208 / 475
やだなぁ
しおりを挟む
現実に打ちのめされながらも、もうこれらに関わりたくないと彼らに背を向け歩き出す。
きっと先程の救難信号にエルたちもこちらに向かっていることだろう。
「真と愛依は大丈夫でしょうかねぇ」
泣いてないことを祈ろう。
「ママ」
ぎゅっと抱きついてきた繋にどうしたのかと視線の先を追えばーー
「さっきは仲間が申し訳なかった」
謝罪と共に頭を下げてくるが、その後ろでは先程の怒鳴り散らしていた男たちがこちらを睨みつけてきていた。
まともなのは目の前の男だけらしい。
「旅の途中で食料が底をついて苛立っていたんだ。こんなことがあった後で申し訳ないが、もしよければ食べ物を少し分けてくれないだろうか?」
「お断りします」
「っ!?」
謝ってそれで終わりだとでも思っていたのだろうか?
大体謝りにくる人間が違う。
仲間であるならば彼も無罪とは言わないが、元々こちらに暴言を吐いてきたヤツが誠心誠意謝ってこそ謝罪に意味があるのだ。
「お腹が空いているのは可哀想だとは思いますが、先程言ったように私はいきなり怒鳴りつけてくる相手に優しくしようとは思っていません。子どもがいるにもかかわらず更に怒鳴り、挙句手を上げようとする相手に誰が手を貸そうと思いますか。それに貴方はそう謝ったところで当の本人たちは反省どころかこちらを睨みつけていますよ」
「っーーお前たち!」
バッと振り返り見えた仲間の表情に男の顔が青くなる。
それでも仲間たちは睨みをやめないのだから救いようがないだろう。
「町まで頑張って下さい。ではーー」
「エニシっ!」
「ーーエル!」
やはり来てくれた。
駆け寄ってくるエルの後ろには双子を抱えたロンの姿も見えた。
ホッと息をつき縁も駆け寄ろうとすれば、シャキンと言う音が背後から聞こえた。
「魔族だとっ」
「一体どこから来たのよ!」
「あの、後ろの人も何か嫌な感じがしますっ」
見れば男たちが武器を構えエルたちを睨みつけている。
なんだか嫌な予感がし、エルに警告しようとすればこちらもまた縁の名を呼びいつの間にか剣を構えていた。
「いくぞ!俺が先にいく。カイは後ろから追撃、アメリは魔法で攻撃、サフィは皆の援護を」
完全に臨戦態勢。
「相手は1人だ。迅速に行くぞ」
「繋、離れていなさいっ」
素早く繋を近くの岩場に下ろすと今にも飛びかかってこようとする男たちとエルの間に割り込む。
「やめなさいっ!!ーーっ!」
「エニシっ」
「っ!?」
突如割り込んできた縁に男が剣を止めようとするが、間に合わずエルを狙っていた刃が縁の腹を掠めた。
襲いくる痛みと熱に膝をつきそうになるが、なんとか堪えると目の前を睨みつける。
「私の家族に手を出すのは許しません」
「そいつは魔族だぞ!」
「ーーぶさけるなっ!」
魔族だから何だと言うのだ。
縁にとってエルは家族なのだ。
魔族などと種族を理由に大切な家族を殺されてたまるか。
怒りに拳を握りしめると男の胸ぐらを掴み殴りつける。
「人の家族を傷つけようとして何が魔族だ!そんな理由で家族を奪おうとするお前たちこそ何様だ!」
「俺たちはーー」
動揺する男に、しかし隙を狙ったかのように襲いかかってきた炎の矢を水魔法で打ち消してやる。
「嘘でしょ!?なんで効かなーーきゃぁっ」
動けないよう魔法で女を地面に押さえつけると、未だ攻撃を諦めていなかった残りの2人も拘束する。
「何も知らず、知ろうともせず人の大切なものを傷つけようとは貴方たちはただの愚かな人殺しだ」
「ちがう!俺たちは人々を救う勇者でーー」
「救う?私がいつ貴方たちに救いを求めました?貴方たちがしたことは何もしてない人間を怒鳴り散らし、挙句駆けつけてくれた人の家族を殺そうと剣を向けた。私にとって貴方たちの存在は助けどころか、迷惑な存在でしかない」
泣きそうな顔で駆け寄ってきたエルに手を伸ばす。
「エルは私の大切な家族です。それを周りにどう思われようが私の意志は変わらない。家族を守るためならこれぐらいの怪我なんてことないですよ」
痛みはあれど死ぬ怪我ではない。
だから泣かなくていいとエルに微笑むが、腹から流れ続ける血に涙が止まらない。
「オレ、オレ……」
こうして泣くほど心配してくれる彼が殺される理由などどこにもないのだ。
「ママっ!」
隠れていた繋が抱きついてくるのを受け止めようとし、痛みにふらついたところをエルが背を支えてくれた。
「もう大丈夫ですよ。よく我慢出来ましたね」
いい子と褒めてやれば、小さな温かい手が赤く染まる腹にそっと触れてきた。
「いたいのいたいのとんでけー、ママのいたいのとんでけー」
一生懸命そう唱える言葉は繋が怪我をする度に縁が言ってきた言葉。
本来ならおまじない的な効果のない言葉だが、魔法が使えた縁は本当に痛みをなくし治してきた。
「さすが私の子ですね。教えた甲斐がありました」
薄っすらと痕を残しつつも塞がった傷跡に皆が驚いていた。
よく出来ましたと抱きしめてやれば繋も嬉しそうに抱きついてくるのであった。
きっと先程の救難信号にエルたちもこちらに向かっていることだろう。
「真と愛依は大丈夫でしょうかねぇ」
泣いてないことを祈ろう。
「ママ」
ぎゅっと抱きついてきた繋にどうしたのかと視線の先を追えばーー
「さっきは仲間が申し訳なかった」
謝罪と共に頭を下げてくるが、その後ろでは先程の怒鳴り散らしていた男たちがこちらを睨みつけてきていた。
まともなのは目の前の男だけらしい。
「旅の途中で食料が底をついて苛立っていたんだ。こんなことがあった後で申し訳ないが、もしよければ食べ物を少し分けてくれないだろうか?」
「お断りします」
「っ!?」
謝ってそれで終わりだとでも思っていたのだろうか?
