211 / 475
がんばるの!
しおりを挟む
「アズライトはさ、本当のママに会いたい?」
ふとそう尋ねてきた兄にきょとんとした。
縁に買われてから早数年。
もうアズの中ではママは縁しかいなかった。
「ううん」
言われた言葉はまだ覚えているが、顔はおろかどんな人だったかも思い出せない。
ホッとしたように息をつくエルに、覚えていないのかと責められているわけではないと分かった。
「ごめんね。オレ人に教えるってしたことがなくて分かりづらいよね」
こうして魔法を習い始めて数週間。
確かにエルの教え方は縁と違って分かりづらいが、それでも頑張って教えてくれようとしているのが分かるためアズも頑張っていた。
「アズがやりたいっていったもん」
言い出したのは自分。
以前ルーの所に家を建てに行くとなった時、危ないからと置いていかれそうになったが離れたくないと我儘を言って連れていってもらった。
自分のことを心配してくれていたのは分かる。
だからこそ何も出来ない自分が腹立たしかった。
パパたちのように力もなく、身体もまだ小さい自分が出来ることは少ないが幼くても自分は魔法を使うことが出来る。
手伝うにはまだまだだが、せめて連れていってもらっても困らせないようにしたかった。
だからこそまだ兄とは呼べないが、同じ魔族であるエルに頼み教えてもらっている。
「ママね、あぶないっていうの。アズがいたくなるのやだって。だからがんばる」
「そっか。なら一緒に頑張ってエニシに褒めてもらわなきゃね」
「うん!」
頑張って身を守り、もっと頑張ってママを守るのだとエルに教えてもらいながら頑張った。
だからこそ連れていってもらえず、置いていかれたと知った時悔しかった。
朝からいないのは知っていたが、妹たちの世話でいないだけだと思っていたのだ。
パパたちも何も言わず、遊んでいればその内会えると待っていたのだ。
なのにーー
「あ、アズくん。エニシくん帰ってきてるみたよ。会いに行かなくていいの?」
「え?」
そこで初めて出かけていたことを知り、自分は置いていかれていたのだと気付いた。
頑張ったのに。
いつもなら言ってくれるのに。
今度はママを手伝って頑張ったねと褒めてもらおうと思ったのに。
悔しくて、悲しくて、拗ねてうずくまっていればどうしたのかと近づいてくる縁に素直になれなかった。
部屋でゴロゴロしていたルーにも腹が立ち、アズのママなのにと八つ当たりした。
ルーばかりずるいと。
「アズおいてった!ママ、アズおいてった!」
「アズがんばったもん!がんばってまほうもおぼえたもん!アズもママとがんばれるもん!」
頑張ったねと撫でてもらおうと思ったのに。
最近は妹たちの世話ばかりで、でも自分はお兄ちゃんなのだからと我慢していたのに。
「……アズも…ママにほめてもらうんだもん」
我慢出来ずにそう言えば、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「今度はアズにも手伝ってもらいますね。一緒にやってくれますか?」
ちゃんと分かってくれた。
大好きなママの手に頭を撫でられ嬉しかった。
「ママだいすき」
「私もアズが大好きですよ」
嬉しい。
頑張ってよかった。
「今日はアズの好きなことをしましょう。絵本でも読みますか?」
「あのね。えほんとおひるね」
やりたいことを言えば笑って頷いてくれた。
伸ばされた手に抱きつけば膝に乗せられ、お気に入りの絵本を読んでくれる。
その後はくっついてお昼寝をし、お風呂も一緒に入った。
「アズ、気付いてあげられなくてごめんね。またママのダメなところがあったら言って下さいね」
ダメなところ?
