二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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どこにでもいるもの

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 「今すぐその子から離れなさい。でなければーー」

 「じゃなきゃなんだよ。あぁ、お前が代わりに相手してくれるってか?あははははは」

 「マジで?あいつ男だろ?」

 「あんだけキレイな顔ならイケんじゃね?」

 「マジかよ!お前そんな趣味あんのかよ。がははははは」

 不快感に吐き気がする。
 未だ地面に震え蹲る少女の姿を確認しながらも、そちらに意識を向けさせないよう気持ち悪い笑みを浮かべる男たちを睨みつける。
 マーガレットたちが来るまであと数分。
 これ以上あの少女に手を触れることは許さない。


 「今日はアズの好きなドリアにでもしましょうか」

 ギルドへ来たついでにとエルと夕飯の材料を買いに来ていた。
 アズが喜ぶと張り切るエルに笑いかけながら歩いている時、ふと目を向けた細い脇道に何か動くものが目に入った。
 バタバタと揺れるそれが人の足だと気付いたのは、その先に下卑た笑いを浮かべる男たちの姿が見えたからだ。

 「エル、マーガレットさんたちを連れてきて下さい」

 「え?」

 「早く!」

 「う、うん」

 エルにそう指示すると、急いで男たちが消えた脇道に駆けていく。
 市場とは違い狭く薄暗いその道は人を連れ込むには格好の場所だろう。

 「ガキにしてはいい胸してんじゃねぇか」 

 「あぁ?突っ込めればそれでいいだろ?この歳ならまだヤッたことなさそうだしなぁ」

 「やっぱヤルならガキだな。締まり具合がちげぇよ」

 聞くに耐えない男たちの言葉に怒りが込み上げてくる。
 黙れとばかりに男たちの前に姿を出せば、一瞬驚いた後あの気持ち悪い顔を見せる。

 「おうおう。どうした坊主?」

 「はははははっ迷子かぁ?それともお前も混ぜてほしいってか?まさかーー」

 「離れなさい」

 「ああ?」

 「今すぐその子から離れなさい」

 縁の言葉にそれまで少女を押さえつけていた男たちもこちらを見る。
 何が楽しいのかニヤニヤと笑う男たちが気持ち悪くて仕方がない。

 「今すぐその子から離れなさい。でなければーー」

 「じゃなきゃなんだよ。あぁ、お前が代わりに相手してくれるってか?あはははは」

 こういう輩はこちらが何を言っても聞きはしない。
 前世でも嫌というほど見てきた。
 ならば相手をするほど無駄であり、抵抗される前に魔法で縛り上げると騒ぐ口も塞いでやる。

 「この子は貴方たちの奴隷でもなければ、性欲処理するための道具でもない。その汚い手で触れることは許しません」

 暴れる男たちを見下ろしながらも、震える少女の目に男たちが入らないよう背に隠す。
 出来れば拘束を解いてやりたいが、先程までの出来事に同じ男である縁が触れるのは少女も恐怖でしかないだろうと触れることはせずマーガレットたちが来るのを待つ。

 「ーーエニシっ!!」

 それほど待つことなく走ってきてくれたマーガレットたちに息をつくと、何があったか簡単に説明し少女の保護と男たちを衛兵たちに差し渡す。

 「アンタが無事でよかったよ。いきなり一緒に来てくれなんて言われて何かあったのか心配したんだからね」

 「すみませんでした。説明している暇がなくて。その後の対処も私には難しかったので呼んできてもらった方が早いかと」

 怪しい男たちを捕まえるだけならば縁たちでも簡単に出来るが、衛兵たちへの対応に加え襲われていた少女への対応が難しいと判断したのだ。
 少女がどれほどの精神的ショックを受けたか分からず、下手に縁が触れるより同性であるマーガレットの方が少女も安心出来るだろう。

 「あぁ、エニシくんを責めているんじゃないよ。むしろ早い対処に感謝しているくらいだ。ありがとう。少女もそうだがエニシくんに怪我がなくてよかったよ」

 優しく頭を撫でてくれるジンに笑いつつ、心配してくれたマーガレットにも感謝する。

 「あの子は大丈夫ですか?」

 「アンタがギリギリ間に合ってくれたからね。最悪なことにはならずに済んださ。ただ……」

 「ただ?」

 歯切れの悪いマーガレットにどうしたのかと尋ねれば、言いにくかったのかジンが代わりに教えてくれた。

 「まだ混乱しているのもあると思うけど人を怖がってしまってね。誰も近づけないんだよ」

 「家族を探してやろうにも喋ってくれなくてね。震えて部屋の隅に蹲っているんだよ」

 攫われたきたならば家族も探しているはずだがそんな声はなく、本人に聞こうにも怖がって何も話してくれないらしい。

 「身なりはそれなりにいいからどこぞの貴族の子かもしれないんだけどね」

 「事を荒げたくなく捜索届けも出ていないと」

 「だね。こんなことがあったと周りに知られたら家もそうだが、あの子も今後どこぞに嫁ぐなんて無理だろうね」

 とりあえずマーガレットたちも内々に探してくれているようだ。

 「…………エル、繋を連れてきてくれますか?」

 「ん?今?」

 頷けばエルは何も言わず外へ向かった。

 「見つかるまで何もしないというわけにはいかないでしょう。出来るか分かりませんが、可能性があるならば試してみましょう」

 すぐ見つかればそれで構わないが、長引くようであれば少女の身体も心配だ。 
 同性であるマーガレットでさえ近づけないとなれば後はーー

 「子どもの可能性にかけましょう」

 もしかしたら大丈夫かもしれないと繋が来るのを待つのであった。
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