二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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子どもたちのために

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 「貴方は私の女神だっ!」

 「…………残念ですが男です」

 感動に手を広げ今にも抱きついて来ようとしているが、それを止めるようにジンが後ろから襟首を掴まえてくれているためその手が届くことは一生ないだろう。

 「いえ!貴方は女神……いえ神だ!貴方に出会えたことに感謝をーーーってこら、いい加減離せ」

 「誰が離すか。うちの孫に触れたら殺す」

 気心知れた仲のようではあるが少々会話が物騒である。

 「ふっ、そんな脅し文句でこの私がーーちょっ、締まってる!締まっ、ぐぇ」

 なんだかなぁ。
 どうしたものかと背後にいるマーガレットを振り返れば呆れたような表情でポンポンと隣の席を叩いていた。
 ならばと隣に腰掛ければ、逆にマーガレットが立ち上がりーー
 ガツンッ!!
 ぶつかり合う額同士に自分がされたわけでもないのに痛みに声がでそうになった。

 「いい加減にしなっ!話しが進まないだろ!」

 いつの時代も女性は強し。
 揺れる頭に2人が倒れ込むのを心配しながら見守る。
 
 「うぅ、いたたた。す、すまない、あまりの感動に我を忘れていた。えーと、エニシくんだったね。驚かせてしまって申し訳ない」

 意外にも石頭だったようだ。
 未だ床に沈むジンとは違い男は数回頭を振ると元の状態に戻っていた。

 「それで……なんだったかな。ああ、そう、ミソの販売の話しだったね。喜んで引き受けるよ」

 「ありがとうございます」

 商人とは……こういうものなのだろうか?
 とりあえず話しを受けてもらえたことに感謝し、大まかに話しをつめていく。
 最初こそ何だこれとばかりに首を捻っていたが、その使い方などを縁が説明すれば怖ろしいほど喜んでくれた。

 「これほど素晴らしいものを今まで知らなかったとは商人として何と恥ずかしいことか!いや、むしろ今知れたことに感謝し新たな時代を切り開くのが私の役目!そしてそれを伝授して下さった貴方様こそーー」

 と、冒頭に続くわけだがマーガレットたちに聞いていた通り随分………愉快な人だった。

 「それでなんだが本当に私の商会だけでの独占販売で構わないのだろうか?こちらとしては助かるが、後でやはり別のところと契約したいと言われてはーー」

 「構いません。作れると言っても量は限られていますし、増やせと言われて増やせるものでもありません。何よりこのお2人が信頼出来ると紹介して下さったのが貴方ならば貴方にお願いしたいんですククルさん」

 この話しで一番大切なのが信頼関係だった。
 確かに商会に卸せる量も問題ではあったが、何より大切なのは子どもたちの安全な未来。
 その上で子どもたちが無理なく作れ、それを理解し悪用しない信頼出来る人を2人には頼んだ。
 独占販売にしたのもその方が子どもたちを守ってくれると思ったからだ。
 汚いことを考える大人というのは世界が変わろうがどこにでもいる。
 下手に見知らぬ店に卸しても、それを元に量産しろ、作り方を教えろと襲われてはかなわない。
 作り手である子どもたちを守りたいという縁の願いにマーガレットたちが選んだのがこの商会だったのだ。

 「子どもたちには定期的にお金が入り、貴方もまた新たな商品が手に入り商売が出来る。いかがでしょう?」

 「そこまで言われて断わるなど出来るはずがない。こちらこそ宜しくお願いします」

 子どもたちの所へは商会長である彼自ら買い付けに行ってくれるらしい。
 それほどしてくれるというならばと縁は鞄からを取り出す。

 「私の故郷でもあった醤油というものです。味噌と同じで使い方は多くあります。もし可能であればこちらもこの商会で扱ってほしいのですが」

 「なんと!まだそんな隠し玉があったとは!」

 「ただ私も作り方まではよく分かっていません。なのでこれを元に生産販売をお願い出来ませんでしょうか?」

 「喜んでっ!」

 笑顔で受け取ってくれたククルに胸を撫で下ろしつつ、醤油の美味しさを伝えるため念のため用意しておいたご飯を皆で食べるのだった。

 「これは何と奥深い味わい。これだけ少量にもかかわらずこの存在感。これは売れますよ!必ず私の手で作り上げてみせます!」

 感動に震え再び抱きついてこようとしたが、ジンがそれを許すはずもマーガレットが黙っているはずもなく2人仲良く再び地面と仲良しになっているのだった。

 「あ、これアズと一緒に作ったチーズなんですけど良かったらどうぞ」

 「随分変わった色だね」

 遅くなったがお土産だとマーガレットに渡せば、見たことない色と形に首を傾げていた。

 「山羊のお乳で作りました」

 「「………ヤギ?」」
 「ヤギですって!?」

 驚く3人に物は試しとパンにチーズを乗せ渡してみる。
 クセが気になるかもしれないと念のため蜂蜜も一緒にかけておいた。

 「美味いね」
 「これがヤギか…」
 「~~~~っ、やはり貴方は私の女神だったっ!」

 「男です」

 もうこのやりとりにも慣れた縁であった。
 

 

 

 

 

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