215 / 475
悪い夢
しおりを挟む
泣き疲れ眠った少女を抱き上げると起こさないよう静かにベッドに寝かせる。
「寝たようだね。その子の両親が来たようだから一緒に来てくれるかい?」
漸く見つかったようで、詳しい説明をするためにも縁が呼ばれた。
「「ありがとうございましたっ」」
部屋に入り椅子に腰掛けるなりそう言って頭を下げられた。
「どうか頭を上げて下さい。娘さんを助けられて良かったです」
早く無事を確かめたいだろうにこうして頭を下げてくる2人に縁も申し訳なくなる。
「大丈夫、今は泣き疲れて眠っています」
「本当にありがとうございました。私共もまさかこんなことになるとは……」
貴族ならば身代金目的の誘拐も考えられただろうが、今回のことは誰も予想出来ていなかったに違いない。
縁が間に合い最悪なことにならずには済んだが、今回のことで本人も今まで以上に気をつけるだろう。
「どうか今回のことは娘さんには話さないであげて下さい」
「「え?」」
本人の状態にもよるが話しを蒸し返すことによって恐怖まで一緒に蘇ってしまうかもしれない。
「今後気をつけることは必要ですが、本人が話しをしたいと言うまで触れないであげて下さい」
「ですが……」
忘れろというわけではない。
本人がそうしたいと思えばそれでもいいが、あの怯えようではすぐに元通りとは難しいだろう。
「可哀想にと気をつかうのではなく、もう大丈夫だと安心させてあげて下さい」
「………安心」
不安そうな両親の表情に、縁は膝に乗る繋をぎゅっと抱きしめてやる。
「もしかしたら恐怖で泣き出すかもしれない。その時はお母様がこうして抱きしめてあげて下さい。必ずそばにいると、教えてあげて下さい」
涙を流しながらも頷く母親に微笑むと父親に目を向ける。
「お父様はもう大丈夫だと背を撫でてあげて下さい。怖いものは父さんが全て追い払うと」
「ーーはい、必ず」
「今まで愛し大切に育ててきた御二人だからこそ意味があり信じられるんです」
腫れ物に触るように距離を置くのではなく、何があっても側にいるという言葉が力になる。
いくら身体の傷を治そうが心の傷は本人にしか治せない。
だがその手助けは出来る。
「もしそれでも無理そうなら話しを聞いてあげて下さい。大丈夫、最悪なことにはなっていません。将来のことで不安はあれど機に病むことは何もない」
傷物と罵られることも蔑まれることもない。
「はい」
「ありがとうございます」
深く頭を下げてる2人に縁も頭を下げる。
「私こそ偉そうに申し訳ありませんでした。同じ子を持つ親として娘さんが元気になることを祈っています」
心配だろう2人を部屋へ案内すると静かに後にするのだった。
「アンタは本当に何者なんだい?」
はて?
部屋に戻った途端そう言われ何事かと思った。
「極々普通の一般人ですね」
「最近親になったばかりのアンタがよくあんなこと言えたもんだね」
うーーーーん。どうしたものか。
確かに中身は若者ではない。
「言い方は悪いけどマーガレットも感謝してるんだよ。それにしても繋ちゃんの魔法はすごいね」
褒められて嬉しかったのかえっへんと胸を張っている。
親バカではあるが可愛い。
「か、可愛いっ」
「ヤバいっ」
こちらはじじバカならぬばばバカである。
「少しずつですが覚えさせているんです。本人に自覚はありませんが」
魔法を教えると言って教えているわけではない。
普段の生活の中で使うことが出来るものをこうしたら出来ると教えているのだ。
高い高い然り、いたいのいたいのとんでけ然り。
「こりゃ将来が楽しみだね」
「アル爺も言ってました。未だに嫌われてますけど」
あれ以来顔を合わせても警戒して近寄ろうとはしないのだ。
「ありゃ自業自得さ」
「そうだよ。いい気味だ」
そんなアル爺の落ち込む姿を見るのが楽しいのかマーガレットたちは一切フォローしようとはしない。
縁も頑張ってはみたのだが、話しを聞き興奮したアル爺の姿を見て更に敵対意識が出来たらしい。
逆にランには凄く懐き、会う度嬉しそうに遊んでもらっている。
「そういえば宰相様に今度お城に来るように言われたんですけど……」
「けど?」
「どうやら用があるのは隊長さんらしくて。私……怒られるんですかね?」
特に何かしたというわけではないが、縁本人がしてないと思っているだけで無意識に何かしている可能性もある。
行ってみないことには分からないのだが、念のため何かあれば聞いておきたい。
「隊長?…ってあの筋肉バカかい?」
やはり知り合いのようだ。
それにしてもこの国の兵隊長を筋肉バカとは酷い言いようである。
「たぶんその方だと思います。本人も会議や書類仕事が苦手だと言っていたので」
副隊長にも注意されていたので間違いないだろう。
「あのバカがアンタに用って……今度は何をやらかしたんだい?」
本人には自覚がないため何とも言えない。
「いや、あのバカのことだからきっとそんな深い理由はないと思うよ」
ヤバい。
縁が名前を聞き忘れたばかりに彼の呼び名がバカになってしまっている!!
