二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
217 / 475

失言

しおりを挟む
「こんなに副隊長さんが疲れるまで頑張っても何も知らない上の方々は隊長さんを評価するだけで副隊長は評価されないんですよ」

 そんなつもりはなかった。
 ただ苦手な書類仕事をフレックが代わりにやってくれるのが当たり前になってしまっていたのだ。

 「その分戦いでは役目を果たして下さいよ」

 そう言い文句を言いながらもやってくれる彼に甘えていた。
 だがそれを知っているのは仲間内だけであって、確かに上の連中は知らないだろう。

 「貴方の仕事だからやりなさいということではありません。向き不向きは誰でもありますがフレックさんにやってもらうにしても全てを任せるのではなく、自分なりに出来る範囲で手伝えばいいんです。分からなかれば聞けばいいですし、1人でやるより2人でやる方が捗るでしょう?」

 まさか年下である少年に説教されるとは思わなかったが、お前の仕事だからお前がやれと言うわけではなく、無理せず出来る範囲でいいと言われ納得出来た。

 「信頼しているからこそお互い任せ、任せられるお2人は素晴らしいです。ですがそれを見て育った他の兵士さんたちはどうなるでしょう?」

 どうなる?

 「もし彼らが隊長にまで登りつめた時、彼らもやりたくない仕事は誰かに任せておけばいい、と考える可能性はありませんか?」

 「「…………」」

 耳が痛かった。
 黙り込むマルズスたちにエニシも苦笑いしている。

 「可能性の話しです。ここにいる方たちはお2人のことをちゃんと理解していると思いますよ」

 仕事仲間とは言え、1日の大半を一緒に過ごす彼らはマルズスにとって家族のようなものだった。
 だからこそ副隊長に叱られる隊長という普通なら情けないだろう姿も見せられた。

 「これは私の考えであって提案なだけです。けど頑張れと応援されるより一緒に頑張ろうと言われる方が誰だって嬉しいでしょう?」

 「………そうですね」

 苦労は分かち合う。
 つまりはそういうことだろう。
 互いが互いに出来ることを補うということは出来ないことを全て任せるということではない。
 出来ないにも出来ないなりに頑張り、それでも出来なかった時に手を借り支え合うこと。

 「そもそも作戦を立てるのが好きではないと言いますが、隊長さんだって戦う時にこいつならここを任せられるとか考えるぐらいはするでしょう?」

 「そら当たり前だろ」

 どいつが何が得意であり、ここなら後は任せられるか判断するのは自分の役目なのだ。

 「作戦会議なんてその延長線上ですよ。こうすれば奇襲出来るとか考えるのではなく、彼らの才能をどうしたら活かせるのかと考えればいいんです」

 なるほど。
 こいつの能力なら出来る、あいつならこれが出来るからやらせてみると考えればそう難しくはない。
 誰が何を出来るか知っている自分だからこそ出来ることだ。

 「貴方が仲間ではないことが悔やまれますね」

 「だよな~。やっぱ入らないか?」

 「お断りします」

 あまりの笑顔に交渉の余地はないだろう。
 それでももしかしたらと今後少しずつ交渉していこうとフレックと2人頷き合うのだった。

 「というか何でフレックは名前で、俺は隊長さんなんだよ」

 「呼びたくないんじゃないですか?」

 そんなわけあるか!そんなわけ……
 自信がなくなってきた。

 「いえ単純に隊長さんの方が呼びやすかっただけなんですけど。それにここの皆さんも隊長って呼んでましたし」

 「ならフレックだって副隊長さんでいいじゃねぇか」

 「ちょっと、私を巻き込まないで下さいよ。エニシさん気にしなくていいですからね。今後も私のことはフレックと気軽に呼んで下さい」

 おい、コラ!
 自慢気に笑うフレックに腹が立ち睨みつけるがどこ吹く風だ。
 
 「分かりました。なら今後はマルズス隊長とーー」

 「だから隊長から放れろよ!」

 隊長呼びが気にくわないのに何故そこでそうなるのか。

 「私なんかが名前を呼んでいいものですかね?」

 「本人がいいつってんだからいいだろ。ってかフレックとかエリックはよくて何で俺がダメなんだよ」

 王子であるエリックでさえ親し気に名前で呼んでいたのに、何故自分はダメなのか。

 「マルズスって若干言いにくいんですよね。こう………マル…マー…いや、マス………マルスさんでは?」

 「………………………いいぞ」

 名案!とばかりに提案されたがなぜ短縮されたのか。
 それでもその方が呼びやすいというなら仕方がないが、とりあえず隣で爆笑しているフレックは後で絶対殴る。

 「これからよろしくお願いします。で、剣なんですが魔道具に改造してしまえばいいのでは?」

 説教……もとい話しをしながらもちゃんと考えてくれていたらしい。

 「で、使う時にでも嵌め込むようなものにしてもらえば普段は普通に使えると思うのですが」

 ……いいな。
 詳しく話すためにもフレックと協力して仕事を素早く終わらせるのだった。




 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...