二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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仏の顔も?

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 無表情でそれを見下ろす縁に周りにいた皆が恐怖で震えていた。

 「私は話しを聞かない自分勝手な馬鹿は嫌いです」

 ルーも空気が読めないバカではあるが、彼は彼なりに頑張ろうとしているし出来ない時はちゃんと謝れるバカである。
 少しだがその成果も見え始めてきたため彼に苛立ちもバカにしようとも思わない。

 「人の話しは聞かない。痛いと言っているのに離しもしない。私が女性なら怪我をしてましたよ」

 「けどオレはアンタにーー」

 「黙りなさい。仕事を受けていただけないのであれば私は貴方に用はない」

 いつになく冷たく接する縁もここまで言って聞かないのであれば紹介してくれた少女には悪いがすぐにでもここを出ていく気だと宣言するのであった。


 それは数時間前。
 約束通り少女に案内された鍛冶屋に訪れたのだが……

 「お前か?俺に頼みたいものがあるっちゅう若造は」

 ゼスと名乗ったお爺ちゃんは縁よりよっぽど体格がいい職人という感じの人だった。
 若造………でいいのだろうか?
 確かに70は過ぎているというお爺ちゃんからすれば縁は若造のひよっこかもしれない。

 「はい、縁と申します。可能であれば調理に使うナイフをもう少し薄く切れ味をよくしたものを。あと、網と鉄板とお鍋も数が欲しいので出来ればお願いしたいです」

 「………綺麗な顔して人使いが荒いな」

 「希望です。無理そうなら言っていただいて構いません」

 あくまで希望であり、出来ないと言われればそうですかで諦められるぐらいのものである。
 しかし快くも全て引き受けてくれるようで嬉しい限りだ。
 ならばとどんなものがいいかと希望を伝えていればーー

 「親父、これどうなっーーー」

 「「「「………?」」」」

 突如入ってきた青年に話し合っていた手を止め顔を上げれば、青年はこちらを見つめたまま固まってしまった。
 もしや他にも約束があったのかとゼスを見るが、こちらもまた不審そうに固まる息子さんを見ている。
 
 「?、もし今日お忙しいのであればまた後日伺いまーー」

 「好きです!結婚して下さいっ!!」

 「「「「…………」」」」

 すごいなぁ。
 若さとはすごいなと感心しつつ隣を見る。
 あまりの衝撃に驚き固まっている少女に、もしかしたらいい機会かもしれないと黙って見守ることにした。
 あの事件からどれだけ癒えているかは分からないが、縁やエルを見ても怯えていないことからそれほど引きずっているようには見えない。
 ならばこれほど素直に想いを伝えてくれる相手ならばいいかもしれない。

 「(すごいですね。一目惚れっぽいですけどそんなにタイプだったんですかね?)」

 「………」

 邪魔をしないようにとエルに小声で話しかければ、すごく残念なものを見る目で見られた。
 何故?
 こんな時に何を暢気に喋ってるんだと思われてしまったのだろうか?
 もしかしたら自分も空気を読めないのかもしれないと怒られぬようこれ以上は黙っておくことにする。
 何とも気まずい空気が流れる。
 期待するように答えを待つ青年に、焦ったように視線を彷徨わせる少女。
 しかしいくら待てど話しが進まず、息子の様子にゼスも戸惑っているようなので部外者は外に出ていた方がいいかと立ち上がる。

 「私たちがいてはお2人も話しずらいでしょう。少し席を外しますのでゆっくり話し合ーー」

 「オレじゃダメっすか!?」

 いや知らない。何故それを自分に聞くのか。
 突然腕を掴まれたかと思えば、鬼気迫る顔でそう言われたが腕が痛いのでやめてほしい。
 鍛冶屋の息子だけあって力があるのだろう。

 「離せ」

 「なっ、お前誰だよ!」

 私からすれば貴方が誰なのかちゃんと名乗ってほしい。
 助けてくれた礼を言うと、守るように一歩前に出たエルにどうしたのかと首を傾げる。

 「この人はダメだから」

 「はぁ?なんでお前なんかにそんなこと言われなきゃいけねぇんだよ!」

 何やら険悪な雰囲気になってきた。
 このままでは少女が怯えてしまうと慌てて2人を止めに入るとエルを連れ部屋を出ようとする。

 「ゼスさんすいません。続きはまた今度お願いします。とりあえず今日はこれで失礼しーー」

 「待って!どこ行くんだよ!」

 部屋を出ようとした途端腰を掴まれ引き寄せられそうになり、手を繋いでいたエルが慌てて手を引いてきた。
 なんだなんだ?何がどうなっている?
 
 「ダメだってんだろ!エニシはダメ!」

 「エニシってアンタの名前?いいね。オレはハビス、ハビって呼んでよ」

 「呼ばねぇよ!ってか、いい加減手離せ!」

 ワイワイ騒ぐ2人だが、その2人に挟まれている縁には訳が分からない。
 あれだけ熱烈なプロポーズをしておきながら、彼は何故自分に絡んでくるのか?
 というか痛いので手を離してほしい。
 加減なく腰に回る力強い腕は苦しく痛い。

 「すいませんが帰りますので手を離ーー」

 「なんで?それより答えは?」

 答え?何の?それより離してほしい。
 強まる腕の力に抜け出そうと身体を捻るが、どんな力をしているのか離れる様子がない。

 「いい加減にして下さい。痛いです。離して」

 「そんなことより答えは?オレーー」

 頭の中で何かが切れる音がした。
 まるで縁の心の中を現しているように冷たい風が室内に吹く。

 「この手を、離しなさい。私は話しを聞かない自分勝手な馬鹿は嫌いです」

 縁の声色にそれまで手を引いていたエルの手が離れる。
 その表情は戸惑っているようでオドオドと視線を彷徨わせていた。
 ゼスと少女も縁の代わりように驚いていたが、縁もいい加減我慢の限界だったのだ。

 

 





 

 


 
 

 
 
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