269 / 475
は????
しおりを挟む
「これを見てください」
そう言って差し出されたのはここに来るまでの道々で開けた宝箱の中身だった。
流石に自分もダンジョンの存在は知っていても入ったことはなかったが、宝箱から出てくるそれらが普通ではないことは分かった。
だがエニシの落ち込みように揶揄うこともバカにすることも出来ず流していたのだが、今更それらを見せられて自分は何を求められているのか分からなかった。
面白い冗談でも言えと?
エニシに限ってそんなことはないだろうと思いつつどういうことかと確認すれば。
「さっき気付いたんですけどここ……」
「………ドラゴン?……の、刺繍…か?」
よく見ればタオルの端にはドラゴンと思しき刺繍が施されていた。
何故だと思いながらも更に見せられた鞄や膝掛けなどにもよく見れば色違いだが無駄に器用な素晴らしいドラゴンの刺繍がされており更に訳が分からない。
「で、私も色々考えたんですけど……これ鞄じゃなくて抱っこ紐というかあるものを入れておくためのものじゃないかと」
「あるもの?」
エニシにはもう答えが分かっているのかもしれない。
では何だろうかと考えればーー
「ん?抱っこ紐?ーーーっておい、まさか!?」
「いえ確証があるわけではなくて、そのためにもロンに確認したかったんです」
それはドラゴンの産まれ方。
人間や獣人とは違いドラゴンが産まれてくる時は人型ではなくドラゴン……でもなく卵だ。
卵で産まれ、母親が温め続け孵化させる。
産むこと自体はそう辛くはないらしいが、そこから孵化するまでは時間もかかる上ちゃんと産まれるかは可能性の問題だ。
鞄は卵を入れておくもの、タオルや膝掛けは温めるためのものなのかもしれない。
「そうですか……まぁ、それはさておき何故これが出たかという問題なんですが、私がルーの子を身篭っている可能性はあると思います?」
「…………分からん」
はっきり言ってロンは母親がルイを身篭っている時すら分からず、ある日見せられた卵を見て初めて妊娠していたことを知ったほどだ。
獣人ではないが、ドラゴンも小さく産みあれほどの巨大に育て上げる。
魔力で覆われた殻が母親の魔力を吸い育っていく。
「確かに宝箱は当たり外れがあるとは聞いていましたがタオルが出るのは変だなとは思っていたんですよ。なら今の私に必要なものかと思ったんですが……」
なるほど。
考えとしては悪くないだろう。もしくは近い未来のため。
「今の段階ではまだ魔力を感じることは出来ないからな。それこそ産むまでは俺にも分からない」
繋の時はアズが気付いたと言っていたが、それは人間であり多く魔力を持つ縁の子故だからだろう。
身を守るためか何故かは分からないが、ドラゴンが宿る卵の殻はかなり固く母親の魔力しか受け付けない。
だからこそ魔力が少ない親は子が出来辛く、産めても孵化させることが出来ないのだ。
「魔力のことはエニシなら問題はないだろう。だが子がいる可能性があるなら無理はするな。ルイだって知ったらーー」
きっと喜ぶと続けようとしたが……
「それなんですがまだみんなには黙っていてもらっていいですか?」
「何故だ?」
弟のこともそうだが、もしかしたら新たなドラゴンの誕生かもしれないとロンも我がことのように嬉しい。
ならばルイにも早く教えてやりたかったのだが。
「アレン、か?」
セインの言葉にハッと我に返った。
「……言えばアレンはきっと喜んでくれます。けどそれと納得出来るかは別、でしょ?」
セインとジークには子が出来た。
それだけならばアレンも仕方ないと納得出来たかもしれないが、それから更にルイの子まで出来たとなると何故自分はダメなのかと思わずにはいられないだろう。
「アレンと話すまでみんなには黙っていてもらえませんか?」
「そうだな。分かった」
「大丈夫だ。アレンならきっと分かってくれる」
話しを聞き浮かれていたが、確かにアレンとしては面白くはないだろう。
「話しを聞いておいてごめんなさい。けどアレンの傷付く姿を見たくないんです」
期待させておいて申し訳ないと謝るエニシだが彼は何も悪くない。
「いや、俺が悪かった。だがきっとルイも知ったら喜ぶだろう。あんな弟だがよろしく頼む」
いくら変わっていてもロンにとってルイは大切な弟であり家族だ。
彼の幸せを誰より望んでいる。
「こちらこそ。けどロンも大切な家族ですからね。もし産まれたらロンが頼りです。お願いしますね」
「任せておけ」
そう言って差し出されたのはここに来るまでの道々で開けた宝箱の中身だった。
流石に自分もダンジョンの存在は知っていても入ったことはなかったが、宝箱から出てくるそれらが普通ではないことは分かった。
だがエニシの落ち込みように揶揄うこともバカにすることも出来ず流していたのだが、今更それらを見せられて自分は何を求められているのか分からなかった。
面白い冗談でも言えと?