「まぁ、何か言われたら私らに言いな。代わりに説教してやるから」
何故か縁ではなく、隊長が怒られるこになってしまっているのだった。
「寝たようだね。その子の両親が来たようだから一緒に来てくれるかい?」
漸く見つかったようで、詳しい説明をするためにも縁が呼ばれた。
「「ありがとうございましたっ」」
部屋に入り椅子に腰掛けるなりそう言って頭を下げられた。
「どうか頭を上げて下さい。娘さんを助けられて良かったです」
早く無事を確かめたいだろうにこうして頭を下げてくる2人に縁も申し訳なくなる。
「大丈夫、今は泣き疲れて眠っています」
「本当にありがとうございました。私共もまさかこんなことになるとは……」
貴族ならば身代金目的の誘拐も考えられただろうが、今回のことは誰も予想出来ていなかったに違いない。
縁が間に合い最悪なことにならずには済んだが、今回のことで本人も今まで以上に気をつけるだろう。
「どうか今回のことは娘さんには話さないであげて下さい」
「「え?」」
本人の状態にもよるが話しを蒸し返すことによって恐怖まで一緒に蘇ってしまうかもしれない。
「今後気をつけることは必要ですが、本人が話しをしたいと言うまで触れないであげて下さい」
「ですが……」
忘れろというわけではない。
本人がそうしたいと思えばそれでもいいが、あの怯えようではすぐに元通りとは難しいだろう。
「可哀想にと気をつかうのではなく、もう大丈夫だと安心させてあげて下さい」
「………安心」
不安そうな両親の表情に、縁は膝に乗る繋をぎゅっと抱きしめてやる。
「もしかしたら恐怖で泣き出すかもしれない。その時はお母様がこうして抱きしめてあげて下さい。必ずそばにいると、教えてあげて下さい」
涙を流しながらも頷く母親に微笑むと父親に目を向ける。
「お父様はもう大丈夫だと背を撫でてあげて下さい。怖いものは父さんが全て追い払うと」
「ーーはい、必ず」
「今まで愛し大切に育ててきた御二人だからこそ意味があり信じられるんです」
腫れ物に触るように距離を置くのではなく、何があっても側にいるという言葉が力になる。
いくら身体の傷を治そうが心の傷は本人にしか治せない。
だがその手助けは出来る。
「もしそれでも無理そうなら話しを聞いてあげて下さい。大丈夫、最悪なことにはなっていません。将来のことで不安はあれど機に病むことは何もない」
傷物と罵られることも蔑まれることもない。
「はい」
「ありがとうございます」
深く頭を下げてる2人に縁も頭を下げる。
「私こそ偉そうに申し訳ありませんでした。同じ子を持つ親として娘さんが元気になることを祈っています」
心配だろう2人を部屋へ案内すると静かに後にするのだった。
「アンタは本当に何者なんだい?」
はて?
部屋に戻った途端そう言われ何事かと思った。
「極々普通の一般人ですね」
「最近親になったばかりのアンタがよくあんなこと言えたもんだね」
うーーーーん。どうしたものか。
確かに中身は若者ではない。
「言い方は悪いけどマーガレットも感謝してるんだよ。それにしても繋ちゃんの魔法はすごいね」
褒められて嬉しかったのかえっへんと胸を張っている。
親バカではあるが可愛い。
「か、可愛いっ」
「ヤバいっ」
こちらはじじバカならぬばばバカである。
「少しずつですが覚えさせているんです。本人に自覚はありませんが」
魔法を教えると言って教えているわけではない。
普段の生活の中で使うことが出来るものをこうしたら出来ると教えているのだ。
高い高い然り、いたいのいたいのとんでけ然り。
「こりゃ将来が楽しみだね」
「アル爺も言ってました。未だに嫌われてますけど」
あれ以来顔を合わせても警戒して近寄ろうとはしないのだ。
「ありゃ自業自得さ」
「そうだよ。いい気味だ」
そんなアル爺の落ち込む姿を見るのが楽しいのかマーガレットたちは一切フォローしようとはしない。
縁も頑張ってはみたのだが、話しを聞き興奮したアル爺の姿を見て更に敵対意識が出来たらしい。
逆にランには凄く懐き、会う度嬉しそうに遊んでもらっている。
「そういえば宰相様に今度お城に来るように言われたんですけど……」
「けど?」
「どうやら用があるのは隊長さんらしくて。私……怒られるんですかね?」
特に何かしたというわけではないが、縁本人がしてないと思っているだけで無意識に何かしている可能性もある。
行ってみないことには分からないのだが、念のため何かあれば聞いておきたい。
「隊長?…ってあの筋肉バカかい?」
やはり知り合いのようだ。
それにしてもこの国の兵隊長を筋肉バカとは酷い言いようである。
「たぶんその方だと思います。本人も会議や書類仕事が苦手だと言っていたので」
副隊長にも注意されていたので間違いないだろう。
「あのバカがアンタに用って……今度は何をやらかしたんだい?」
本人には自覚がないため何とも言えない。
「いや、あのバカのことだからきっとそんな深い理由はないと思うよ」
ヤバい。
縁が名前を聞き忘れたばかりに彼の呼び名がバカになってしまっている!!
「まぁ、何か言われたら私らに言いな。代わりに説教してやるから」
何故か縁ではなく、隊長が怒られるこになってしまっているのだった。
42
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる