254 / 475
登場
しおりを挟む
「匂いで辿り着くって犬みたいで複雑なんだけど」
そう言いながら漸く辿り着いたエルたちは言葉通り微妙な顔をしていたが、頑張って探してくれていたのにのんびり魚を食べていたのは流石に申し訳なかったと思い食べようとしていた魚を渡せば素直に受け取っていた。
「……えっと、みなさんもお疲れ様でした。ご心配おかけしてすいません。あの、そこでとった魚なんですけどよければどうぞ」
ガツガツと頬張っているリルの様子から安全面でも問題ないだろう。
「なんとも拍子抜けですが無事で良かったです。遠くからいい匂いがずっとしてきていて気になっていたんです。一ついただいても?」
もう慣れたとばかりにエニシの奇行を受け入れたフレックが手を伸ばしてきたので醤油をたらしたものを渡した。
「これは……美味しいですね。きのこもよかったですが焼いた魚にもここまで合うとは思っていませんでした」
かなり気に入ってくれたようで、量もあったためおかわりを差し出せば喜んで受け取ってくれるのだった。
「あ、そう言えば言い忘れてましたがそちらに大きい扉があったんですが入っても大丈夫ですかね?」
「「「「「えっ!?」」」」」
縁が指差す方向には明らかに大物がいますと言わんばかりの豪華な大きい扉があった。
フレックに動くなと言われていたため気になってはいたのだが大人しくみんなが来るのを待っていたのだ。
「明らかにボスがいますね。しかも階層から言ってもそれなりの強さでしょう………よく落ち着いて待っていられましたね」
「?、そう言われたので」
迷子になった時はその場から動かないの鉄則だ。
迷子というには語弊があるかもしれないが、勝手に開けて駆けつけてくれるだろうフレックたちに迷惑をかけても申し訳ないと思ったのだ。
ちょうど良くリルが魚を見つけてくれたこともあり暇を持て余すことなくお土産も手に入れることができた。
「………エニシさんはやはりエニシさんでしたね。驚かされてばかりですが貴方といると妙に落ち着くというか何というか……一人慌ててるのがバカらしくなってきます」
それは褒められているのだろうか?
縁の場合知らないことが多すぎて危機感が薄いというのもあるが、ある程度自分でも何とか出来ると自覚しているのもあったりする。
「では腹ごしらえも済んだところで先に進んでみましょうか。この先確実にボス級が出てくるでしょう。お2人は私から決して離れないように」
「はい」
「オレ戦えるんだけど」
エルが不服そうではあったが、今回縁たちは守られることが仕事のため諦めてもらうしかない。
ギギギっと重い音を立てながら開かれた扉に何が出るのかとドキドキワクワクと見守る。
「なんだ?妙に静かーーーっ!出ました!」
暗く物音一つしなかった室内にもしかして何もいないのでは?と思っていれば、突如として部屋に明かりが灯り眩しさに目を閉じた。
「総員戦闘態勢!油断するなっ」
何事かと未だ理解出来ていない縁をよそに隊員たちは剣を構えそれを取り囲んでいく。
「……馬?でも……何か変……?」
中央に位置するその生き物は、見た目は馬なのだがその姿はブレて見えるというか、そのまま言えば水で出来ているように見える。
「……水で出来た馬とかいるんですねぇ」
「いや、普通いないからね。ダンジョンだからだよ」
やはり普通ではなかったのかとまた一つ学んだ縁だが、隊員たちも水で出来た馬ともなれば普段の力が発揮出来ずかなり苦戦しているようだ。
切っても切ってもすぐに元通りに身体がくっついてしまい、とどめどころか致命傷を与えることも出来ない。
縁たちを護りながらも隊員たちの戦闘を見守るフレックも厳しい表情だ。
「ここは一度態勢を立て直した方がいいかもしれませんね。申し訳ありませんがエニシさんたちは先にーー」
「よければ試したいことがあるんですがダメですか?」
このまま見守っていてもいいのだが、あの様子では難しいだろうとフレックに提案すれば周りを警戒しながらも頷いてくれた。
縁の突拍子もない発言にも慣れてきたようだ。
「予行練習というのはどうでしょう?」
「予行練習?」
「それの」
フレックか構える剣を指差せば、数秒考えた後面白そうに笑うフレックが隊員たちを下がらせた。
差し出された剣に魔力を流せば、楽しそうにそれを構え敵に斬りかかっていく。
フレックが戦う姿は初めて見たが、副隊長というだけあって見事だった。
「なにあの剣。すっごい冷気なんだけど」
「相手が水なので凍らせれば切れるかなと」
他にも隊員たちに風や炎、雷などの魔法を剣にかけてやれば皆興奮したように敵に向かっていくのだった。
そう、予行練習とは隊長のように魔剣が手に入った時のための隊員による実地訓練。
あれほど苦戦していたとは思えないほど呆気なく、途中から遊んでいたような気もしたが、皆楽しそうに敵を倒し終えると意気揚々とダンジョンを後にするのだった。
「実にいい経験でした。これほど戦闘で楽しいと思ったのは久しぶりです」
実にいい笑顔のフレックだった。
そう言いながら漸く辿り着いたエルたちは言葉通り微妙な顔をしていたが、頑張って探してくれていたのにのんびり魚を食べていたのは流石に申し訳なかったと思い食べようとしていた魚を渡せば素直に受け取っていた。
「……えっと、みなさんもお疲れ様でした。ご心配おかけしてすいません。あの、そこでとった魚なんですけどよければどうぞ」
ガツガツと頬張っているリルの様子から安全面でも問題ないだろう。
「なんとも拍子抜けですが無事で良かったです。遠くからいい匂いがずっとしてきていて気になっていたんです。一ついただいても?」
もう慣れたとばかりにエニシの奇行を受け入れたフレックが手を伸ばしてきたので醤油をたらしたものを渡した。
「これは……美味しいですね。きのこもよかったですが焼いた魚にもここまで合うとは思っていませんでした」
かなり気に入ってくれたようで、量もあったためおかわりを差し出せば喜んで受け取ってくれるのだった。
「あ、そう言えば言い忘れてましたがそちらに大きい扉があったんですが入っても大丈夫ですかね?」
「「「「「えっ!?」」」」」
縁が指差す方向には明らかに大物がいますと言わんばかりの豪華な大きい扉があった。
フレックに動くなと言われていたため気になってはいたのだが大人しくみんなが来るのを待っていたのだ。
「明らかにボスがいますね。しかも階層から言ってもそれなりの強さでしょう………よく落ち着いて待っていられましたね」
「?、そう言われたので」
迷子になった時はその場から動かないの鉄則だ。
迷子というには語弊があるかもしれないが、勝手に開けて駆けつけてくれるだろうフレックたちに迷惑をかけても申し訳ないと思ったのだ。
ちょうど良くリルが魚を見つけてくれたこともあり暇を持て余すことなくお土産も手に入れることができた。
「………エニシさんはやはりエニシさんでしたね。驚かされてばかりですが貴方といると妙に落ち着くというか何というか……一人慌ててるのがバカらしくなってきます」
それは褒められているのだろうか?
縁の場合知らないことが多すぎて危機感が薄いというのもあるが、ある程度自分でも何とか出来ると自覚しているのもあったりする。
「では腹ごしらえも済んだところで先に進んでみましょうか。この先確実にボス級が出てくるでしょう。お2人は私から決して離れないように」
「はい」
「オレ戦えるんだけど」
エルが不服そうではあったが、今回縁たちは守られることが仕事のため諦めてもらうしかない。
ギギギっと重い音を立てながら開かれた扉に何が出るのかとドキドキワクワクと見守る。
「なんだ?妙に静かーーーっ!出ました!」
暗く物音一つしなかった室内にもしかして何もいないのでは?と思っていれば、突如として部屋に明かりが灯り眩しさに目を閉じた。
「総員戦闘態勢!油断するなっ」
何事かと未だ理解出来ていない縁をよそに隊員たちは剣を構えそれを取り囲んでいく。
「……馬?でも……何か変……?」
中央に位置するその生き物は、見た目は馬なのだがその姿はブレて見えるというか、そのまま言えば水で出来ているように見える。
「……水で出来た馬とかいるんですねぇ」
「いや、普通いないからね。ダンジョンだからだよ」
やはり普通ではなかったのかとまた一つ学んだ縁だが、隊員たちも水で出来た馬ともなれば普段の力が発揮出来ずかなり苦戦しているようだ。
切っても切ってもすぐに元通りに身体がくっついてしまい、とどめどころか致命傷を与えることも出来ない。
縁たちを護りながらも隊員たちの戦闘を見守るフレックも厳しい表情だ。
「ここは一度態勢を立て直した方がいいかもしれませんね。申し訳ありませんがエニシさんたちは先にーー」
「よければ試したいことがあるんですがダメですか?」
このまま見守っていてもいいのだが、あの様子では難しいだろうとフレックに提案すれば周りを警戒しながらも頷いてくれた。
縁の突拍子もない発言にも慣れてきたようだ。
「予行練習というのはどうでしょう?」
「予行練習?」
「それの」
フレックか構える剣を指差せば、数秒考えた後面白そうに笑うフレックが隊員たちを下がらせた。
差し出された剣に魔力を流せば、楽しそうにそれを構え敵に斬りかかっていく。
フレックが戦う姿は初めて見たが、副隊長というだけあって見事だった。
「なにあの剣。すっごい冷気なんだけど」
「相手が水なので凍らせれば切れるかなと」
他にも隊員たちに風や炎、雷などの魔法を剣にかけてやれば皆興奮したように敵に向かっていくのだった。
そう、予行練習とは隊長のように魔剣が手に入った時のための隊員による実地訓練。
あれほど苦戦していたとは思えないほど呆気なく、途中から遊んでいたような気もしたが、皆楽しそうに敵を倒し終えると意気揚々とダンジョンを後にするのだった。
「実にいい経験でした。これほど戦闘で楽しいと思ったのは久しぶりです」
実にいい笑顔のフレックだった。
42
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる