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譲れないもの
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怪我は繋により治ったが、だからといって彼らがしたことは許されない。許さない。
「貴方は自分が勇者だと言いましたね」
「え?」
「自分たちはそれに相応しい行動を心がけないと、と。それがこれですか?」
何も聞かず、何も知らず、魔族だというだけで手をかける。
「しかし、そいつは魔族だろう?」
何も疑問にも思わずそう答える男を鼻で笑う。
「だから?なんだと言うんです。貴方たちは彼が生きていることさえ許さないと?神にでもなったつもりですか?」
「ちがう!だが魔族は滅ぼさなければいけない種族で……」
彼自身も混乱しているのか声が小さくなる。
「何故?」
「人間にとって害としかならないからだ。このままではこの国も襲われ魔族に世界が乗っ取られるとーー」
「言われましたか。馬鹿馬鹿しい」
「なんだとっ!」
拘束され、動けないながらもこちらを睨みつけてくる男を見下ろし笑う。
「魔族は全てが害?襲われた?それで?それが彼を殺す理由になりはしない。彼は私の家族であり、人は襲わない。私を助け、側にいてくれる。それを奪おうとする貴方たちが私には害でしかない」
「魔族だぞ!」
バカの一つ覚えかのように繰り返すその言葉。
「で?」
「どれだけの人間が犠牲になってきたと思う!そいつらは血も涙もない冷血なーー」
「それは彼ではない他の魔族でしょう?彼を殺そうとした理由を私はさっきからずっと聞いているんですよ。バカですか?」
「キサマっ!」
殴りかかろうにも動けず地面を転がるだけだった。
どうしてこうも話しが通じないのだろう。
マーガレットたちは分かってくれたのに、こうして自分勝手な理由で襲いかかってくる者もいる。
「今までやってきた魔族の所業を全て彼に押し付ける気ですか?なら私が今まで人間にされてきたことを貴方に当たってもいいと?」
「それは……」
それは別だとでも?
なんとも都合のいいものである。
「貴方にいたってはエルではなく私を狙って魔法を使っていましたね?それも代わりに受けてくれると?」
「っ!?」
倒れふす女にそう問えばビクリと肩が揺れた。
それこそ最初はエルを倒そうと狙っていた彼女だが、途中飛んできた炎の矢は確実に縁を狙っていた。
やったことはなかったが、先程見たままに魔法で炎の矢を出現させると騒ぐ男に狙いを定める。
「ま、待ってくれ!誤解だ!アメリはーー」
「誤解?あの状況で何をですか?エルを守ろうとした私を殺そうとしたんでしょう?人間である私を」
迫る炎の矢に男が助けを求め、こうなった元凶である女を罵り始める。
聞くに耐えない叫びに繋をロンに預けると少し離れていてもらう。
「貴方が言ったんですよ?魔族だからと。今までの魔族がしてきたことの責任を取れと言うのであれば、貴方は、いえ貴方たちは仲間である彼女がしたことへの責任を取らなければならない」
そう言い増えた炎の矢はエルを襲おうとした4人全員に向けられる。
回復役だったのだろう少女は泣いて許しを乞い始めた。
魔法使いの女は怯え震えている。
男は叫び続け、唯一拘束していない勇者だと言う男は戸惑い動けずにいた。
「分かりましたか?」
「……な、に?」
何から何まで言ってやらねば理解しないのだろうか?
「言われるがまま魔族を倒し、邪魔する者を倒し、何故自分たちがそうしなければいけないのか理解していないんでしょう?考えようともしていない。……これが最後です。彼を殺す理由は?ありますか?」
それは最後の確認。
初めから彼らを殺す気など縁にはない。
それでも許せない想いがあり、その手段に魔法を使い脅すようなことをしている。
「ーーない。俺たちが考えなしだった。すまなかった」
真っ直ぐにこちらを見、頭を下げた男にホッと息をついた。
振り返りエルを見れば笑い頷く姿に縁も笑い返す。
全てが解決したわけではない。
それでもエルの心が少しでも軽くなればいいと思う。
縁にとって家族はかけがえのないものであり、ずっと求めていたものだ。
それを身勝手な理由で奪おうというのならば許さない。
「貴方の全てを否定するわけではありません。勇者として頑張ってきたことも多くあるんでしょう。けれどだからといって全てを貴方の考えだけで当て嵌めるのは間違いです。魔族でも彼のような人もいる。それは人間である私が魔法を使えるように、貴方が人間であるのに勇者という力を持っているのと同じように」
十人十色。
人の数だけ意思、意見、考え方があるのだ。
彼らがエルを敵だと言うように、しかし縁には大切な家族なのだ。
縁の考え方が人間には理解し難いことは分かっている。
それでも譲れない。
もう2度と家族を失いたくはないから。
「後のことは貴方に任せます。彼らが貴方のように理解出来なくても構いませんが、また手を出してくるようならば私も今度こそ容赦しません」
「分かった」
出していた炎の矢を消すと駆け寄ってきた繋を抱え上げる。
子どもの前ですることではなかったかもしれないが、怯えることなく抱きついてきた繋にはちゃんと分かっているだろう。
家族を守ろうとしたのだと。
「さぁ、帰りましょう。パパたちが心配してますからね」
「うん!」
「うん、帰ろう」
エルに微笑むと縁たちを待つロンたちと並んで帰るのだった。
「貴方は自分が勇者だと言いましたね」
「え?」
「自分たちはそれに相応しい行動を心がけないと、と。それがこれですか?」
何も聞かず、何も知らず、魔族だというだけで手をかける。
「しかし、そいつは魔族だろう?」
何も疑問にも思わずそう答える男を鼻で笑う。
「だから?なんだと言うんです。貴方たちは彼が生きていることさえ許さないと?神にでもなったつもりですか?」
「ちがう!だが魔族は滅ぼさなければいけない種族で……」
彼自身も混乱しているのか声が小さくなる。
「何故?」
「人間にとって害としかならないからだ。このままではこの国も襲われ魔族に世界が乗っ取られるとーー」
「言われましたか。馬鹿馬鹿しい」
「なんだとっ!」
拘束され、動けないながらもこちらを睨みつけてくる男を見下ろし笑う。
「魔族は全てが害?襲われた?それで?それが彼を殺す理由になりはしない。彼は私の家族であり、人は襲わない。私を助け、側にいてくれる。それを奪おうとする貴方たちが私には害でしかない」
「魔族だぞ!」
バカの一つ覚えかのように繰り返すその言葉。
「で?」
「どれだけの人間が犠牲になってきたと思う!そいつらは血も涙もない冷血なーー」
「それは彼ではない他の魔族でしょう?彼を殺そうとした理由を私はさっきからずっと聞いているんですよ。バカですか?」
「キサマっ!」
殴りかかろうにも動けず地面を転がるだけだった。
どうしてこうも話しが通じないのだろう。
マーガレットたちは分かってくれたのに、こうして自分勝手な理由で襲いかかってくる者もいる。
「今までやってきた魔族の所業を全て彼に押し付ける気ですか?なら私が今まで人間にされてきたことを貴方に当たってもいいと?」
「それは……」
それは別だとでも?
なんとも都合のいいものである。
「貴方にいたってはエルではなく私を狙って魔法を使っていましたね?それも代わりに受けてくれると?」
「っ!?」
倒れふす女にそう問えばビクリと肩が揺れた。
それこそ最初はエルを倒そうと狙っていた彼女だが、途中飛んできた炎の矢は確実に縁を狙っていた。
やったことはなかったが、先程見たままに魔法で炎の矢を出現させると騒ぐ男に狙いを定める。
「ま、待ってくれ!誤解だ!アメリはーー」
「誤解?あの状況で何をですか?エルを守ろうとした私を殺そうとしたんでしょう?人間である私を」
迫る炎の矢に男が助けを求め、こうなった元凶である女を罵り始める。
聞くに耐えない叫びに繋をロンに預けると少し離れていてもらう。
「貴方が言ったんですよ?魔族だからと。今までの魔族がしてきたことの責任を取れと言うのであれば、貴方は、いえ貴方たちは仲間である彼女がしたことへの責任を取らなければならない」
そう言い増えた炎の矢はエルを襲おうとした4人全員に向けられる。
回復役だったのだろう少女は泣いて許しを乞い始めた。
魔法使いの女は怯え震えている。
男は叫び続け、唯一拘束していない勇者だと言う男は戸惑い動けずにいた。
「分かりましたか?」
「……な、に?」
何から何まで言ってやらねば理解しないのだろうか?
「言われるがまま魔族を倒し、邪魔する者を倒し、何故自分たちがそうしなければいけないのか理解していないんでしょう?考えようともしていない。……これが最後です。彼を殺す理由は?ありますか?」
それは最後の確認。
初めから彼らを殺す気など縁にはない。
それでも許せない想いがあり、その手段に魔法を使い脅すようなことをしている。
「ーーない。俺たちが考えなしだった。すまなかった」
真っ直ぐにこちらを見、頭を下げた男にホッと息をついた。
振り返りエルを見れば笑い頷く姿に縁も笑い返す。
全てが解決したわけではない。
それでもエルの心が少しでも軽くなればいいと思う。
縁にとって家族はかけがえのないものであり、ずっと求めていたものだ。
それを身勝手な理由で奪おうというのならば許さない。
「貴方の全てを否定するわけではありません。勇者として頑張ってきたことも多くあるんでしょう。けれどだからといって全てを貴方の考えだけで当て嵌めるのは間違いです。魔族でも彼のような人もいる。それは人間である私が魔法を使えるように、貴方が人間であるのに勇者という力を持っているのと同じように」
十人十色。
人の数だけ意思、意見、考え方があるのだ。
彼らがエルを敵だと言うように、しかし縁には大切な家族なのだ。
縁の考え方が人間には理解し難いことは分かっている。
それでも譲れない。
もう2度と家族を失いたくはないから。
「後のことは貴方に任せます。彼らが貴方のように理解出来なくても構いませんが、また手を出してくるようならば私も今度こそ容赦しません」
「分かった」
出していた炎の矢を消すと駆け寄ってきた繋を抱え上げる。
子どもの前ですることではなかったかもしれないが、怯えることなく抱きついてきた繋にはちゃんと分かっているだろう。
家族を守ろうとしたのだと。
「さぁ、帰りましょう。パパたちが心配してますからね」
「うん!」
「うん、帰ろう」
エルに微笑むと縁たちを待つロンたちと並んで帰るのだった。
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