二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
255 / 475

どうぞ

しおりを挟む
 「これどうぞ」

 差し出されたものを反射的に受け取ったが、何か分からず首を傾げる。

 「これは?」

 「肉と魚です。たくさんもらってしまったので。今回手に入った醤油で漬けてあるのでよかったら隊長さんにでもお土産にどうぞ。焼いて食べるだけでも美味しいですよ」

 「………ありがとうございます」

 にこにこと差し出された瓶をよく見てみれば、確かに黒く色付く液体の中には途中手に入れた肉たちが浮かんでいた。
 まさか隊長にまでお土産を渡されるとは思っておらず驚いたが、エニシの気遣いに有り難く受け取っておく。

 「あとお握りと酢漬けにした野菜も、あとは……」

 「え?いや、そんなもらうわけにはーー」

 次々と渡されるが依頼をした自分たちがそんなに受け取るわけにはいかないと慌てて止める。

 「上手く出来ているか分かりませんが食べてもらえたら嬉しいです。また誘って下さいね」

 まるで遊びに行ってきたかのような言葉だが、もう行きたくないと泣かれるより全然嬉しい。
 頻繁にあるものではないが、実際フレックも楽しかったと思っていたため次回の訓練が早くも楽しみになってきた。

 「是非またお願いします。これらも隊長には勿体無いですがきちんと渡しておきます」

 「フレックさんも一緒に食べて今度味の感想を教えてくれたら嬉しいです」

 この子の気遣いには頭が上がらない。
 必ず教えると約束するとたくさんのお土産を抱え城に戻るのであった。

 「おっせぇよ!ってか訓練帰りのくせして何でそんな機嫌いいんだよ」

 やっと帰ってきた部下に対する言葉ではなかったが、実際機嫌は良かったので否定はしない。

 「とても充実した訓練でした。エニシさんに頼んで良かったです」

 「お前……俺は宰相に毎日のようにドヤされてたってのに」

 恨みがましく睨んでくるが、彼の場合自業自得なので気にしないことにする。

 「そんな貴方にエニシさんがお土産を持たせてくれましたよ。ーー勿論、仕事を終えた後にお渡しするので頑張って下さいね」

 「お前は鬼だな」

 ふふふ、なんとも面白いことを言う。
 もう自分だけで食べてしまおうかと考えていれば、まるでその考えを読んだかのようにぶつくさ文句を言いながらも仕事を始めた隊長にフレックも手伝おうと手を動かすのであった。




 「うまっ!なんだこれ!?」

 「美味しいですねぇ。流石エニシさんです」

 その晩、仕事を終え宿舎に戻るとエニシからのお土産を肴に酒盛りをしていた。

 「この魚うめぇな。これがショウユってやつか?」

 普段肉ばかり食す隊長に、これならばと魚を与えてみればかなり気に入ったようでもりもり食べている。
 肉も焼けと言われたが、明日の楽しみにしておきなさいと言えば大人しく引き下がっていた。

 「私も話しを聞くまで知りませんでしたけど味が染みてて本当に美味しいですね。エニシさんがあれほど欲しがっていた理由がよく分かります。肉にも魚にも野菜にも合うなんて素晴らしい」

 これは一緒に連れていって正解だったと心から思う。
 途中途中の食事もとても美味しく、それほど難しい作業でもなかったため勉強にもなった。
 いつもなら疲れて帰ってくる訓練を疲れなくこれほど楽しめたのは初めてだろう。

 「こんなことなら俺が行けばよかったぜ」

 「隊長がいなくなるのは問題でしょう?次回も私が行きますのでどうぞお気遣いなく」

 これほど美味しい訓練譲ってなるものか。

 「お前は日に日に性格が歪んでいくな」

 酷い言いようだ。
 これほど上司を気遣える部下を持って感謝してほしいぐらいなのに。
 こうして一緒に飲み食いしながら愚痴を言い合えるのもいつぶりか。
 まだ下っ端時代だった頃は毎日のようにそうしていたが、お互い隊長副隊長となってからはそれも難しくなっていった。
 書類仕事もそうだが、会議に隊員の訓練、世話などやることが多すぎて疲れて帰ることが殆どだったのだ。
 だがエニシと出会いお互い協力し合うことを学び、少しずつだが隊員たちも変わってきた。
 全ての負担がなくなったわけではないが、こうして飲み合うことも出来、美味しい食事もとることが出来る。
 
 「エニシさんを連れてきてくれた王子には感謝しなければいけませんね。あれほどの人がよくこの国に来てくれたものです」

 エニシの才能を知れば他国もきっと放ってはおかないだろう。
 魔剣の作成、実力を知らしめる軍事練習など誰も思いつかなかった。

 「ほんとにな。今は王子の教育係になってるみたいだが勿体ねぇな」

 どうせならもっと身近に置いておきたいというのが本音だろう。
 それはフレックも賛成だが。
 
 「あのいけ好かないクソガキだった王子をあそこまで変えてくれましたからね」

 「お前は……あいつが聞いてたら怒られんぞ」

 エニシの前では気をつけているので問題はない。
 あの子にこんな汚い言葉聞かせられないという無意識の行動でもあったが。

 「隊長はもう手遅れでしょうね。せいぜい嫌われないように頑張って下さい」

 「ほんと性格悪いなお前!」

 余計なお世話ですね!!
 エニシにバレなければ問題ないと開き直るフレックであった。

 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...