二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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さぁどうします?

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 いつまで経っても離れない手に一呼吸おくと、顔を上げゼスを見る。

 「先程から見ているだけで何もしないのは戸惑っているせいですか?それとも拒否すれば依頼を受けぬという脅しですか?」

 「っ!?わ、悪かった!このバカさっさとその手を離せ!」

 「なんで?だってオレーー」

 「うるせぇ!客に何してんだ!バカヤロウ!」

 ゼスのおかげで何とか引き剥がしてもらえたが、父親によって引き剥がされた当人は何をするんだと父親に食ってかかっている。
 殴り合いでもしそうな雰囲気だが縁にはそんなことどうでもいい。
 喚く青年を風魔法で転ばせると拘束し、動けなくなったところを念のためエルに押さえておいてもらう。

 「私は何度も離してほしいと言いましたよね?」

 「いやオレはーー」

 「貴方の意見など聞いてません。私は言ったかどうか聞いているんです。はいかいいえ、それしか求めていない」

 椅子に腰掛けながらも床に倒れ込む青年を見下ろす。
 紹介してくれた少女には悪いがこれ以上これが続くようなら依頼は全てなかったことにしてもらう。
 我慢してまでこの鍛冶屋に頼む理由も、なくては困るものでもない。

 「あ、いやそのーー」

 「はい、かいいえ、です」

 それ以上の言葉は許しはしない。

 「………はい」

 流石に縁の態度にマズいと感じたのか漸く頷いた。

 「痛いので離して下さいとも言いましたね?」

 「…はい」

 再び頷く青年に微笑む。

 「それが聴こえていながら貴方がしたことは自分勝手な主張と私の腰を折らんばかりに更に腕に力を込めたこと、ですね?」

 「………はい」

 今更ながらに自分のしでかしたことに気付いたのか顔色が悪い。
 逆にニコニコと微笑む縁にエルたちが恐怖で黙り込んでいる。

 「貴方が何をもって私にそうしたかは分かりませんが私はそれを貴方に許した覚えはありませんし、とても不愉快でした。私に触れていいのは私がいいと認めた人たちだけです」

 突然のことに驚きはしたが何を言っても力を緩めない青年に力があるなと感心などするはずもなく、唯々不愉快であり怒りしかなかった。
 
 「自分の主張だけしてそれが無条件で叶えられるのは小さな子どもだけです。貴方はそんなに子どもなんですか?」

 遠回しにお前いくつだよ!と言ってやれば、フルフルと首を振る仕草は否定しながらも子どものようだった。
 
 「なら、私に言う言葉は分かりますね?」

 縁も流石に鬼ではない。
 怒りはしたが、きちんと謝罪さえしてもらえれば許そうと思える。

 「あの……すいません、でした」

 床に倒れながらも謝る青年に大きく溜め息をつくと話しは終わりと立ち上がろうとしーーー

 「けど好きなんです。オレと結婚して下さい」

 …………………………は?彼は今何と言った?
 好き?結婚?誰が?誰と?
 考えること数分。
 エルを見る。
 
 「やっぱりね。気付いてなかったでしょ」

 はい。気付いてませんでした。というか気付くわけがない。

 「念のため確認しますが、先程の告白はもしかして私に対するものだったりしますか?こちらの女性にではなく?」

 そうであってほしいと願いながらも聞けば、何ともあっさり頷かれ全身の力が抜けた。
 もう考えることが馬鹿らしくなってきた。
 そういうことならば先程までの彼の言葉と行動も理解は出来る。
 理由出来るだけで許せるわけではないが。

 「私が男であることは理解してますか?」

 「はい」

 「なら自分が男であることも理解してますよね?」

 「はい」

 ん~~~~。ある意味すごい。
 
 「そうですか…………お断りします」

 「なんで!?」

 いや、むしろ了承してもらえると思っていたことに驚く。
 あれほど怒られて嫌われてないとどうしたら思えるのか。
 
 「理由を上げるとすれば私が貴方のことを好きではないからですね。むしろ嫌いです」

 珍しくもはっきり嫌いだと言う縁にエルが驚いていた。
 好意を寄せられたかといって彼がしたことがなくなるわけではなく、大袈裟だが自分に暴力を振るおうとした相手にいい感情など抱きはしない。

 「残念ですが私はもう結婚していますし、可愛い子どもも大切な家族もいるのでどう間違っても貴方を選ぶことはありません」

 縁がここまでキツイ物言いなのはそうまで言わなければ彼が諦めないだろうと思ったからだ。
 変に追いかけ回されても迷惑のため断る時はキッパリと。

 「…………」

 「納得していただけたようですね。では依頼の続きをーー」

 「いやっ!オレは諦めなーー」

 「いい加減にしろっ!このバカタレが!」

 殴り飛ばされ飛んでいく青年の姿に懐かしさを感じたのは何故だろうか?
 バカは殴られねば治らないのか。
 縁たちを放置し親子喧嘩を始めてしまった2人に、これはもう今日は依頼は無理だなと諦めるのだった。

 「いつもこんな感じなんですか?」

 「いえっ!普段から親しくさせていただいてますが、怒っている姿なんて一度も……」

 流石に客であり貴族の前で怒鳴り殴るなどゼスもしたことがなかったらしい。
 彼女には今日一日でかなり衝撃的な体験をさせてしまい、申し訳なかったと謝罪しておくのだった。

 
 
 

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