか堪えると目の前を睨みつける。
「私の家族に手を出すのは許しません」
「そいつは魔族だぞ!」
「ーーぶさけるなっ!」
魔族だから何だと言うのだ。
縁にとってエルは家族なのだ。
魔族などと種族を理由に大切な家族を殺されてたまるか。
怒りに拳を握りしめると男の胸ぐらを掴み殴りつける。
「人の家族を傷つけようとして何が魔族だ!そんな理由で家族を奪おうとするお前たちこそ何様だ!」
「俺たちはーー」
動揺する男に、しかし隙を狙ったかのように襲いかかってきた炎の矢を水魔法で打ち消してやる。
「嘘でしょ!?なんで効かなーーきゃぁっ」
動けないよう魔法で女を地面に押さえつけると、未だ攻撃を諦めていなかった残りの2人も拘束する。
「何も知らず、知ろうともせず人の大切なものを傷つけようとは貴方たちはただの愚かな人殺しだ」
「ちがう!俺たちは人々を救う勇者でーー」
「救う?私がいつ貴方たちに救いを求めました?貴方たちがしたことは何もしてない人間を怒鳴り散らし、挙句駆けつけてくれた人の家族を殺そうと剣を向けた。私にとって貴方たちの存在は助けどころか、迷惑な存在でしかない」
泣きそうな顔で駆け寄ってきたエルに手を伸ばす。
「エルは私の大切な家族です。それを周りにどう思われようが私の意志は変わらない。家族を守るためならこれぐらいの怪我なんてことないですよ」
痛みはあれど死ぬ怪我ではない。
だから泣かなくていいとエルに微笑むが、腹から流れ続ける血に涙が止まらない。
「オレ、オレ……」
こうして泣くほど心配してくれる彼が殺される理由などどこにもないのだ。
「ママっ!」
隠れていた繋が抱きついてくるのを受け止めようとし、痛みにふらついたところをエルが背を支えてくれた。
「もう大丈夫ですよ。よく我慢出来ましたね」
いい子と褒めてやれば、小さな温かい手が赤く染まる腹にそっと触れてきた。
「いたいのいたいのとんでけー、ママのいたいのとんでけー」
一生懸命そう唱える言葉は繋が怪我をする度に縁が言ってきた言葉。
本来ならおまじない的な効果のない言葉だが、魔法が使えた縁は本当に痛みをなくし治してきた。
「さすが私の子ですね。教えた甲斐がありました」
薄っすらと痕を残しつつも塞がった傷跡に皆が驚いていた。
よく出来ましたと抱きしめてやれば繋も嬉しそうに抱きついてくるのであった。
きっと先程の救難信号にエルたちもこちらに向かっていることだろう。
「真と愛依は大丈夫でしょうかねぇ」
泣いてないことを祈ろう。
「ママ」
ぎゅっと抱きついてきた繋にどうしたのかと視線の先を追えばーー
「さっきは仲間が申し訳なかった」
謝罪と共に頭を下げてくるが、その後ろでは先程の怒鳴り散らしていた男たちがこちらを睨みつけてきていた。
まともなのは目の前の男だけらしい。
「旅の途中で食料が底をついて苛立っていたんだ。こんなことがあった後で申し訳ないが、もしよければ食べ物を少し分けてくれないだろうか?」
「お断りします」
「っ!?」
謝ってそれで終わりだとでも思っていたのだろうか?