エニシに限ってそんなことはないだろうと思いつつどういうことかと確認すれば。
「さっき気付いたんですけどここ……」
「………ドラゴン?……の、刺繍…か?」
よく見ればタオルの端にはドラゴンと思しき刺繍が施されていた。
何故だと思いながらも更に見せられた鞄や膝掛けなどにもよく見れば色違いだが無駄に器用な素晴らしいドラゴンの刺繍がされており更に訳が分からない。
「で、私も色々考えたんですけど……これ鞄じゃなくて抱っこ紐というかあるものを入れておくためのものじゃないかと」
「あるもの?」
エニシにはもう答えが分かっているのかもしれない。
では何だろうかと考えればーー
「ん?抱っこ紐?ーーーっておい、まさか!?」
「いえ確証があるわけではなくて、そのためにもロンに確認したかったんです」
それはドラゴンの産まれ方。
人間や獣人とは違いドラゴンが産まれてくる時は人型ではなくドラゴン……でもなく卵だ。
卵で産まれ、母親が温め続け孵化させる。
産むこと自体はそう辛くはないらしいが、そこから孵化するまでは時間もかかる上ちゃんと産まれるかは可能性の問題だ。
鞄は卵を入れておくもの、タオルや膝掛けは温めるためのものなのかもしれない。
「そうですか……まぁ、それはさておき何故これが出たかという問題なんですが、私がルーの子を身篭っている可能性はあると思います?」
「…………分からん」
はっきり言ってロンは母親がルイを身篭っている時すら分からず、ある日見せられた卵を見て初めて妊娠していたことを知ったほどだ。
獣人ではないが、ドラゴンも小さく産みあれほどの巨大に育て上げる。
魔力で覆われた殻が母親の魔力を吸い育っていく。
「確かに宝箱は当たり外れがあるとは聞いていましたがタオルが出るのは変だなとは思っていたんですよ。なら今の私に必要なものかと思ったんですが……」
なるほど。
考えとしては悪くないだろう。もしくは近い未来のため。
「今の段階ではまだ魔力を感じることは出来ないからな。それこそ産むまでは俺にも分からない」
繋の時はアズが気付いたと言っていたが、それは人間であり多く魔力を持つ縁の子故だからだろう。
身を守るためか何故かは分からないが、ドラゴンが宿る卵の殻はかなり固く母親の魔力しか受け付けない。
だからこそ魔力が少ない親は子が出来辛く、産めても孵化させることが出来ないのだ。
「魔力のことはエニシなら問題はないだろう。だが子がいる可能性があるなら無理はするな。ルイだって知ったらーー」
きっと喜ぶと続けようとしたが……
「それなんですがまだみんなには黙っていてもらっていいですか?」
「何故だ?」
弟のこともそうだが、もしかしたら新たなドラゴンの誕生かもしれないとロンも我がことのように嬉しい。
ならばルイにも早く教えてやりたかったのだが。
「アレン、か?」
セインの言葉にハッと我に返った。
「……言えばアレンはきっと喜んでくれます。けどそれと納得出来るかは別、でしょ?」
セインとジークには子が出来た。
それだけならばアレンも仕方ないと納得出来たかもしれないが、それから更にルイの子まで出来たとなると何故自分はダメなのかと思わずにはいられないだろう。
「アレンと話すまでみんなには黙っていてもらえませんか?」
「そうだな。分かった」
「大丈夫だ。アレンならきっと分かってくれる」
話しを聞き浮かれていたが、確かにアレンとしては面白くはないだろう。
「話しを聞いておいてごめんなさい。けどアレンの傷付く姿を見たくないんです」
期待させておいて申し訳ないと謝るエニシだが彼は何も悪くない。
「いや、俺が悪かった。だがきっとルイも知ったら喜ぶだろう。あんな弟だがよろしく頼む」
いくら変わっていてもロンにとってルイは大切な弟であり家族だ。
彼の幸せを誰より望んでいる。
「こちらこそ。けどロンも大切な家族ですからね。もし産まれたらロンが頼りです。お願いしますね」
「任せておけ」
57
あなたにおすすめの小説
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる