二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
287 / 475

無駄な能力

しおりを挟む
 驚きに目を見張る少女にイタズラが成功したような気持ちだ。

 「すごいでしょ?ちょっとした遊び心でやってみたら出来ちゃいました」

 「すごく……綺麗です」

 大切そうに受け取ってくれた少女に渡したこちらまで嬉しくなる。
 親子喧嘩が収まるまでの間、ただ待つのも少女に申し訳なかったため良ければとそれを渡した。

 「飴細工です。勿論食べることも出来ますけど面白いでしょ?」

 薔薇を模して作ったそれは色こそついてはいないが、薄い花びらはまるで本物のようである。
 いつも通りレオナルドたちにとアメを作っていたのだが、ふとこんなものもあったなと試しに魔法を使ってみれば上手くいったのだ。
 子どもたちには猫や犬など本物には似せてはいないが可愛らしく作ったものを渡した。
 薔薇は面白半分で作ったものではあったが喜んでもらえたようで何より。
 
 「良ければご両親にもどうぞ。気に入らないようでしたら捨てていただいて構いませんので」

 以前会った時の態度からしてそんなことするとは思わなかったが、やはり彼女たちもやはり貴族であり渡されたものをそう簡単に口には出来ないだろうと思ったのだ。

 「そんなっ!きっと両親も喜びますわ。ありがとうございます」

 アメのお土産とはあれだとは思ったが、嬉しそうに受け取ってくれたためよしとしておこう。

 「………それで?貴方たちは客を待たせていつまで親子喧嘩しているつもりですか?」

 「うるせぇっ!俺はこのくそガキの根性を叩きなーー」

 「言い直すなら今の内ですよ」

 「っ!?す、すまねぇ」

 スッと細まった縁の目にそれまでの勢いはどこへやら悪かったと頭を下げくるゼスに仕方ないなと溜め息をつく。

 「依頼を受けてもらえるようなら話しの続きを。ですが息子さんは邪魔でしかないので申し訳ないですが部屋から追い出して下さい」

 「わ、分かった」

 縁の指示に素直に従い息子を部屋から引き摺り出すと、申し訳なかったと頭を下げてきた。

 「あのバカが本当にすまなかった!何でこんなことになったかは分からんが、俺が親として責任持って根性叩き直してやる」

 「よろしくお願いしますね。また同じことがあればーーー次は言葉だけでは済みませんので」

 「(こっわっ)」

 聴こえてますからねエル。
 にこりと微笑みながら隣を見れば、何も言ってないとばかりに首を振っていた。
 ゼスも職人であり仕事の話しになると元に戻っていた。

 「お肉とかであれば今のままでも構わないんですが、出来れば魚の身を花びらのように薄く切るために切れ味を良くしてほしいです」

 「花びら?そんな薄く切ってどうすんだ?」 

 食べ物なのだから食べるに決まっているのだが。

 「食べます。ただ焼くとか煮るとは違う食べ方を知っているのでそのために必要なんです」

 主に刺身。時々ちらし寿司。更には海鮮丼。
 お腹空いてきたなぁ。
 いまいち理解出来てないだろうゼスをよそに縁は想像で腹を空かせるのだった。

 「それで、出来そうですか?無理なら諦めてお鍋とかだけで構いませんが」

 「職人舐めんじゃねぇよ。やってやるよ」

 頼もしい回答にならばと任せることにした。
 色々あり時間もかかったためそれだけ頼むと鍛冶屋を後にするのだった。

 「今日はありがとうございました。おかげで欲しいものも手に入りそうです」

 「良かったです。もしかしたらエニシさんに申し訳ない方を紹介してしまったかと……」

 あの息子のことを言うならばそうだが、あのバカは彼女が紹介した人物ではないためそんな心配はいらない。

 「そんなことありませんよ。出来上がるのが今からとても楽しみです。ありがとうございました」


 ゼスならばきっと妥協などせず納得いくものを作ってくれるに違いない。

 「お忙しい中本当にありがとうございました。またどこかで会うことがありましたらーー」

 「あのっ!あの……もしよろしければ、その…名前を。今だけでいいのでサラと名前を呼んでもらえませんでしょうか」

 緊張で手をにぎりしめらもそう乞われたが彼女は縁がそう親し気に呼んでいい身分ではない。
 断ろうとするが、顔を真っ赤にしながらも涙目でお願いされては断わるにも断れない。

 「今だけ、なら。今日は本当にありがとうございました、サラ」

 「…………ありがとうございます」

 なんだか悲しそうな表情に本当によかったのかと不安になったが、礼を言われれば縁に出来ることはないのだった。

 「また機会がありましたら女の子……いえ、娘さんにも何かお礼をさせて下さい。おかげで怪我もなく本当に助かりました」

 気にしなくいいと言ってはみたが、是非にという少女に断わることは出来ず頷いておくのだった。
 


 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...