大体謝りにくる人間が違う。
仲間であるならば彼も無罪とは言わないが、元々こちらに暴言を吐いてきたヤツが誠心誠意謝ってこそ謝罪に意味があるのだ。
「お腹が空いているのは可哀想だとは思いますが、先程言ったように私はいきなり怒鳴りつけてくる相手に優しくしようとは思っていません。子どもがいるにもかかわらず更に怒鳴り、挙句手を上げようとする相手に誰が手を貸そうと思いますか。それに貴方はそう謝ったところで当の本人たちは反省どころかこちらを睨みつけていますよ」
「っーーお前たち!」
バッと振り返り見えた仲間の表情に男の顔が青くなる。
それでも仲間たちは睨みをやめないのだから救いようがないだろう。
「町まで頑張って下さい。ではーー」
「エニシっ!」
「ーーエル!」
やはり来てくれた。
駆け寄ってくるエルの後ろには双子を抱えたロンの姿も見えた。
ホッと息をつき縁も駆け寄ろうとすれば、シャキンと言う音が背後から聞こえた。
「魔族だとっ」
「一体どこから来たのよ!」
「あの、後ろの人も何か嫌な感じがしますっ」
見れば男たちが武器を構えエルたちを睨みつけている。
なんだか嫌な予感がし、エルに警告しようとすればこちらもまた縁の名を呼びいつの間にか剣を構えていた。
「いくぞ!俺が先にいく。カイは後ろから追撃、アメリは魔法で攻撃、サフィは皆の援護を」
完全に臨戦態勢。
「相手は1人だ。迅速に行くぞ」
「繋、離れていなさいっ」
素早く繋を近くの岩場に下ろすと今にも飛びかかってこようとする男たちとエルの間に割り込む。
「やめなさいっ!!ーーっ!」
「エニシっ」
「っ!?」
突如割り込んできた縁に男が剣を止めようとするが、間に合わずエルを狙っていた刃が縁の腹を掠めた。
襲いくる痛みと熱に膝をつきそうになるが、なんとか堪えると目の前を睨みつける。
「私の家族に手を出すのは許しません」
「そいつは魔族だぞ!」
「ーーぶさけるなっ!」
魔族だから何だと言うのだ。
縁にとってエルは家族なのだ。
魔族などと種族を理由に大切な家族を殺されてたまるか。
怒りに拳を握りしめると男の胸ぐらを掴み殴りつける。
「人の家族を傷つけようとして何が魔族だ!そんな理由で家族を奪おうとするお前たちこそ何様だ!」
「俺たちはーー」
動揺する男に、しかし隙を狙ったかのように襲いかかってきた炎の矢を水魔法で打ち消してやる。
「嘘でしょ!?なんで効かなーーきゃぁっ」
動けないよう魔法で女を地面に押さえつけると、未だ攻撃を諦めていなかった残りの2人も拘束する。
「何も知らず、知ろうともせず人の大切なものを傷つけようとは貴方たちはただの愚かな人殺しだ」
「ちがう!俺たちは人々を救う勇者でーー」
「救う?私がいつ貴方たちに救いを求めました?貴方たちがしたことは何もしてない人間を怒鳴り散らし、挙句駆けつけてくれた人の家族を殺そうと剣を向けた。私にとって貴方たちの存在は助けどころか、迷惑な存在でしかない」
泣きそうな顔で駆け寄ってきたエルに手を伸ばす。
「エルは私の大切な家族です。それを周りにどう思われようが私の意志は変わらない。家族を守るためならこれぐらいの怪我なんてことないですよ」
痛みはあれど死ぬ怪我ではない。
だから泣かなくていいとエルに微笑むが、腹から流れ続ける血に涙が止まらない。
「オレ、オレ……」
こうして泣くほど心配してくれる彼が殺される理由などどこにもないのだ。
「ママっ!」
隠れていた繋が抱きついてくるのを受け止めようとし、痛みにふらついたところをエルが背を支えてくれた。
「もう大丈夫ですよ。よく我慢出来ましたね」
いい子と褒めてやれば、小さな温かい手が赤く染まる腹にそっと触れてきた。
「いたいのいたいのとんでけー、ママのいたいのとんでけー」
一生懸命そう唱える言葉は繋が怪我をする度に縁が言ってきた言葉。
本来ならおまじない的な効果のない言葉だが、魔法が使えた縁は本当に痛みをなくし治してきた。
「さすが私の子ですね。教えた甲斐がありました」
薄っすらと痕を残しつつも塞がった傷跡に皆が驚いていた。
よく出来ましたと抱きしめてやれば繋も嬉しそうに抱きついてくるのであった。
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