大体謝りにくる人間が違う。
仲間であるならば彼も無罪とは言わないが、元々こちらに暴言を吐いてきたヤツが誠心誠意謝ってこそ謝罪に意味があるのだ。
「お腹が空いているのは可哀想だとは思いますが、先程言ったように私はいきなり怒鳴りつけてくる相手に優しくしようとは思っていません。子どもがいるにもかかわらず更に怒鳴り、挙句手を上げようとする相手に誰が手を貸そうと思いますか。それに貴方はそう謝ったところで当の本人たちは反省どころかこちらを睨みつけていますよ」
「っーーお前たち!」
バッと振り返り見えた仲間の表情に男の顔が青くなる。
それでも仲間たちは睨みをやめないのだから救いようがないだろう。
「町まで頑張って下さい。ではーー」
「エニシっ!」
「ーーエル!」
やはり来てくれた。
駆け寄ってくるエルの後ろには双子を抱えたロンの姿も見えた。
ホッと息をつき縁も駆け寄ろうとすれば、シャキンと言う音が背後から聞こえた。
「魔族だとっ」
「一体どこから来たのよ!」
「あの、後ろの人も何か嫌な感じがしますっ」
見れば男たちが武器を構えエルたちを睨みつけている。
なんだか嫌な予感がし、エルに警告しようとすればこちらもまた縁の名を呼びいつの間にか剣を構えていた。
「いくぞ!俺が先にいく。カイは後ろから追撃、アメリは魔法で攻撃、サフィは皆の援護を」
完全に臨戦態勢。
「相手は1人だ。迅速に行くぞ」
「繋、離れていなさいっ」
素早く繋を近くの岩場に下ろすと今にも飛びかかってこようとする男たちとエルの間に割り込む。
「やめなさいっ!!ーーっ!」
「エニシっ」
「っ!?」
突如割り込んできた縁に男が剣を止めようとするが、間に合わずエルを狙っていた刃が縁の腹を掠めた。
襲いくる痛みと熱に膝をつきそうになるが、なんとか堪えると目の前を睨みつける。
「私の家族に手を出すのは許しません」
「そいつは魔族だぞ!」
「ーーぶさけるなっ!」
魔族だから何だと言うのだ。
縁にとってエルは家族なのだ。
魔族などと種族を理由に大切な家族を殺されてたまるか。
怒りに拳を握りしめると男の胸ぐらを掴み殴りつける。
「人の家族を傷つけようとして何が魔族だ!そんな理由で家族を奪おうとするお前たちこそ何様だ!」
「俺たちはーー」
動揺する男に、しかし隙を狙ったかのように襲いかかってきた炎の矢を水魔法で打ち消してやる。
「嘘でしょ!?なんで効かなーーきゃぁっ」
動けないよう魔法で女を地面に押さえつけると、未だ攻撃を諦めていなかった残りの2人も拘束する。
「何も知らず、知ろうともせず人の大切なものを傷つけようとは貴方たちはただの愚かな人殺しだ」
「ちがう!俺たちは人々を救う勇者でーー」
「救う?私がいつ貴方たちに救いを求めました?貴方たちがしたことは何もしてない人間を怒鳴り散らし、挙句駆けつけてくれた人の家族を殺そうと剣を向けた。私にとって貴方たちの存在は助けどころか、迷惑な存在でしかない」
泣きそうな顔で駆け寄ってきたエルに手を伸ばす。
「エルは私の大切な家族です。それを周りにどう思われようが私の意志は変わらない。家族を守るためならこれぐらいの怪我なんてことないですよ」
痛みはあれど死ぬ怪我ではない。
だから泣かなくていいとエルに微笑むが、腹から流れ続ける血に涙が止まらない。
「オレ、オレ……」
こうして泣くほど心配してくれる彼が殺される理由などどこにもないのだ。
「ママっ!」
隠れていた繋が抱きついてくるのを受け止めようとし、痛みにふらついたところをエルが背を支えてくれた。
「もう大丈夫ですよ。よく我慢出来ましたね」
いい子と褒めてやれば、小さな温かい手が赤く染まる腹にそっと触れてきた。
「いたいのいたいのとんでけー、ママのいたいのとんでけー」
一生懸命そう唱える言葉は繋が怪我をする度に縁が言ってきた言葉。
本来ならおまじない的な効果のない言葉だが、魔法が使えた縁は本当に痛みをなくし治してきた。
「さすが私の子ですね。教えた甲斐がありました」
薄っすらと痕を残しつつも塞がった傷跡に皆が驚いていた。
よく出来ましたと抱きしめてやれば繋も嬉しそうに抱きついてくるのであった。
47
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる