二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
257 / 475

約束だから

しおりを挟む
 それは突然のことだった。
 突如きた全身の痛みに立っていられず倒れ込めば、心配したジークたちが駆け寄ってくる。

 「ルー!?どうした?」

 答えたいが襲いくる痛みに声を出すことさえ難しく答えられない。
 
 「すまないが部屋に運ぶのを手伝ってくれるか?このままじゃ子どもたちまで危ない」

 酷く落ち着いた兄であるロンの声に苛立ったが、子どもたちが危ないと言われれば反抗出来るはずもなく、なるべく動かさないよう運んでもらう。

 「暫く誰も部屋に近づけないでくれ。アズと繋は特にだ。魔力暴走を起こすかもしれない」

 「どういうことだ?ルーはーー」

 「病気ではない。ドラゴン特有の発作だ。俺も暫く手が離せないだろうから子どもたちを頼む」

 ロンとジークの会話を聞きながらも全身を引き裂かれるような痛みに呻き、暴れるのを止められない。
 
 「ああっ!あ、ああっ!」

 なんだ?なんだよこれは!?いたい、いたいいたいいたい!

 「ルイ?大丈夫だ。身体が成長しようとしているんだ。辛いだろうが耐えるんだ」

 大丈夫?これが?こんな……こんな痛みに耐えろ?ふざけるなっ!
 グルルと獣のような声を上げながらロンに襲いかかれば共に倒れ込み床を転がる。
 腕を振り上げ殴りかかるが効かないとばかりに押さえ込まれ床に叩きつけられる。
 それさえも全身の骨を砕かれるような痛みがあり気が狂いそうだった。

 「耐えろ!」

 その痛みを経験したことがあるロンだからこそ、ルーを押さえながらも同じように苦しそうな顔をしていたが、しかし痛みに堪えるルーはそのことに気がつくことが出来なかった。
 逆にこんな痛みに耐えろというロンに腹しか立たず、苛立ちに鋭く尖がった牙で腕に噛みつく。

 「くそっ、こんな時にエニシがいないとはな」

 「…………エニ、シ?」

 「そうだ。エニシ、お前の番だ。分かるだろ?あいつのためにも耐えろ、頼むから耐えてくれ」

 痛みが引いたわけではない。
 引いたわけではなかったが、失いそうになっていた理性が戻ってくる。

 「エニシ、エニシどこ?オレ、オレの番なのに、オレの……」

 視線を彷徨わせ探すが愛しい人の姿がない。
 エニシが出かけたのは昨日であり戻ってくるまでにはまだ時間がかかる。
 最悪なタイミングだとぼやきつつ、手を伸ばすルイの手をロンが掴んでくるが自分が求めているのはこの手ではないと振り払う。
 ちがうちがうちがう。どこ?オレの番はどこ?
 泣き喚き部屋中の物を投げ飛ばし暴れるがエニシがいないことに不安しかなかった。
 探しに行こうにもロンが立ちはだかり外にも出られない。
 焦りと不安で押し潰されそうになりながらも、微かに残った理性でエニシならば戻ってきてくれると必死に自分を繋ぎ止める。

 「大丈夫だ。エニシはきっと戻ってくる。戻ってくるからそれまで耐えてくれ」

 ロンの声をどこか遠くに聞きながらも、エニシの手の温かさを思い出し耐える。
 約束したんだ。一緒に出かけようって。また背中にも乗せてあげるって。だから、だから……
 痛む身体を抱き寄せ耐える。
 それからどれだけ経ったか分からないが、ふと閉じられた戸の前にそれを感じ取り足早に向かうとかけられた言葉に返事をすることなく腕を引き抱きしめる。

 「エニシ、エニシ、エニシ、エニシっ!」

 求めていた温もりに力一杯抱きしめれば、あまりの痛みに離してくれと言われたが怖くて出来なかった。

 「離れません。離れないから力を緩めて?このままじゃルーを抱きしめてあげることが出来ない。私もルーを抱きしめたいんです」

 離れるわけではないとお願いされ、漸く少し力を抜くと温かいその手が背に回ってきた。
 これだ、これが求めていたものだと痛みに負けないよう耐える。

 「側にいますから。ずっと側にいますから。だから……だから頑張って」

 頑張る。頑張るから側にいて。

 「約束しましたよね。また背中に乗せてくれるって、一緒に出かけようって言ってたじゃないですか。一緒に頑張っていこうって約束したでしょう?」

 した。忘れてない。
 
 「私は貴方の番です。ずっと側にいますから」 

 うん。オレの番はエニシだけだから。だから側にいて。
 声に出すことは出来なかったが、抱きしめられた腕の中もうすぐだと自分に言い聞かせる。

 「……分かりますか?ルーの魔力もちょうだい」

 流れ込んできたそれは先程も感じたエニシの魔力だった。
 温かなそれに包まれ、言われるがまま自分の魔力を流せば交わるように魔力同士が絡み合う。
 まるで自分の中にもエニシがいるようで痛みが少しずつ引いていく気がした。
 ゆっくり、ゆっくりと全身を満たしていく温かな魔力に力が抜け、泣き腫らした重い目蓋が下がっていく。

 「大丈夫、側にいます。側にいますから……おやすみなさい」

 ああ、もう大丈夫だと確信するとエニシの声に促されるまま深い眠りにつくのだった。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...