なんのことか分からなかった。
「アズに寂しい想いをさせてしまったでしょ?アズなら大丈夫だと思ってた私が悪かったです。だから今度からは言って下さい。あれがしたいとか、もっとかまってとか、アズが甘えてくれると私は嬉しいです」
「いいの?ママおこらない?」
友達のママが怒っているのを見た。
お兄ちゃんなのだから我慢しなさいと、我儘ばかり言うなと怒られているのを見て我慢していた。
アズにはママしかいないから。
大好きなママに嫌われたくなかったから。
「怒りませんよ。全部叶えてあげられるかは分かりませんが、出来ないことはちゃんと言いますから。私が出来ることでアズが喜ぶことなら何でもしますよ」
ママにぎゅってしてもらうのが好き。
ママにすごいねって頭を撫でてもらうのが好き。
ママが大好きって言ってくれるのが嬉しい。
自分は本当はママの子じゃないけど、妹たちがいてもママはアズのことが大好きだと言ってくれる。
「アズね、ママとあそびたい。ママとまたごはんつくりたい。いっしょにねたい。ママとおでかけしたい」
「いいですよ。少しずつ一緒にしていきましょう」
大好き、大好き、大好き。
ママが大好き。
ぎゅっと抱きつけば背を撫で抱きしめてくれる。
「アズ、ママとずーーっといっしょにいる」
「それならママはずっと寂しくないですね。ありがとうアズ」
えへへ。
ふとそう尋ねてきた兄にきょとんとした。
縁に買われてから早数年。
もうアズの中ではママは縁しかいなかった。
「ううん」
言われた言葉はまだ覚えているが、顔はおろかどんな人だったかも思い出せない。
ホッとしたように息をつくエルに、覚えていないのかと責められているわけではないと分かった。
「ごめんね。オレ人に教えるってしたことがなくて分かりづらいよね」
こうして魔法を習い始めて数週間。
確かにエルの教え方は縁と違って分かりづらいが、それでも頑張って教えてくれようとしているのが分かるためアズも頑張っていた。
「アズがやりたいっていったもん」
言い出したのは自分。
以前ルーの所に家を建てに行くとなった時、危ないからと置いていかれそうになったが離れたくないと我儘を言って連れていってもらった。
自分のことを心配してくれていたのは分かる。
だからこそ何も出来ない自分が腹立たしかった。
パパたちのように力もなく、身体もまだ小さい自分が出来ることは少ないが幼くても自分は魔法を使うことが出来る。
手伝うにはまだまだだが、せめて連れていってもらっても困らせないようにしたかった。
だからこそまだ兄とは呼べないが、同じ魔族であるエルに頼み教えてもらっている。
「ママね、あぶないっていうの。アズがいたくなるのやだって。だからがんばる」
「そっか。なら一緒に頑張ってエニシに褒めてもらわなきゃね」
「うん!」
頑張って身を守り、もっと頑張ってママを守るのだとエルに教えてもらいながら頑張った。
だからこそ連れていってもらえず、置いていかれたと知った時悔しかった。
朝からいないのは知っていたが、妹たちの世話でいないだけだと思っていたのだ。
パパたちも何も言わず、遊んでいればその内会えると待っていたのだ。
なのにーー
「あ、アズくん。エニシくん帰ってきてるみたよ。会いに行かなくていいの?」
「え?」
そこで初めて出かけていたことを知り、自分は置いていかれていたのだと気付いた。
頑張ったのに。
いつもなら言ってくれるのに。
今度はママを手伝って頑張ったねと褒めてもらおうと思ったのに。
悔しくて、悲しくて、拗ねてうずくまっていればどうしたのかと近づいてくる縁に素直になれなかった。
部屋でゴロゴロしていたルーにも腹が立ち、アズのママなのにと八つ当たりした。
ルーばかりずるいと。
「アズおいてった!ママ、アズおいてった!」
「アズがんばったもん!がんばってまほうもおぼえたもん!アズもママとがんばれるもん!」
頑張ったねと撫でてもらおうと思ったのに。
最近は妹たちの世話ばかりで、でも自分はお兄ちゃんなのだからと我慢していたのに。
「……アズも…ママにほめてもらうんだもん」
我慢出来ずにそう言えば、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「今度はアズにも手伝ってもらいますね。一緒にやってくれますか?」
ちゃんと分かってくれた。
大好きなママの手に頭を撫でられ嬉しかった。
「ママだいすき」
「私もアズが大好きですよ」
嬉しい。
頑張ってよかった。
「今日はアズの好きなことをしましょう。絵本でも読みますか?」
「あのね。えほんとおひるね」
やりたいことを言えば笑って頷いてくれた。
伸ばされた手に抱きつけば膝に乗せられ、お気に入りの絵本を読んでくれる。
その後はくっついてお昼寝をし、お風呂も一緒に入った。
「アズ、気付いてあげられなくてごめんね。またママのダメなところがあったら言って下さいね」
ダメなところ?
なんのことか分からなかった。
「アズに寂しい想いをさせてしまったでしょ?アズなら大丈夫だと思ってた私が悪かったです。だから今度からは言って下さい。あれがしたいとか、もっとかまってとか、アズが甘えてくれると私は嬉しいです」
「いいの?ママおこらない?」
友達のママが怒っているのを見た。
お兄ちゃんなのだから我慢しなさいと、我儘ばかり言うなと怒られているのを見て我慢していた。
アズにはママしかいないから。
大好きなママに嫌われたくなかったから。
「怒りませんよ。全部叶えてあげられるかは分かりませんが、出来ないことはちゃんと言いますから。私が出来ることでアズが喜ぶことなら何でもしますよ」
ママにぎゅってしてもらうのが好き。
ママにすごいねって頭を撫でてもらうのが好き。
ママが大好きって言ってくれるのが嬉しい。
自分は本当はママの子じゃないけど、妹たちがいてもママはアズのことが大好きだと言ってくれる。
「アズね、ママとあそびたい。ママとまたごはんつくりたい。いっしょにねたい。ママとおでかけしたい」
「いいですよ。少しずつ一緒にしていきましょう」
大好き、大好き、大好き。
ママが大好き。
ぎゅっと抱きつけば背を撫で抱きしめてくれる。
「アズ、ママとずーーっといっしょにいる」
「それならママはずっと寂しくないですね。ありがとうアズ」
えへへ。
50
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる