二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
247 / 475

感謝します

しおりを挟む
 「ここは一つ、殴り合いの喧嘩でもしてみますか?」

 「「「「やめろ!」」」」

 その場にいた全員に止められた。
 まさかの喧嘩を売ってきた本人まで。

 「悪かった。俺も言い過ぎたから無茶はやめろ」

 本当に申し訳ないと謝る隊長の姿に、これ以上怒るのも大人気ないと許してやる。
 レオナルドとは仲直り(?)出来た縁だったが、マルズス達とは話せていなかったことを言えば引き摺られるように訓練場に連れて来られたのだ。
 誰にって?意外にもレオナルドにだ。

 「君は何も悪いことをしたわけではないのだから私達に変に気を使うことはない。子どものことは……なんだ、驚きはしたがそれだけだ。あの子はとてもいい子で、君も立派に母親をしているのだからそれを卑下することはない」

 「………私はとてもいい友人を持てたようですね」

 「そうだろ。感謝としてもっとアイスとやらを献上してきてもいいぞ」

 「お腹を壊しそうなのでダメです」

 「…………」

 彼のことだ。
 食事の代わりにアイスばかり食べかねないためダメだと言えば、図星なのかそっと顔を逸らすのだった。
 そして連れてこられた訓練場では今日も今日とて一心不乱に身体を鍛える隊長の姿に縁は無意識にレオナルドの背後に隠れてしまった。
 だがそれを見てもレオナルドは何も言わず、普段通り挨拶すると預けていたラックを受け取っていた。

 「……あー、なんだその、アイツはどうしてる?」

 「アイツとは?」

 大きなレオナルドの背に隠れながらも話しを聞いていれば、隊長には珍しく気まずそうに顔を逸らしながらも縁の様子を尋ねてくる。

 「エニシだよ。なんだ……その、この前は驚いちまって何も言えなかったからな。変な態度とっても悪ぃかと思って会ってないんだが……」

 「それならーーー」

 「あいつ本当は女だったんだな。知らなかったとは言え今まで悪かったなと」

 「「……………」」

 は?
 あまりのことに何も言えなかった。

 「前から綺麗な面してんなとは思ってたけどな。まぁ男にしては綺麗過ぎるよな。ガキだから小せぇのかとも思ってたし、女にしては胸もなさすぎだろ」

 これは………喧嘩を売られているのだろうか?
 胸がないのは当たり前だ、縁は男なのだから。
 確かにはっきりと自分の性別を口に出したわけではないが、的外れ過ぎる勘違いに驚く。

 「言われてみりゃ身体もガリガリだったしな。ありゃちゃんと飯食ってんのか?抱えた時は軽過ぎて驚いたぞ」

 私は貴方の勘違いに驚いてます。
 大体彼に比べれば大概の一般人は皆ガリガリと言えるのではないだろうか。
 そしていい加減拉致同然に抱えていくのはおかしいと気がついてほしい。
 流石のレオナルドもあまりの勘違いに言葉をなくしており、これはどうしたものかと思っていればポンと優しく肩に手を置かれた。

 「………フレックさん」

 「あ?フレック?ってエニシ、お前いたのかよ!」

 思わず声を出してしまったが、そんな縁にフレックは微笑むと頭を下げられた。

 「え?あの?……」

 「アルバトロス様に聞きました。確かに驚きはしましたけどそれで貴方を遠ざけようだなんて思っていません。もしこの前の私たちの態度を気にしているようなのであれば謝りますので許して下さい」

 フレックが謝る理由が分からない。
 騙していたというわけではないが、縁の少々特殊な事情を普通なら受け入れられる人は少ないだろう。
 レオナルドは受け入れてくれたが、それを彼らにも強要しようとは思っていなかった。
 
 「優しい貴方は私たちのことを気にして距離をおこうとしてくれたのかもしれませんが、貴方のおかげで私は今こうして笑って毎日過ごせているんです。そのことに感謝こそすれ、気持ち悪いなどと思うことなどありえません」
 
 その笑顔は今まで見てきたフレックのもので、その中に縁に対する不快感などは見えなかった。
 泣きそうになりながらも笑ってありがとうございますと言えばフレックもまた笑い返してくれるのだった。
 
 「おい、俺のことを忘れんじゃねぇよ。どういうこった?」

 あ、忘れてた。
 勘違いしている隊長にも説明すれば、またもやかなり驚かれたが気にすんなと力強く背中を叩かれ、あまりの強さに咽せ皆に心配された。

 「何だよ、俺はてっきり女に乱暴したのかと思って焦っちまったぜ!」

 「男性だろうと貴方の行動は褒めたられたものではありませんけどね」

 確かに。
 小脇に抱えられ運ばれたことは数知れず、力強く叩かれ咽せたことも何度もある。
 とは言え、こうして受け入れてくれたことが何より嬉しい。

 「お前はもっと太れ、肉をつけろ!」

 知り合いのおばちゃんみたいなことを言い出した。
 フレックが呆れたように止めようとしてくれるが、鍛えることが大好きおじさんは止まらない。

 「そんなヒョロヒョロだから俺だって勘違いしちまうんだよ。身長は無理そうなんだから他にーー」

 「私はもしかして遠回しに馬鹿にされているんですかね?」

 すいませんと謝ってくるフレックにそんなことはないと思うが、面と向かって言われるのは何とも堪える。

 「これでも男だと証明するためにも、ここは一つ殴り合いの喧嘩でもしてみますか?」

 体格も腕力も違えど縁には魔法があるため勝機はある。
 なればやってみるかと言えば、その場にいた全員に止められるのであった。
 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...