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約束だから
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それは突然のことだった。
突如きた全身の痛みに立っていられず倒れ込めば、心配したジークたちが駆け寄ってくる。
「ルー!?どうした?」
答えたいが襲いくる痛みに声を出すことさえ難しく答えられない。
「すまないが部屋に運ぶのを手伝ってくれるか?このままじゃ子どもたちまで危ない」
酷く落ち着いた兄であるロンの声に苛立ったが、子どもたちが危ないと言われれば反抗出来るはずもなく、なるべく動かさないよう運んでもらう。
「暫く誰も部屋に近づけないでくれ。アズと繋は特にだ。魔力暴走を起こすかもしれない」
「どういうことだ?ルーはーー」
「病気ではない。ドラゴン特有の発作だ。俺も暫く手が離せないだろうから子どもたちを頼む」
ロンとジークの会話を聞きながらも全身を引き裂かれるような痛みに呻き、暴れるのを止められない。
「ああっ!あ、ああっ!」
なんだ?なんだよこれは!?いたい、いたいいたいいたい!
「ルイ?大丈夫だ。身体が成長しようとしているんだ。辛いだろうが耐えるんだ」
大丈夫?これが?こんな……こんな痛みに耐えろ?ふざけるなっ!
グルルと獣のような声を上げながらロンに襲いかかれば共に倒れ込み床を転がる。
腕を振り上げ殴りかかるが効かないとばかりに押さえ込まれ床に叩きつけられる。
それさえも全身の骨を砕かれるような痛みがあり気が狂いそうだった。
「耐えろ!」
その痛みを経験したことがあるロンだからこそ、ルーを押さえながらも同じように苦しそうな顔をしていたが、しかし痛みに堪えるルーはそのことに気がつくことが出来なかった。
逆にこんな痛みに耐えろというロンに腹しか立たず、苛立ちに鋭く尖がった牙で腕に噛みつく。
「くそっ、こんな時にエニシがいないとはな」
「…………エニ、シ?」
「そうだ。エニシ、お前の番だ。分かるだろ?あいつのためにも耐えろ、頼むから耐えてくれ」
痛みが引いたわけではない。
引いたわけではなかったが、失いそうになっていた理性が戻ってくる。
「エニシ、エニシどこ?オレ、オレの番なのに、オレの……」
視線を彷徨わせ探すが愛しい人の姿がない。
エニシが出かけたのは昨日であり戻ってくるまでにはまだ時間がかかる。
最悪なタイミングだとぼやきつつ、手を伸ばすルイの手をロンが掴んでくるが自分が求めているのはこの手ではないと振り払う。
ちがうちがうちがう。どこ?オレの番はどこ?
泣き喚き部屋中の物を投げ飛ばし暴れるがエニシがいないことに不安しかなかった。
探しに行こうにもロンが立ちはだかり外にも出られない。
焦りと不安で押し潰されそうになりながらも、微かに残った理性でエニシならば戻ってきてくれると必死に自分を繋ぎ止める。
「大丈夫だ。エニシはきっと戻ってくる。戻ってくるからそれまで耐えてくれ」
ロンの声をどこか遠くに聞きながらも、エニシの手の温かさを思い出し耐える。
約束したんだ。一緒に出かけようって。また背中にも乗せてあげるって。だから、だから……
痛む身体を抱き寄せ耐える。
それからどれだけ経ったか分からないが、ふと閉じられた戸の前にそれを感じ取り足早に向かうとかけられた言葉に返事をすることなく腕を引き抱きしめる。
「エニシ、エニシ、エニシ、エニシっ!」
求めていた温もりに力一杯抱きしめれば、あまりの痛みに離してくれと言われたが怖くて出来なかった。
「離れません。離れないから力を緩めて?このままじゃルーを抱きしめてあげることが出来ない。私もルーを抱きしめたいんです」
離れるわけではないとお願いされ、漸く少し力を抜くと温かいその手が背に回ってきた。
これだ、これが求めていたものだと痛みに負けないよう耐える。
「側にいますから。ずっと側にいますから。だから……だから頑張って」
頑張る。頑張るから側にいて。
「約束しましたよね。また背中に乗せてくれるって、一緒に出かけようって言ってたじゃないですか。一緒に頑張っていこうって約束したでしょう?」
した。忘れてない。
「私は貴方の番です。ずっと側にいますから」
うん。オレの番はエニシだけだから。だから側にいて。
声に出すことは出来なかったが、抱きしめられた腕の中もうすぐだと自分に言い聞かせる。
「……分かりますか?ルーの魔力もちょうだい」
流れ込んできたそれは先程も感じたエニシの魔力だった。
温かなそれに包まれ、言われるがまま自分の魔力を流せば交わるように魔力同士が絡み合う。
まるで自分の中にもエニシがいるようで痛みが少しずつ引いていく気がした。
ゆっくり、ゆっくりと全身を満たしていく温かな魔力に力が抜け、泣き腫らした重い目蓋が下がっていく。
「大丈夫、側にいます。側にいますから……おやすみなさい」
ああ、もう大丈夫だと確信するとエニシの声に促されるまま深い眠りにつくのだった。
突如きた全身の痛みに立っていられず倒れ込めば、心配したジークたちが駆け寄ってくる。
「ルー!?どうした?」
答えたいが襲いくる痛みに声を出すことさえ難しく答えられない。
「すまないが部屋に運ぶのを手伝ってくれるか?このままじゃ子どもたちまで危ない」
酷く落ち着いた兄であるロンの声に苛立ったが、子どもたちが危ないと言われれば反抗出来るはずもなく、なるべく動かさないよう運んでもらう。
「暫く誰も部屋に近づけないでくれ。アズと繋は特にだ。魔力暴走を起こすかもしれない」
「どういうことだ?ルーはーー」
「病気ではない。ドラゴン特有の発作だ。俺も暫く手が離せないだろうから子どもたちを頼む」
ロンとジークの会話を聞きながらも全身を引き裂かれるような痛みに呻き、暴れるのを止められない。
「ああっ!あ、ああっ!」
なんだ?なんだよこれは!?いたい、いたいいたいいたい!
「ルイ?大丈夫だ。身体が成長しようとしているんだ。辛いだろうが耐えるんだ」
大丈夫?これが?こんな……こんな痛みに耐えろ?ふざけるなっ!
グルルと獣のような声を上げながらロンに襲いかかれば共に倒れ込み床を転がる。
腕を振り上げ殴りかかるが効かないとばかりに押さえ込まれ床に叩きつけられる。
それさえも全身の骨を砕かれるような痛みがあり気が狂いそうだった。
「耐えろ!」
その痛みを経験したことがあるロンだからこそ、ルーを押さえながらも同じように苦しそうな顔をしていたが、しかし痛みに堪えるルーはそのことに気がつくことが出来なかった。
逆にこんな痛みに耐えろというロンに腹しか立たず、苛立ちに鋭く尖がった牙で腕に噛みつく。
「くそっ、こんな時にエニシがいないとはな」
「…………エニ、シ?」
「そうだ。エニシ、お前の番だ。分かるだろ?あいつのためにも耐えろ、頼むから耐えてくれ」
痛みが引いたわけではない。
引いたわけではなかったが、失いそうになっていた理性が戻ってくる。
「エニシ、エニシどこ?オレ、オレの番なのに、オレの……」
視線を彷徨わせ探すが愛しい人の姿がない。
エニシが出かけたのは昨日であり戻ってくるまでにはまだ時間がかかる。
最悪なタイミングだとぼやきつつ、手を伸ばすルイの手をロンが掴んでくるが自分が求めているのはこの手ではないと振り払う。
ちがうちがうちがう。どこ?オレの番はどこ?
泣き喚き部屋中の物を投げ飛ばし暴れるがエニシがいないことに不安しかなかった。
探しに行こうにもロンが立ちはだかり外にも出られない。
焦りと不安で押し潰されそうになりながらも、微かに残った理性でエニシならば戻ってきてくれると必死に自分を繋ぎ止める。
「大丈夫だ。エニシはきっと戻ってくる。戻ってくるからそれまで耐えてくれ」
ロンの声をどこか遠くに聞きながらも、エニシの手の温かさを思い出し耐える。
約束したんだ。一緒に出かけようって。また背中にも乗せてあげるって。だから、だから……
痛む身体を抱き寄せ耐える。
それからどれだけ経ったか分からないが、ふと閉じられた戸の前にそれを感じ取り足早に向かうとかけられた言葉に返事をすることなく腕を引き抱きしめる。
「エニシ、エニシ、エニシ、エニシっ!」
求めていた温もりに力一杯抱きしめれば、あまりの痛みに離してくれと言われたが怖くて出来なかった。
「離れません。離れないから力を緩めて?このままじゃルーを抱きしめてあげることが出来ない。私もルーを抱きしめたいんです」
離れるわけではないとお願いされ、漸く少し力を抜くと温かいその手が背に回ってきた。
これだ、これが求めていたものだと痛みに負けないよう耐える。
「側にいますから。ずっと側にいますから。だから……だから頑張って」
頑張る。頑張るから側にいて。
「約束しましたよね。また背中に乗せてくれるって、一緒に出かけようって言ってたじゃないですか。一緒に頑張っていこうって約束したでしょう?」
した。忘れてない。
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うん。オレの番はエニシだけだから。だから側にいて。
声に出すことは出来なかったが、抱きしめられた腕の中もうすぐだと自分に言い聞かせる。
「……分かりますか?ルーの魔力もちょうだい」
流れ込んできたそれは先程も感じたエニシの魔力だった。
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まるで自分の中にもエニシがいるようで痛みが少しずつ引いていく気がした。
ゆっくり、ゆっくりと全身を満たしていく温かな魔力に力が抜け、泣き腫らした重い目蓋が下がっていく。
「大丈夫、側にいます。側にいますから……おやすみなさい」
ああ、もう大丈夫だと確信するとエニシの声に促されるまま深い眠りにつくのだった。
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